晴れた空の下……
晴れた空の下、今日もまた人々が行き交っている
狭い道の真ん中を、ゆっくり進む手押し車の老婆
四人組の男子高校生が、彼女を左右から追い抜く
自転車は彼らの後ろで右往左往して、車道に出る
横断しようとしていた会社員が、それとカチ合う
不意に立ち止まって、荷物をあさり始める観光客
それに気づいて、笑いながら取り囲む同行の人々
赤子を抱えて乳母車を押す母親が、狭い脇を通る
広い工事現場の出入り口に、警備員が立っていて
彼女を眺めながら、昼休憩と終業に思いをはせる
長い信号がまた赤になって、次々に車が停止する
車間が1mない人もあれば、車一台分の人もいる
車窓の中には、携帯を触る人やコーヒーを飲む人
疲れたように目をつむる人、懸命に鼻をほじる人
天高く、地上の寒さを払いきれない土気色の太陽
その太陽に、或る人は向かい或る人は背いて進む
見えないのか?太陽の背後に忍び寄る、あの雲が
不気味な予言のように、ゆっくりとしかし確実に
青空を征服しながら光を略奪する、あの遊牧民が
頼りない太陽は、厚く広い黒雲に飲まれつつある
黒く蓋された空の下、そこにあるのは骸骨ばかり
薄暗い空気の中、死を上塗りされて静止している
どれが誰やら分からない、みな平等に骸骨である
腹黒い者も口の軽い者、鼻高々な者も骸骨である
風が訪れ、木は名残惜しそうに葉を落としている
信号機は無音で淡々と、赤青黄色を交換している
車や工事重機は、休むことなく喉を鳴らしている
河川はその清濁を問わず流れ、生命を運んでいる
黒雲は変わらぬ速さで進み、やがて去っていった
明るくなった空の下、人々は何気なくそこにいた
骸骨の時間など忘れて、当然のように生きている
失われた長い暗黒の時間、一生に近い長さの時間
人々はそれを一瞬とも感じず、今日も生きている




