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電脳ロスト・ワールド  作者: 万卜人
輪廻転生
119/198

階段

 岩山には、細い隙間があって、間を階段が刻んである。大の人間一人がようやく通り抜けることが可能であるが、かなり狭い。


「首相が従いてこなくて、正解だったな。タークの身体じゃ、ここを通り抜けるなんて、絶対に無理な話だ」


 二郎の言葉に、タバサは思わず吹き出した。【蒸汽帝国】で見た、ビア樽そのままの、首相の身体つきを思い出し「言えてる!」と思った。


 背後の気配に振り向くと、ゲルダの目と合った。ゲルダはいつもの謹直な顔つきであったが、唇がひくひくと震えている。


 が、ついに堪えきれなくなって「ぷっ」と吹き出す。自分が笑ったことで、身体中に笑いの発作が波のように襲い掛かって、ゲルダは身を折って「あははは!」と声を上げて笑った。


「あはははは! 何よう?」


 タバサが声を上げると、ゲルダは首を何度も振って「ひいひい!」と笑い崩れる。しばらく二人は、歩けなくなっていた。


 先頭を蝶人のケストが案内し、二郎、タバサ、ゲルダ、玄之丞、知里夫、殿軍が晴彦と続く。ケストは大きな翼を畳んで歩いている。


 階段は真っ直ぐで、曲がり角はなく、これなら蝶人でも利用できる。狭いとはいえ、ほっそりとした身体つきの蝶人にとっては充分に広い。


 時折、向こうから別の蝶人がやってくるが、するりと蝶人同士すり抜ける。しかし後方を二郎たちが歩くので、蝶人はその横をすり抜けるときは、少し苦しそうであった。多分、普段は蝶人だけが階段を利用するのであろう。


 急な階段を登りきると、立方体ブロックでできた岩山の、踊り場のような場所に出た。


「ここでお待ち下さい」


 ケストは一礼すると、羽根を広げ、ふわりと空へ飛び上がった。

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