第七話 会社の同僚、にゃーちゃんへ
洗濯物を干していたら、電線にとまった小鳥が、しきりに首をかしげているのを見かけた。
その動きが会社の同僚に似ていて、私はふふっと笑い声をあげてしまった。
パソコンの前で首を傾げている彼女にそっくりだ。
以前、首を傾げる彼女に「わからないことがあるの?」と声をかけたら、そういうわけでもないようだった。
ちょっとした戸惑いでも首を傾げるから、気にしないことにした。
同僚と昼食を食べるときに世間話をしたら、ちょっと変わっているのに気が付いた。仕事をしているときとは、別の人のようだった。
「彼氏になんて呼ばれてるの?」
「にゃーちゃんです」
真顔でそんなことを言った彼女に、私は吹き出した。いや、ちょっとは恥ずかしがろうよ。ごまかすとか、ぼかすとか、できるでしょうに。
不器用でバカ正直な人なんだなと、おかしくなった。
彼女……面白いから私もにゃーちゃんと呼ぶことにした……は、頼りないところもあるものの、一生懸命仕事をした。真面目だった。
そんなにゃーちゃんを見ていると、ついつい手を貸したくなってしまう。
わからないところはなんでも私に聞いてくれるのが、かえって仕事しやすかった。
……勝手に色々されて、失敗してから声をかけられるよりは、ずっといい。
そのことを伝えると、にゃーちゃんはやっぱり真顔で「先輩が話しやすいからですよ」と言った。
そういうときには笑えばいいのに。
真顔で言われてしまうと、私もちょっと照れ臭い。
にゃーちゃんはうちの会社では派遣社員だったから、契約期間が終わって別の会社に派遣されたようだ。
けれども、今もときどき連絡をとる。たまに食事もする。
遅くなると、にゃーちゃんの彼氏が迎えに来て、この人が「にゃーちゃん」という呼び方の名付け親かと思うと、おかしくて仕方なかった。
絶対「にゃーちゃん」なんて呼びそうじゃない。この人から「にゃーちゃん」と呼ばれたら、私だったら「なんて?」と聞き返してしまうだろう。
朝日がまぶしい。ひっくり返っていた洗濯物の袖を戻して、少ししわを伸ばす。
「今日もいい天気だなぁ」
冬だけれど、日が出ていると暖かい。




