一本線のセンタロウ
きよさか せいごです。
童話ジャンル、宜しくお願いします。
一本線のセンタロウ。
センタロウは、いつもひとりぼっち。
数字の「1」も、漢数字の「一」も、一本線。
だからセンタロウは、ひとりぼっちなのでした。
センタロウの前を、たくさんの人間の子どもたちが走っていきます。楽しそうに、笑いながら。
(いいなあ。ぼくも、あんなふうに友だちがほしいな……)
センタロウは、しょんぼり。
一本線の体が、くにゃりと曲がって、「く」の字になってしまいます。
(ぼくは一本線だから、友だちができないんだ……)
センタロウは、なんでもマイナスに考えてしまいます。
「-」も、やっぱり一本線だからです。
センタロウは、しょんぼりしたまま立っていました。
そのときです。
ビュウウウウ――。
つよい風が吹いてきました。
一本線のセンタロウは、ふわりと浮かび上がります。
「わあっ!」
ヒュウウウウ──。
センタロウは、風に吹かれて、どんどん遠くへ飛ばされてしまいました。
やがて、風がおさまり、センタロウは、ぽとりと地面に落ちました。
「ここ、どこだろう……?」
センタロウがきょろきょろしていると、そこへ、ひとりのおじいさんがやってきました。
白いひげの、やさしそうなおじいさんです。
「ほうほう。君は、一本線のセンタロウだね」
「えっ、ぼくのこと知ってるの!?」
センタロウはびっくり。
おじいさんは、にこりと笑いました。
「もちろんだとも。君がいるから、みんな幸せになれるんだよ」
「え……?」
センタロウは、きょとんとします。
おじいさんは、地面に字を書きました。
「ほら、見てごらん」
おじいさんは「古」と書きました。
そこへ、センタロウをそっと乗せます。
すると――
「吉」になりました。
「古い物も、君が入ると“吉”。縁起のいい物になるんだよ」
「わあ……」
センタロウは目を丸くしました。
おじいさんは、つぎに「-」を書きました。
そしてセンタロウを、たてに重ねます。
すると――
「+」になりました。
「マイナスな事も、君がいればプラスになる。みんなの気持ちが明るくなるんだ」
「ぼくが……みんなを……?」
センタロウは、だんだん胸がぽかぽかしてきました。
おじいさんは、もうひとつ字を書きました。
「辛」
つらい、という字です。
そこへ、センタロウが、すっと入りました。
すると――
「幸」になりました。
「つらいときも、君がいれば“幸せ”になる」
おじいさんは、やさしく言いました。
「だからね、センタロウ。君がいないと、みんな楽しくない。君がいるから、世界は幸せになるんだ」
センタロウは、胸をぴんと張りました。
一本線の体が、まっすぐにのびます。
(ぼくに、できることがあるんだ……)
センタロウは、にっこり笑いました。
それからセンタロウは、いろんなところへ行くようになりました。
つらい思いをしている人を、幸せにしたり。
マイナスな気持ちや出来事を、プラスにしたり。
一人で寂しそうな人は、二人にしてあげたり。
今日もどこかで、一本線のセンタロウが、だれかを笑顔にしています。
※おじいさんが書いた「古」は、「十」と「口」が少しだけ、離れています。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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