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電脳ロスト・ワールド  作者: 万卜人
仮想現実の掟
109/198

 二郎は芋虫の頭辺りに陣取り、胡坐をかく。

 真似をして、タバサたちも柔らかな背中に腰を落とした。

 二郎は指を唇に押し当て、「ぴーっ!」と高々と鳴らした。


 ぐっと芋虫は頭を挙げ、ぐねぐねと全身を蠕動させ、再び前進を再開した。


「こ……これ、何なの?」

「見ての通り、幼虫だ。チューブは、こいつの通り道になっていてね、滑りを良くするために粘液を放出させるが、粘液はチューブにとって栄養となる。つまり、共生関係だな」


 芋虫の身体の動きで舌を噛みそうになったが、それでもタバサは、必死に質問する。


「それで、どこに向かっているの? さっきの指笛は何?」

「やーれ、やれ! また質問責めかよ……」


 うんざりした表情になりながらも、それでも二郎は説明をする。


「なりはデカいが、要するに、こいつは幼虫だ。芋虫と聞いて、何を連想する?」


 タバサはぶんぶんと激しく首を振った。芋虫なんか、考えたくもない。


「ほら、蝶だよ。こいつは、あの種の虫の幼虫なんだ。充分に身体が育つと、こいつはチューブを伝って、さなぎになる場所を目指す。指笛は、こいつにとっては、生きるための信号だ。おれは何度か【ロスト・ワールド】に潜入して、こいつの利用方法を見出したんだ」


 ゲルダは真剣な表情で割り込んだ。

「それで、シャドウの本拠地に、どれくらい近づくんです? 幼虫の巣篭もりをする場所が、シャドウの居城なのですか?」


「いや」と、二郎はゲルダの質問に短く首を振った。


「そう、真っ直ぐ行けるという訳にはいかないよ。しかし、かなり距離は稼げる。まあ、あとは空路を取ることになるけどね」


「空路……!」


 と、全員が声を上げる。

 いや、唯一人、晴彦だけは会話にまるで無関心で、ぼけっと呑気な表情で、周囲の景色に目をやっている。


 これが鉄道なら、飛行機はなんだろう……。


 タバサは一寸考え、二郎が蛹になって蝶になると説明したのを思い出した。


 ということは……!


 せめて、本当に蝶でありますように……!

 タバサは、蛾が大嫌いなのだ。

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