譫言
なぜ、シャドウはこんな奇妙な部屋に自分を閉じ込めたのか?
シャドウのやること成すこと、すべてエミリーには謎である。
「あなたを仮想現実世界の女王にする!」と、シャドウは言っていた。
下にも置かない丁重な扱いをするのかと思っていたら、なぜかこんな囚人のような仕打ちである。エミリーは怒り、同時に恐怖を覚えていた。
どうやって自分は、ここに連れて来られたのだろう? 最後にシャドウと会話した時点では、そんな気振りは微かにも見せなかったのだが……。
町を見下ろす部屋の中で、シャドウの目が近々と自分の目を覗きこんでいる場面は覚えている。その後、自分は気を失った──らしい。よく憶えていない。ともかく、次に気付いたら、この暗闇に放り出されていた、という状況だ。
泣き喚き、叫び、壁を何度も手で叩く。そんな儚い抵抗の繰り返し。
総ては虚しい……。
叩いても、壁はびくともせず、ただエミリーの手の平が痛くなるだけだ。蹴っても同じである。徒労感に、エミリーの全身に鈍い疲労が蓄積する。
がっくりと膝を折り、エミリーは部屋の真ん中に座り込んだ。
「お願い……あたしを出して……誰か、助けて……!」
エミリーの声は、譫言のように取りとめないものに変わっていく。




