表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電脳ロスト・ワールド  作者: 万卜人
【蒸汽帝国】軍侵攻!
156/198

行進

 時間は少し過去に戻る。


 二郎たちがシャドウの居城へ潜入するため待機していた頃、【蒸汽帝国】では、ガント元帥の命令により、帝国軍機動部隊が【ロスト・ワールド】攻略のため、続々と王宮前広場に集合していた。


「いよいよ、始まりやがったぜ!」


 バルク伍長は嬉しげな声を上げた。今までシャドウとか名乗る怪人が設置した〝ゲート〟を、ただボケっと馬鹿のように監視する任務を与えられていただけだった、これで意味のある行動に移れる!


 伍長と同じ意見の者は帝国軍兵士たち、全員の総意でもあった。何しろ監視任務というのは退屈極まりなく、兵士たちの最も嫌うシチュエーションである。


「伍長殿。我々の装備は、これで宜しいのでしょうか?」


 部下の初年兵が不安そうな顔つきで尋ねてきた。伍長は眉を上げ、話しかけてきた初年兵を見つめた。背後に同じ年度の兵士たちが、もじもじと決まり悪そうに待機している。


 全員、帝国軍から与えられた蒸汽機関銃、蒸汽手榴弾、蒸汽突撃銃、蒸汽迫撃砲、蒸汽拳銃を装備している。伍長は快活な声を上げた。


「当たり前だ! 我が蒸汽軍は、全ての仮想現実で〝世界〟イチイイイイ……と! 訓練で教えられなかったのか?」


「はあ……」

 初年兵たちは益々不安そうな声になる。


 無理もない。なにしろ帝国軍が実戦を経験するのは、これが初めてなのだ。他の様々な戦場を舞台にした〝世界〟では、二十四時間休むことのない戦闘が続けられているが、【蒸汽帝国】の軍隊は、言ってみれば装飾である。


 十九世紀末の英国をモデルにする際、最強の軍隊を保持するのは当然のことだったが、何しろ戦争する相手が存在しないのだ。

【蒸汽帝国】創立の頃、敵国も必要ではないかという意見が出たが、肝心の敵国人としてプレイする人間が誰もいなかったので、仕方なく諦めた経緯がある。


 誰も悪役はやりたくなかった、ということだ。


 しかし軍隊のパレードは市民の熱狂するところで、帝国軍は何か機会があれば、度々軍事パレードを開催して、磨き上げた装備、派手な軍装、一糸乱れぬ行進などを、市民の前で披露していた。今も、その成果が目の前を通り過ぎていく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ