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電脳ロスト・ワールド  作者: 万卜人
二人の創造主
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進化

 いいや、それだけでは足りない。


 きゅっと、【シャドウ】の薄い唇の両端が鋭角に持ち上がり、悪魔的といっていい笑みが浮かぶ。

 この【ロスト・ワールド】こそが、全世界の中心でなくてはならぬ!


 仮想現実空間の支配者になる──この【シャドウ】さまが!


「くっ……くくくくくく……っ!」


【シャドウ】の歪められた唇から、奇妙な笑い声が漏れ出ていた。

 さっと両腕を高く差し上げ、叫んだ。


「進化しろ! お前ら、戦い、食らい合い、産み増やせ! 世界へ満ちよ!」


 のたのた、ずりずりと不器用な動きを見せていた生き物が、亜【シャドウ】の叫びに電流が走ったかのごとく、ぴん、と一斉に緊張する。

 オレンジ色のアメーバーのような生き物が、のんびり結晶の草を食んでいる巨大な水母に襲い掛かった。

 水母は「ぎえーっ」と金切り声を上げ、身悶える。覆いかぶさったアメーバの体内で、巨大な水母はじわじわと消化されていった。


 空をくるくる旋回しながら飛行するプロペラは、身体に無数の突起を生やし、他の空をゆっくりと飛行している風船のような生き物に突っ込んだ。


 ぷしゅーっ、と音を立て、風船は萎んでいく。


 どすん、どすんと跳ね回っていた岩の群れが、たちまちお互いくっ付き合い、一つの巨大な生き物に変貌した。

 どすどすと大きな地響きを立て、岩の獣はガラスの森へ突入する。


 ばりばり、がしゃがしゃと盛大な音を立て、透明な結晶は粉微塵に砕け散った!


 あちこちで誕生した奇妙な生き物同士、殺し合いが起きていた。


 殺し合いは、生き物に急速な変化を強いた。


 ラマルクの進化論──獲得形質が子孫へ遺伝する──が、ここでは実際に起きていた。


 殺し合いを続けるうち、有利な形質を持ったものは特質を遺伝子に刻み込み、繁殖していく。また、他の獲得形質を捕食することにより、我が物にしてさらなる進化を成し遂げる。

 百万年、いや、数億年の進化の歴史が、ここでは僅か数週間、数時間という短さで行われている。行き着く先は、誰にも想像すら困難である。


 殺し合いを眺めた【シャドウ】は、狂的な高笑いを続けていた。

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