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人形
ギャンのレストランから外に出た一同は、驚きに立ち竦んだ。
「シャドウだわ!」
タバサが大声を上げた。
ゲルダはぎくりと空を見上げ、二郎は目を見開き、驚きに口をポカンと開けている。
【蒸汽帝国】に現れた、巨大化したシャドウの姿が目に飛び込んでくる。真っ黒な肌に、雪のように白い頭髪。真っ赤な口を開け、不気味なニタニタ笑いを浮かべるシャドウは、〝ロスト・シティ〟全体を睥睨するかのように目を足下に向けている。
しかし二郎はシャドウを見つめ、ケタケタと高笑いを上げた。
「違う! あれは操り人形だよ!」
「え?」
タバサは、改めて眼前のシャドウを見上げ、納得した。
そうだ! あれは操り人形に過ぎない。
よくできているが、手足の先に長い棒がくっついて、棒の先には数人の人間が取り付いて、いかにも本物の人間のように操演していた。
ふわり……と音もなく人形のシャドウは片足を上げ、踏みしめる。もう一方の足も続けて上げ、巨大な人間が歩いているように動いていた。