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電脳ロスト・ワールド  作者: 万卜人
再び蒸汽帝国
138/198

バルク伍長

 バルク伍長は、そろそろ交代の時間だなと、ちらりと手首の蒸汽腕時計の上蓋を持ち上げ、文字盤を見つめ思った。


 腕時計には超小型の蒸気エンジンが仕組まれている。

 だから、耳に押し当てると、微かに「しゅっ、しゅっ!」というリズミカルなシリンダーの音が聞こえる。


 王宮前広場に出現した、異様な渦巻きを見張るよう命令を受け、こうして日がな一日、直立不動で一般人が近寄らないよう見張っている。


 伍長は不安な気持ちで、背後の渦巻きを見上げた。


 渦巻きはゆっくりと旋回を続け、排水口に吸い込まれる水流のような、しかし遥かに巨大な規模で、広場の上空にしっかりと存在している。

 真ん中には、真っ白い光を放つ階段が、渦巻きの中心に向かって伸びているのが見えた。

 つい昨日、渦巻きを中心に起きた騒ぎは、はっきりと脳裏に焼きついている。


 巨大な怪物のような「シャドウ」と名乗った怪人が、あろうことかエミリー皇女を腕に抱え、哄笑とともに消え去ったあの場面は、帝国軍兵士たち全員が目にしていた。


 直後、奇妙な二人連れがターク首相に何か申し入れ、シャドウが立ち去った渦巻きに誰も近寄らないよう、厳戒態勢を敷くように命令が下ったのである。


 てっきり、渦巻きに突入し、エミリー皇女を救出するものとバルク伍長は思っていた。


 同じことを、連隊の総ての兵士は思っていたはずである。全軍に命令を下すガント元帥の、大量の苦虫を思い切り噛み潰したような不満顔は、今でも憶えている。ターク首相直々の命令だから仕方ないが、下士官以下の兵士は全員が不服であった。


 もう一度、伍長は背後の渦巻きを見上げる。

 やはり、変だ。

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