鉄道
「ティンカー!」と二郎が叫んだ。
ひゅっ、と空中を飛び上がったティンカーは、全体をロープの形に変形させ、タバサの腰に巻き付いた。
ロープの端を二郎は握りしめ、ぐいっと力の限り引っ張る。
がくんっ、とタバサの身体は二郎に引っ張られ、チューブへ引き寄せられる。
「おっと!」
玄之丞が腕を伸ばし、タバサの腕を掴んだ。
どすん、とタバサの身体はチューブに落下した。
タバサの身体は玄之丞の上に圧し掛かり、玄之丞は「ぐえっ」と奇妙な悲鳴を上げた。
「おっ、重い! 圧死する! 早く、どいてくれっ!」
「失礼ねっ! あたし、そんなに重くありませんっ!」
それでもタバサは大急ぎで立ち上がる。
玄之丞は「ふいーっ」と溜息をつくと、指で額の汗を拭った。
二郎を見ると、にやにやと笑いを浮かべている。
「何よ?」
「いや、別に……」
喧嘩腰で睨みつけると、二郎は笑いを浮かべたまま、そっぽを向く。
チューブは中空で、筒を半分にした形をしている。巨大な雨樋の内側に、タバサたちは立っていることになる。
「これが、どこが鉄道なの?」
ぼんやりとタバサは呟く。
二郎はチューブの内側に蹲り、耳を表面に当てて何か、聞き耳を立てている。
「しっ」と指を口に当て、静かにするように合図する。
にやり、と二郎の唇が会心の笑みを浮かべた。
立ち上がり、チューブの彼方を見つめている。
「来るぞ……。列車の登場だ!」