パレード
「おい、ボケっとしている暇はないぞ!」
二郎がくるっと一同に振り向き、叫んだ。
「さあ! 今のうちシャドウの居城へ向かうんだ。パレードに城の連中が気を取られる今こそ、忍び込むチャンスだ!」
二郎の言葉に全員が頷く。二郎は小走りに町の裏道を縫いながら、シャドウの居城へと近づいていった。
丘を駆け上がっていくタバサは、どきどきしていた。横をちらりと見て、パレードを確認する。
パレードは丘の踏み分け道をぞろぞろと行列を作っていた。先頭のシャドウの人形が、ふわりふわりと奇妙な足取りで歩いていく。遂に居城の正面に達した。
二郎たちは居城の側面に集合し、じっと見守る。興奮に、タバサは息が苦しい。
ぴたりとパレードが静止し、音楽が止まった。静寂の中を、ギャンが堂々とした歩みで居城に近づき、手にしたステッキを上げると、いきなり壁を叩き出す。
「【ロスト・ワールド】の支配者にして、暗黒の帝王! シャドウ殿に〝ロスト・シティ〟の代表であるギャンが物申します! ご開門を願います!」
大声を上げた。
「何するつもりかしら……」
「しっ! 黙って見ていろ!」
タバサが思わず呟くと、二郎はさっと指を挙げ制止する。
だんだん! だんだん! と、ギャンは辛抱強くステッキで壁を叩き続けている。
「煩いぞ! 何の騒ぎだ!」
頭上から声が降ってきて、ギャンは顔を上げた。にんまりと会心の笑みが浮かぶ。
「これはこれは……シャドウ殿、御自らお出ましとは、光栄至極……」
シャドウが姿を表していた。しかも、空中に。