食い逃げ犯
掲載日:2025/10/31
本作は小説ではありません。
白鳥省吾賞に投稿した「詩」です。
死んだじいさんはトンカツ屋
めでたいときも、悲しいときも
嬉しいときも、寂しいときも
いつも怒ってトンカツ揚げた
プリプリ、ピチピチ、パチパチ、サクサク
トンカツ揚げるしか能がねえ
そう言いながら油火傷の手動かし
毎日毎日トンカツ揚げた
楽しいときも、苦しいときも
父ちゃんが生まれた日も
ばあちゃんが死んだ日も
プリプリ、ピチピチ、パチパチ、サクサク
大正生まれのじいさんが
戦争に呼ばれている間
家財も家も妹も
丸ごと焼けてなくなった
それでもトンカツ揚げて暮らしてた
戦争なったら戦うか
問われた若者腹抱え
冗談じゃないとお断り
それ見たじいさんは
「頼もしい」と大絶賛
目を丸くした幼い僕に
食い逃げ犯にもう一度
トンカツ出すバカどこにいる
プリプリ怒って言いました
僕がじいさん指さすと
プリプリ怒ってじいさんは
人はいいが、国はだめだ
プリプリ怒って言いました
みんな無垢ではないけれど
踏み躙られる謂れはない
プリプリ怒って言いました
プリプリ、ピチピチ、パチパチ、サクサク




