牢獄
「誰か、この音を停めて! お願い!」
暗闇に向かい、エミリーは絶望的な声を上げていた。
シャドウの居城、どこの場所に自分はいるのか判らない。上の階にいるのか、或いは地下に閉じ込められているのかさえ、判らない。
しん、とした闇の中に、エミリーは閉じ込められ、そのまま放置されている。シャドウは完全にエミリーの存在を忘れているのか、一度たりとも訊ねてはこない。
闇の中から「かっち、かっち、かっち」という冷酷な音が響いている。
最初、時計の音がしているのかと思った。
壁をまさぐり、どこかに時計があるのかと探してみた。だが虚しい試みであった。
音のしている場所を探るために、あちこち顔を向けてみる。ところが、音は一定の音量で、しつこく聞こえている。
頭の中で反響しているのだ! と気付くのには、そう時間は掛からなかった。
壁を必死に手探りするが、出入口は見つからない。完全に、平らな、滑らかな壁面があるだけだ。
床も同じく、継ぎ目のない、平坦な面があるだけである。
手探りした結果、エミリーは自分が閉じ込められているのは、十メートル四方ほどの、完全に正方形をした部屋であることを悟っていた。
天井はどれほど高いのか、この暗闇では判らない。
勢いをつけ、飛び上がってみるが、手は何も触れないから、最低三メートルはありそうだ。
しかし声の反響から、もっと高く──十メートルはありそうな感じをエミリーは感じていた。
つまり各辺十メートルの、立方体の部屋に自分は閉じ込められている、ということである。