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7 強制終了(シャットダウン)――光の三位一体

 遺跡の最深部。


 おそらく、先の騎士たちに絶対の自信があったのであろう。あの後、防犯らしい攻撃魔法などは全く見当たらなかった。それゆえに、想定よりも早くたどり着いたともいえる。


 そこには、巨大な水晶の心臓が脈打つ『星喰いの核』が鎮座していた。


 クロヴィスの魔法により刺激され、再び動き出そうとするそれは、今にも溜め込んだエネルギーを解放しようと、空間そのものを軋ませ、紫色の火花が散っている。


「……ここが心臓部か。流石にこいつは、さっきの騎士たちみたいに簡単にはいかねぇな」


 リンの額に汗がにじむ。光の魔道ペンを握る指先には、かつてない負荷がかかっていた。


 遺跡の核は、外部からの魔力をすべて「餌」として吸収し、暴発のエネルギーに変換してしまう。唯一の対抗策は、先ほど成功させた『属性剥離・再構築』の最終形を、心臓の鼓動と完全に同期させて叩き込むことだけだ。


「いいか二人とも。チャンスは一度。……失敗すれば、俺たちも学園も、まとめて消し飛ぶぞ」


「わかってるよ、リン。……殿下、準備はいい?」


 ガイの言葉に、クロヴィスは静かに頷いた。その瞳には、かつての傲慢さはなく、背中を預ける仲間への絶対的な信頼だけが宿っている。


「ああ。……俺のすべてを、お前たちの『器』に注ごう」


「――よし。来いッ、クロヴィス!!」


 リンの怒号とともに、クロヴィスが全霊の『紫電』を解き放つ。


 学園を、国を滅ぼしかねない破壊の雷が、ガイへと一直線に伸びる。本来、リンとガイ以外の魔力が混ざり合うことなどあり得ない。拒絶反応による爆発が起こるはずの刹那――

 リンの描いた「究極の変換魔方陣」が、雷を迎え入れた。


「(……噛み合え、食らいつけ!)」


 リンは遺跡の心臓が刻む不規則な鼓動を読み、コンマ数秒単位で図面を更新し続ける。

 クロヴィスの雷がリンの術式を通り、ガイの魔力という名の炉に溶け込んでいく。


 属性という不純物が剥がれ、ただ純粋な「力」へと精錬されるその奔流。

 それはもはや破壊の雷でも、個人の魔力でもない。三人の意志が一つに溶け合った、透き通るような白銀の光柱へと昇華した。


「――いっけええええええええ!!」


 ガイが両手を突き出し、その光を遺跡の核へと放射した。


 暴発寸前だった心臓部が、その「純粋すぎる力」に触れた瞬間、すべての回路が白く塗りつぶされる。


「システム……強制終了!」


 リンが空中に最後の一線を引くと同時に、不気味な鼓動が止まった。


 激しい光の後に訪れたのは、耳が痛くなるほどの静寂。壁面を走っていた紫色の回路は色を失い、遺跡はただの古い石造りの残骸へと戻っていった。


「……ふぅ。……完勝、だな」


 リンがへなへなと座り込み、ペンを置いた。


「やったね! 殿下、俺たちの勝ちだよ!」


 ガイが快活に笑い、クロヴィスの肩を抱く。

 クロヴィスは荒い息をつきながら、自分の手のひらを見つめていた。


「……ああ」


 己の力で成し遂げた、という充足感はない。三人だから成し得たことだ。二人が信じてくれ、自分も信じることができたから成せたことだ。


 彼は隣に座る、自分より少し年上の「お兄さん」たちを見やり、不器用ながらも、年相応の少年のように清々しく微笑んだ。






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