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一本線のセンタロウ

作者: きよさか せいご
掲載日:2026/03/15

きよさか せいごです。

童話ジャンル、宜しくお願いします。

 一本線のセンタロウ。


 センタロウは、いつもひとりぼっち。

 数字の「1」も、漢数字の「一」も、一本線。

 だからセンタロウは、ひとりぼっちなのでした。


 センタロウの前を、たくさんの人間の子どもたちが走っていきます。楽しそうに、笑いながら。


(いいなあ。ぼくも、あんなふうに友だちがほしいな……)


 センタロウは、しょんぼり。

 一本線の体が、くにゃりと曲がって、「く」の字になってしまいます。


(ぼくは一本線だから、友だちができないんだ……)


 センタロウは、なんでもマイナスに考えてしまいます。

 「(マイナス)」も、やっぱり一本線だからです。


  センタロウは、しょんぼりしたまま立っていました。


 そのときです。


 ビュウウウウ――。


 つよい風が吹いてきました。

 一本線のセンタロウは、ふわりと浮かび上がります。


「わあっ!」


 ヒュウウウウ──。


 センタロウは、風に吹かれて、どんどん遠くへ飛ばされてしまいました。


 やがて、風がおさまり、センタロウは、ぽとりと地面に落ちました。


「ここ、どこだろう……?」


 センタロウがきょろきょろしていると、そこへ、ひとりのおじいさんがやってきました。


 白いひげの、やさしそうなおじいさんです。


「ほうほう。君は、一本線のセンタロウだね」


「えっ、ぼくのこと知ってるの!?」


 センタロウはびっくり。


 おじいさんは、にこりと笑いました。


「もちろんだとも。君がいるから、みんな幸せになれるんだよ」


「え……?」


 センタロウは、きょとんとします。


 おじいさんは、地面に字を書きました。


「ほら、見てごらん」


 おじいさんは「古」と書きました。

 そこへ、センタロウをそっと乗せます。


 すると――


 「吉」になりました。


「古い物も、君が入ると“吉”。縁起のいい物になるんだよ」


「わあ……」


 センタロウは目を丸くしました。


 おじいさんは、つぎに「(マイナス)」を書きました。


 そしてセンタロウを、たてに重ねます。


 すると――


 「(プラス)」になりました。


「マイナスな事も、君がいればプラスになる。みんなの気持ちが明るくなるんだ」


「ぼくが……みんなを……?」


 センタロウは、だんだん胸がぽかぽかしてきました。


 おじいさんは、もうひとつ字を書きました。


 「辛」


 つらい、という字です。


 そこへ、センタロウが、すっと入りました。


 すると――


 「幸」になりました。


「つらいときも、君がいれば“幸せ”になる」


 おじいさんは、やさしく言いました。


「だからね、センタロウ。君がいないと、みんな楽しくない。君がいるから、世界は幸せになるんだ」


 センタロウは、胸をぴんと張りました。


 一本線の体が、まっすぐにのびます。


(ぼくに、できることがあるんだ……)


 センタロウは、にっこり笑いました。


 それからセンタロウは、いろんなところへ行くようになりました。


 つらい思いをしている人を、幸せにしたり。

 マイナスな気持ちや出来事を、プラスにしたり。

 一人で寂しそうな人は、二人にしてあげたり。


 今日もどこかで、一本線のセンタロウが、だれかを笑顔にしています。

※おじいさんが書いた「古」は、「十」と「口」が少しだけ、離れています。


最後までお読みいただきありがとうございます。

誤字・脱字、誤用などあれば、誤字報告いただけると幸いです。

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― 新着の感想 ―
工夫のある素敵な言葉遊び、文字遊び。 楽しく味あわせていただきました。 テーマも童話らしく素敵です。
おお、なんだか相田みつをのような語り口だと思いました。 風がひゅーっと吹き抜けていくような、そんな温かさを感じます。
ほっこりする素敵な童謡ですね(*´ω`*)
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