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電脳ロスト・ワールド  作者: 万卜人
再び蒸汽帝国
140/198

観測班

 伍長の報告に、ライス少尉は顔を上げ、眉を持ち上げた。


「渦巻きが……大きくなっている?」


 二十歳をそう過ぎてはいない若々しい顔つきで、蒸汽軍士官学校を首席で卒業して、すぐ少尉に任官している。血色のいい肌に、バターのような色合いの金髪をしている青年だ。少々お坊ちゃま臭いところがあるが、伍長の直属上官である。


 広場には天幕でできた、応急の観測所が設置され、常に渦巻きを観測している。最新の機器で測量を続け、あらゆる数値が記入されている。観測要員たちをちらと見やり、少尉は再び伍長に注意を戻した。

 伍長は直立不動になって叫んだ。


「そうなのであります! 不肖、このバルク伍長の愚考いたすところ、あの渦巻きは刻々と勢力を拡大しているのでは、と思い、報告に上がりました」


 伍長の大声に、少尉は微かに眉を顰めた。

 観測要員たちも、一斉に顔を上げ、伍長に視線を浴びせている。

 伍長は俄かに注目を浴び、顔を火照らせた。


「少尉、伍長の報告は正しいよ。確かに渦巻きは、徐々にだが、直径を拡大している」


 観測要員の一人が、伍長の言葉に同意してくれた。バルクは、ほっと微かに緊張が解れるのを感じた。

 少尉は唇を噛みしめ、観測員に向き直った。


「なら、なぜ教えてくれなかったのです。伍長がわざわざ持ち場を離れ、報告する前に」


 観測員は肩を竦めた。

「これが何を意味するのか、判断する材料が揃っていなかったのでね。一応、我々は慎重を期することを最優先するのだ」


 観測員の言葉に、少尉は顔を背けた。

 それ故、少尉の怒りの表情は、伍長だけにしか見せてはいない。

 伍長は内心、少尉の怒りに同意していた。

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