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電脳ロスト・ワールド  作者: 万卜人
仮想現実の掟
112/198

不発

 芋虫の背中に、ゲルダがすっくと立ち上がった。

 両手で拳銃を構え、静かに接近するプロペラ生物を待ち構えている。ゲルダの指が銃爪を引いた。


 かちゃり……。微かな金属音を立て、撃鉄が下りた。

 それだけである。


 タバサは「どかーん!」という拳銃の音を予想して、早々と耳を塞いでいたのだが、何も起きない。慌てたのはゲルダであった。


 かちゃ! かちゃ! と、何度も銃爪を引くが、拳銃は何も反応無しだ。


「くそっ!」と小さく舌打ちをすると、今度は腰の軍刀をすらりと抜き放つ。拳銃は投げ棄てた。


 一匹が、すぐそこまで近づいている。ゲルダは軍刀を素早く、下から上へ切り上げる。


 ぎゃりんっ!


 ゲルダの軍刀は虚しくプロペラ生物の身体を滑った。相当、硬い表皮をしている。それでも切り掛かった衝撃で、プロペラ生物のコースは逸れた。


 二郎は素早く真葛三兄弟を振り返り、叫んだ。


「あんたらの出番だ!」

「ほいちっち!」


 妙な掛け声を上げ、玄之丞が立ち上がる。腰に両手を掛け、胸を張った。


 二郎がタバサに近づき、囁いた。

「耳はそのまま塞いでおけ!」

「え?」

「いいから、耳を塞ぐんだ!」


 二郎はしっかりと両耳に指を突っ込む。訳が判らないなりに、タバサも真似する。


 すうーっ、と玄之丞は大口を開け、息を吸い込む。


 吸い込む。

 まだ吸い込む。

 まだまだ吸い込む。


 どんどん玄之丞の胸は膨らんでいく。顔は赤らみ、眉間に深い皺が刻まれた。


 知里夫、晴彦の二人も、しっかりと耳を塞いで、何かを待ち受けている。

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