軍靴
ざっ、ざっ、ざっ! と、百人の軍靴が石畳を踏みしめ、百人の兵士の腕が一つの動きとなって振り回される。
銀色の輝くヘルメットは日差しに煌き、銃剣つきの蒸汽突撃銃は兵士の肩に逞しい重みを感じさせている。
百人の行進が通り過ぎると、また次の百人が通過する。その後ろから、奇妙な形の機械が近づいてきた。
がちゃがちゃと、無数の機械の足が波のような動きをさせている。
真鍮製のボディをした、蒸汽百足の登場だ!
荒れ地用に開発された、百足そっくりのロボットで、シャドウの〝門〟から伸びている白光を放つ階段を登るために、特に用意された装備である。
勿論、人間が乗り込み、操縦するのである。
行進を見送りながら、バルクはここに見物の市民が一人もいないことが非常に残念な気分だった。市民および、外部からのプレイヤー全員に対して退避命令が出て、【大中央駅】か、あるいは現実へと戻っていった。そのため、シティには志願した警察官、消防団員しか残っていない。
「バルク伍長!」
パレードと並行して、上官の少尉が近づきながら伍長の名前を叫ぶ。バルクは、きりっと少尉に向き直り、さっと敬礼をした。
「全員、揃っているか?」
判りきったことながら、少尉は質問する。全員がその場にいることは、一目ちらっとでも見れば判るのだが、これも教本通りである。
伍長は「はっ! 全員、異常なく、装備も完全に揃っております!」と、決まり通りに答える。少尉は頷いた。
「よし、我が小隊は、本隊に合流、【ロスト・ワールド】攻略作戦に参加する! 従いてこい!」
言い捨てて、背を向ける。バルクは初年兵たちに「来い!」と合図して駆け出した。
興奮に、バルクの胸が高鳴った。実戦だ! 本物の戦いなのだ!




