ゲルダ
修正ディスクをはっしと受け止め、二郎はティンカーに命令する。
「ティンカー、デバッグ開始!」
二郎はティンカーに向け、ディスクを投げた。
ティンカーは身体にスリットを作り、ディスクを受け入れる用意を整える。
ディスクが空中を飛んで、ティンカーが飲み込もうとした瞬間、ゲルダの手が素早く伸びて、受け止めていた。
「ゲルダ少佐! 何をするつもりだ?」
二郎は驚きに大声で叫んでいた。あまりに意外な、ゲルダの動きであった。
ゲルダはディスクを指で挟んで、二郎に顔を向ける。その顔がニヤリと笑いに歪んだ。さっと上を見上げ、シャドウに声を掛ける。
「シャドウ様! ディスクは、わたしが!」
叫びながら、腕を上げて掲げる。シャドウはゲルダに顔を向け、深く頷いた。
「でかした! ゲルダ少佐!」
一同は驚愕して、言葉も出ない。
「ゲルダ……さん? ……あなた、その……まさか!」
ようやく、途切れ途切れに、タバサが言葉を口にする。
ゲルダはディスクを掴んだまま、ささっと一同から離れる。両目が爛々と輝き、頬は興奮に火照っていた。
「そう……わたしの忠誠心は、シャドウ様ただ一人に捧げられている! この瞬間を待っていたのよ! このために、客家二郎の遠征隊に参加したのよ!」
階段で、目を見開き、凝固していたターク首相が我に帰り、叫んでいた。
「裏切り者!」
ゲルダはくるっとタークに振り向き、高らかに宣言した。
「裏切り者ではない! わたしは、最初からシャドウ様の忠実な部下だ!」
ゲルダの言葉に、タークとガントは間抜け面で、ぱくぱくと金魚のように口を動かしているだけだ。ガントは顔を真っ赤に染め、タークは唇を細かく震わせている。