表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/10

第八話 うちのお店によく来てたあの子へ

 うちのブティックに来てくれてたあの子、元気かしら。

 お洋服のたくさん並んだ棚の前でうんうんうなってたから、声をかけたのよね。

 何かお困りですか? って。

 そしたらあの子、この服がかわいくて買いに来たんだけど、下に何を合わせたらいいのかわからないって言うの。

 あらやだ、かわいい!

 アタシはかわいくなろうとする女の子の味方よ。

 まずはオーソドックスな接客で様子を見て、どんなお洋服でも合いますよって答えたけれど、あの子は色々と悩んでたから、アドバイスしたわ。

 この服は、ボトムスが短い方がかわいいですよって。

 どういうときに着る予定ですか? って聞いたら、デートだって言うの。

 デート! いいわね! アタシの腕も鳴るってもんだわ。

 彼氏さんはどんなファッションがお好きなんですか? って聞いたら、ちょっと驚いてたわ。

 でもね、おデートで一緒に歩くんなら、彼氏さんのファッションとも、ある程度合わせるのはありよ。技あり。

 自分が最高にかわいいと思う格好をするのが一番いいけど、ファッションって好みもあるじゃない?

 だから彼氏さんのファッションと似た系統にそろえておくと、好みからあまり外れないのよね。

 そうしたらあの子、よくわからないから今度連れてきますって言うの。

 やだー! 初々しいー!

 アタシ、うれしくなっちゃって、楽しみにしてますね! って返事しちゃった。

 そんなふうに言って、結局来ないお客様もいるんだけれど、あの子は来た。

 本当に彼氏を連れてきたのよね。


「にゃーちゃんがお世話になってます。二宮です」


 小さく頭を下げた二宮くんに、笑っちゃったわ。

 だって、たった一言なのに、ツッコミどころがてんこ盛りじゃない?

 まず、お客さんに自己紹介されるとは思わなかったわ。

 それで、にゃーちゃんっていう呼び方をそのまま挨拶に使うの、意味わかんないわよね。

 この子たち、ズレてる!

 そんなところが一層かわいく見えて、色々相談に乗っちゃった。

 でも二宮くんたら、反応が薄いのよね。


「かわいい?」

「かわいい」

「こっちは?」

「かわいい」


 こんな様子じゃ、あの子が何を着てもかわいいって言うわね。

 ほっこりしながらそんなことを考えてたら、とんでもないものを見ちゃったわ。

 

「どっちがいい?」

「どっちもかわいいけど、にゃーちゃんは多分こっちが好きでしょ」


 にゃーちゃんはこっちが好き!?

 きゃー! 何それ!

 にゃーちゃんの好みは把握してますってことー!?

 しかもあの子、「うん」って言うの!

 当たってたのねー!?

 聞いてるアタシの方が照れちゃったわよ。

 そんな感じで、たまにうちのお店に二人で来てくれてたのよね。

 でも最近は見かけなくて、元気にしてるかなって、たまに思い出すわ。

 最後に会ったとき、同棲するって言ってたから、きっと引っ越したんでしょう。

 生活環境が変わっちゃって、来なくなっちゃうお客さんはいるわ。

 とっても残念だけど、それは仕方のないことなのよね。

 たまには顔を見せに来てくれたら、アタシはうれしいわ。

 ……二宮くんがあの子のお洋服を選ぶようなことも、あるのかしら。

 そんなことを想像して、一人でレジ前でニコニコしてる。

 アタシはかわいくなろうとする女の子の味方よ。いつでもね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ