【BL】失恋の特効薬が新しい恋って本当ですか?
「いえ、あの必要ないですから」
「どうせ、殿下は長くかかるのだろう。それなら待たせてもらおうと思ってな。キリア殿には迷惑か?」
「そ、そんなことは」
ただ女装しているのが、ちょっと恥ずかしい。
別に僕は女装趣味ではない。
殿下に気に入ってほしかったのだ。
もう、必要ないけど。
「それでは了承ととらえていいかな」
ジョセフ様は通りかかった侍女に命じて、お茶を用意させる。
中庭の春風が涼しい、場所だった。
「キリア殿は今日も美しいな」
「え、はい。ありがとうございます」
なんだか照れる。
殿下には一度も言ってもらえなかったけど。
「あなたの美しい姿も今日で見納め、か?」
「多分、あの、美しいなんて、ありがとうございます」
僕は可愛い、それは知ってる。
だけど、真っ直ぐ見られて、何度も言われると恥ずかしい。
照れてしまう。
「私のために、その姿をまた見せてくれないか」
「え?」
「すまない。ちょっと気持ち悪いか。すまない」
ジョセフ様は我に返ったようで、何度も謝る。
「別にいいですよ。でももう少しするとドレスが着れなくなると思うので、あと少しだと思いますが」
「そうか。でも見せてくれるのは嬉しい。王宮まで来るのは大変だろう。我が家で見せてくれないか?」
「え?それは」
他意はあるわけがない。
だけど、突然家に行くのは流石に。
「ジョセフ!うちの弟を口説くのはやめろ」
返事に困っていると、背後から姉の声が聞こえた。
すぐそばには殿下がいる。
「わかっていたが、やはりか」
「殿下!シシリア殿。嫌、これは違う」
「キリア。そいつから離れろ。妊娠する」
「へ?姉上。何言ってるの?僕、男だよ。あり得ないから」
「いや、こいつならやりかねない」
え?そういう人なの?
僕の表情がすべてを物語っていたらしい。
ジョセフ様が慌て始める。
「何を言っている!シシリア殿。失礼だぞ。私は本命にはそう簡単には手を出さない」
「じゃあ、本命以外には手が早いんだな。最低だな。それは。キリア。行くぞ」
「あ、姉上!あの」
姉上は僕のところまで歩いてくる。
「殿下。とりあえずこいつのことをどうにかしてください。私はキリアを送ってきます」
「そうか。そうだな。ジョセフのことは頼まれた」
「殿下!」
姉上に引きずられるようにして、僕はその場から連行される。
ジョセフ様がにこりと微笑みと向けられ、なんだかドキッとした。
「キリア。あいつはまずい。本当に妊娠するぞ」
「しないですから。僕は男だから」
そんなやり取りを姉上と繰り返し、僕は馬車に乗せられて、屋敷まで戻った。
その後、僕は女装をやめて、家の跡取りとして相応しい恰好をするようになった。
姉上は殿下の婚約者になり、家督は僕が継ぐことになったのだ。
「キリア殿」
ジョセフ様はたまに屋敷に遊びに来るようになった。
綺麗な花を持ってきてくれるんだけど、何か違う気がする。
だけど、ジョセフ様のおかげで、殿下に振られたショックは軽減された。
あんなに焦がれていたはずなのに。
僕がジョセフ様に向ける気持ちが何か、今のところはわからない。
でも一緒にいるととても楽しいので、しばらくこのままでいるつもりだ。
姉上に蛇の生殺しなんて言われるけど、酷いと思う。
ジョセフ様は、僕の屋敷にくるようになってから随分遊びを控えるようになったみたい。
僕のことが好きなのかな。
僕自身の気持ちがはっきりしていないので、聞けずにいる。
というか聞くことがおこがましい。
いつか、彼から告白されることがあったら、考えたい。
(おしまい)




