声
玄之丞は声を発した。
渇──っ!
声、というより、何か強烈な衝撃波が、物理的な力を持って、空間を切り裂いた、といったものだった。
震動で、タバサの皮膚がぶるぶると震え、髪の毛がばさばさと逆立った。両手で固く耳を塞いでいるのに関わらず、鼓膜を通り抜け、脳髄に直接ぐわんぐわん突き刺すような音が轟き渡った。
タバサは気が遠くなり、目が霞む。
恐る恐る、タバサは目を開く。
ふっ、と玄之丞は芝居っ気たっぷりに、額の汗を拭う仕草をする。
さっきまで接近していた数個のプロペラ生物が、ふらふらと頼りない、まるで気絶したかのように目標を見失って、さ迷っている。
ぽとり、と一匹が地面に落ちていく。ついで、ぽと、ぽとりと残りのプロペラ生物も後を追う。ぱたん、と地面に平べったくなり、そのまま動かず止まっている。
芋虫はずんずん進んでいるから、あっという間に後方に遠ざかり、見えなくなった。
すぱーっ! と、得意そうに玄之丞は葉巻を吹かす。
「どうかな? 危機は脱したかな?」
二郎は小さく頷いた。
「ああ、助かった。しかし、相変わらず、あんたの声は凄いな……」
「まあ、な!」
おほん、と咳払いをして、玄之丞はそっくり返った。
タバサは二郎に囁いた。
「これで、あの人たちを連れてきたの?」
二郎は素早くウインクをする。
「そうさ。あの連中、見かけはああだが、各々特技があってね……。まあ、残りの特技も追々、披露してくれると思うよ」
進行方向に顔を向け、笑顔になった。
「さてさて、次は芋虫の巣篭もり場所が近づいた! 終着駅は、すぐそこでござーい!」