表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電脳ロスト・ワールド  作者: 万卜人
シャドウとの対決
146/198

綾取り

 二郎は、じっと腕組みをしたまま椅子に腰掛け、真っ直ぐ前を見たまま、微動だにしない。


 いかにも全身に緊張が溢れているようで、タバサは何度か声を掛けようか迷ったが、結局何もできずに、溜息を吐くのが関の山だ。


 真葛三兄弟の長兄である玄之丞は、ゆったりと弛緩した表情で、葉巻を燻らせている。


 時折、口をポカンと開き、煙の輪っかを吐き出している。煙の輪は、驚くほどしっかりと形を保ったまま天井に向かい、天井にぶち当たると、ほわんと消えていく。その様子を、玄之丞は興味津々といった様子で、まじまじと見つめている。まったく、何が楽しいのか。


 知里夫はくっちゃくっちゃと口の中でガムを噛んでいる。時々「ぷーっ」とガムを膨らませ「ぺちん!」と破れたやつを、また口の中に戻して噛み続けた。


 晴彦は、いやに熱心にあや取りを続けている。

 真剣な目つきで、エッフェル塔とか、富士山の形に紐を組み合わせ、一つ完成するたびに、輝くような笑顔を見せる。


 タバサと目が合い、晴彦は手にした綾取りを突き出した。タバサに相手して貰いたいのだ。


 退屈しのぎにタバサは「いいわよ」と答え、晴彦の前に椅子を置いて向き合った。


 差し出された綾取りを受け取ると、晴彦は目も止まらぬ素早さで紐を組み合わせる。紐は白と黒の二本の色でできている。目まぐるしく紐が組み合わされ、ある形を作っていく。

 作り出される形に、タバサは目を見張った。


 シャドウの顔が作り出されていた。顔は黒く、髪の毛は白い。晴彦はタバサから綾取りを受け取ると、両目の部分に自分の目を押し付け、タバサの顔を覗きこむ。口の形がニヤニヤ笑いを形作っているのが不気味である。


「あんた、シャドウを知っているの?」


 晴彦は首を左右に振って否定した。くるりと綾取りを引っくり返すと、白と黒の糸が反転していた。二郎を見やる晴彦の目の動きにタバサは呟いた。


「それ、二郎の顔じゃない?」

 晴彦は頷く。


 その時、ギャンが部屋に入ってきた。音もなく、影のように滑り込んだギャンは、かったるそうに呟いた。


「準備完了だ……。ちょっとした騒ぎを起こす。あとは、あんたらの仕事だ……」


 それまで身動きもせず椅子に腰掛けていた二郎が、かっと目を見開く。ぐっとギャンの顔を見上げ、強く頷いた。


「恩に着るぜ、ギャン!」


 ギャンは薄く笑った。

「幸運を……。それとも悪運ハード・ラックかな?」


 二郎は肩を竦めて立ち上がった。

「どっちでも構わんよ。さあ、行くぞ!」


 二郎に促され、一同は神輿みこしを上げる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ