表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電脳ロスト・ワールド  作者: 万卜人
闇の玉座
101/198

説得

 ガント元帥の目が細められた。


「シャドウと二郎が、示し合わせていたら、どうなんだ? 皇女の誘拐も、二郎が背後で糸を引いていたとしたら? 否定できまい」


 タークは無言で唇を噛みしめた。

 タークの反応に、ガント元帥は満足そうに頷く。


「どうだ? 時間は刻々と失われている。もちろん、皇女の残り時間だ。あと二日で、皇女は仮想現実から強制切断され〝ロスト〟が起きる! 判っているのかね?」


 近々と顔を近づけた元帥の顔には、興奮のために血が昇った。


「今だ! 今こそ、我が帝国軍の全部隊を、あそこに見える〝門〟に突入させ、皇女を奪還する作戦を決行すべきだ! さあ、何を躊躇っている? そこの通話装置に向かって一言、命令すればいいのだ!」


 さっと元帥は、執務室の通話装置を指さした。


「全軍、突入せよとな! この命令は、お主しか下せない! 皇女が大事なら、すぐ命令するんだ!」


 タークは顔を背け、再び広場に視線を戻す。

「ゲルダ少佐が同行している。彼女の忠誠心は疑いのないものだ! もしものときは、ゲルダ少佐が……」


 だん! と元帥は足踏みした。


「女ではないか! しかも、まんまとシャドウに皇女を目の前で引っ攫われて、おめおめと逃げ帰ってきおった!」


 口調を和らげ、懇願するように話し掛けた。

「なあ、ターク。君とわしとの仲じゃないか? 【蒸汽帝国】創立のころから、わしらは肝胆相照らす友人として付き合ってきた。お互い、皇女を大切に思う気持ちは同じだ! その君が、なぜこうもグダグダとした態度でいるのか、わしには判らん!」


 タークは、そっとポケットから二郎から渡されたディスクを取り出した。


 ディスクの表面には不思議な煌めきが走り、ほんの少しの傾きで細かな紋様が浮き上がる。【パンドラ】修正プログラムの入ったディスクを弄び、タークは〝門〟を見つめる。


 自信が激しくぐらつくのを感じ、タークは立ち尽くしていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ