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電脳ロスト・ワールド  作者: 万卜人
輪廻転生
124/198

「町なのね……」

 タバサは呟いた。


 丘の中腹に、町ができている。やや離れた丘の頂上に、町を見下ろすように大きな建物が聳えていた。

 タバサは何となく、シャドウの本拠は〝城〟のようなものと想像していたのだが、外れた。

 確かに大きく、規模は城ほどもあったが、殺風景な、四角い窓のほとんど見当たらない岩の固まりであった。灰色の無愛想な岩が、丘の頂上から突き出し、ところどころ申し訳程度に、小さな窓が覗いていた。


 対して、丘の中腹に広がる町は、色とりどりの屋根と壁が、色彩の爆発のように各々の存在を主張している。


 壁には色んな模様が描かれている。道路はくねくねと乱雑に曲がりくねり、道の両側にはテントが張り出している。どことなく中近東のバザー風景を思わせる町だ。


 町を眺め、タバサはある事実に気付いた。


 立ち並ぶ家々の窓は、総て丘の頂上の反対側に開いている。丘の頂上側の壁には、一つも空けられていない。まるでシャドウの居城が存在することを否定しているようだ。


 町から少し離れた平地に、タバサが乗り込んでいる気球と同じような丸い形が、地上に点在している。気球は、そこに向かっている。


 町を見下ろすうち、タバサは奇妙な音に気付いた。


 かっち、かっち、かっち……。


 何だろう、まるで旧式なアナログ時計の秒針のような音が、耳の奥から聞こえてくる。

 耳を押さえても、聞こえてくる。


 タバサの仕草を見て、二郎は頷く。二郎の何もかも承知しているといった顔色を見て、タバサは声を上げる。


「何よ?」

「音が聞こえてくるんだろう? 秒針のような……」


 二郎の指摘に、タバサは目を見開く。


「何か、知っているのね! 何なの、この音! あんたにも聞こえているの?」


 二郎は頷く。ゲルダ、三兄弟もまた、同じように頷いた。


「あんたたちも!」

「さっきから聞こえていましたよ。残り時間が、いよいよ二十四時間を切ったのです」


 ゲルダが冷静な口調で答える。玄之丞が腕組みをして後を引き取る。


「仮想現実接続装置は、七十二時間の制限時間がある。それを過ぎると、強制的に接続が切断され〝ロスト〟が起きる。今しつこく聞こえている音は、強制切断が起きる残り時間を知らせているんだよ。いよいよ残り少なくなると、時計の秒針の音が秒読みの声に変わるが」

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