騒ぎ
玄之丞は興味深げに人形を見上げ、葉巻を吹かす。
「ほほお……。あれがシャドウの姿かね? なるほど、良くできているわい!」
二郎は笑い崩れている。
「ギャンの奴、何を考えている? 確かに、おれは、騒ぎを引き起こせとは頼んだが!」
途端に陽気な音楽が響き渡る。聞いているだけで手足が動き、勝手にリズムを刻んでしまいそうな──そうだ、これはサンバのリズムだ!
じゃーん、じゃーんという金属的なシンバルが響き、トランペットなどの金管楽器が、高らかに鳴り響く。通りを目にも鮮やかな衣装を纏った男女が、激しいリズムとともに、舞い踊りながら練り歩いていた。
行列の先頭にはギャンが満面の笑みを浮かべ、得意満面に歩を進めていた。住民が次々に声を掛けると、大仰に頭を下げ、挨拶を返していた。
ギャンは何のつもりか、シルクハットを被り、手にはステッキを持って歩いている。身に着けているのは、真っ白な燕尾服。相変わらず、背中には派手な薔薇の花が咲き誇っていた。
玄之丞は「うほほほほ!」と妙な笑い声を上げた。
「成る程、確かに騒ぎであるな! それも、大変な騒ぎであるわい!」
町の通りを、リオのカーニバルが行過ぎる。
様々な着飾った行列が、煌びやかな山車を引いて、延々と伸びていた。
町の窓からは、突然の騒ぎに驚いた住民が顔を突き出し、何事かと見物をしていた。扉を開け、住民たちは目を輝かせて、パレードと足並みを揃えた。
先頭は巨大なシャドウの人形で、その後ろを次から次へと山車が続いている。パレードは、どうやらシャドウの居城へと向かっている様子だ。