表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電脳ロスト・ワールド  作者: 万卜人
【ロスト・シティ】
128/198

注文

 ギャンという面会相手がいるのは、町の奥まったところにあるレストランであった。


 意外と本格的な造りで、席は半分がた埋まっていて、プレイヤーが出された料理をガツガツと食らっている。

 それを見て、タバサは「あっ、そうか!」と合点した。

 プレイヤーたちは全員が〝ロスト〟したプレイヤーである。従って、生身の身体を気にすることもなく、旺盛な食欲を満足させているのだろう。


 六人は丸い大きなテーブルに案内された。

 案内した給仕は、NPCではなく、人間のプレイヤーであった。真っ白いお仕着せを身に着け、優雅な仕草で、給仕は全員を席に着かせ、片手にメニューを持って口を開く。


「本日、当レストランがお客さまにお出しするのは、ガレガレ鳥のシチュー、フンボルト蛙と、モート特産レンズマメ煮込み、サラダなど〝のようなもの〟になっております!」


 ふんぞり返って玄之丞は口を開いた。


「それでは吾輩は〝のようなもの〟を注文するぞ!」

「へっ?」


 給仕はポカンと口を開けた。目が驚きに虚ろになっている。玄之丞はニヤリと笑って、追い討ちをかける。


「お前さん、言ったではないか? 〝のようなもの〟と。吾輩は、それを食したい」

「へっへっへっ……」


 給仕は脂汗を掻きながら、それでもなんとか立ち直ろうと悪戦苦闘する。

「ご冗談を……」


「冗談ではないっ! なんだ? 〝のようなもの〟は出せんのか?」

「生憎と、品切れになっております」

「それでは、吾輩は、トチメンボーを召し上がるぞ!」


 給仕は顎を引き、上目遣いになった。


「あのう……メンチボールのお間違いでは?」

「トチメンボーだよ、トチメンボー。なんじゃ、それも出せんのか?」


 知里夫が割り込む。

「おれは、アカチバラチを頼む! アバカラベッソンも忘れるなよ」

 玄之丞は歯を剥き出し、ニタニタ笑った。

「そうそう、それがないと、ベケンヤにならんからなあ!」


 徐々に給仕は忍耐の限界に達したようだ。表情が険しくなり、ぴくぴくと頬の筋肉が痙攣し、蟀谷こめかみからびっしりと汗がたらーり、たらりと流れている。


「少々お待ちを……」


 言い捨て、くるりと背を向けると、早足になって店の奥へと駆け込んでいった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ