9/9
ソメイヨシノ
恐竜の標本が 鎮座している
硬く冷たい 冬のソメイヨシノが。
枝間から 黄金の眼がのぞく
まばたき一つない 夜の隻眼
冬のソメイヨシノ まるでニューロンだ
お前は死んでいるかのように見える
化石のように 温もりを欠いている
生を捨て うらぶれたようにも
何も得られず 諦めたようにも
ソメイヨシノ 私はお前が憎い
私は知っている お前の欺瞞を。
お前は死ぬどころか この瞬間も
密かに力を 蓄えているのだ
春が来ればお前は 花を咲かせる
ほんの一瞬の 比類なきアートを。
誰もがそれを 愛して称賛する
散り際さえも 人を感動させる
お前は生まれた意味を刻むために
じっと耐えて 力を蓄えている
ソメイヨシノ 私はお前が憎い
お前の芽を全て 削いでしまいたい
私もお前みたいになりたかった




