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電脳ロスト・ワールド  作者: 万卜人
再び蒸汽帝国
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反抗

 一人の観測員が、携帯用の蒸汽計算機を持ち出す。

 手早くキーを操作すると、計算機から勢い良く蒸汽が噴出して、がちゃがちゃと盛大な音を立て計算を開始した。


 やがて計算が終わり、観測員が宣告した。


「計算の結果、約六時間後には渦巻きは〝門〟と接触します。そうなると、この【蒸汽帝国】が【ロスト・ワールド】と同じ状態になり、我々全員が、現実世界に戻れなく……」


 あとは口を噤む。表情に恐怖がありありと浮かんでいた。ガントは囁き声になった。


「〝ロスト〟すると言うのか? 我々、全員が……?」


 全員の表情に、ガントは暫し立ち尽くしていた。だが、やがて全身に沸々と怒りが満ちてきた。

 観測所の方向に、士官たちが屯しているのに気付き、声を限りに叫ぶ。


「そこの! すぐここへ来い!」


 士官たちはガントの声に吃驚した表情を浮かべた。まさか元帥がここにいるとは思っていなかったようだ。

 全速力で駆け寄ってくると、目の前に整列し、敬礼をする。答礼するのももどかしく、ガントは矢継ぎ早に命令を下した。


「全国民に知らせろ! 用のないものは、すぐさま現実世界へ戻れ、とな! 【蒸汽帝国】から避難するのだ! 次に、全蒸汽軍に伝達! 全ての装備、兵器を集め、可及的かつ速やかに【ロスト・ワールド】に向け侵攻を開始すると!」


 士官の一人が叫んだ。


「それでは、首相の命令が出たのですね!」


 ガントは素早く首を振った。


「いいや、命令は出ん! これは、おれの独断だ! 何か異論でも?」


 士官たちは素早く目配せした。先ほどの声を上げた士官が決意の表情になった。


「いいえ! 何もありません! 閣下の決意に我々、全面的に賛同いたします!」


 ガントは頷いた。


「よし! では、行け!」

 さっと敬礼して、士官たちは一斉に走り出す。腕組みをして見送ったガントは、王宮を振り返った。タークのいる執務室の窓を睨みつける。


「ターク……。たった一度だけだ。たった一度、お前に逆らうぞ! 悪く思うな」


 燃えるような決意に、ガントはいつまでも立ち尽くしていた。

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