無神誕生
四天王を決めるのは管理人。管理人の中でもかなり偉い、トップに上り詰めたさらに上、本国においての大層な学者や、賢者とたたえられた老人が集まり、様々な観点からUNCを評価する。
第一に見られる部分としては、人間関係。人望はもちろん、数少ない友人であったとしても、その友人との関係性など細かく見られた。
UNC達が気づくことはないが、島の中には管理人の監視スポットがいくつかあった。さらに、定期的に強制していたレポートなどからもそういうことが把握されていた。
第二に見られるのは強さ。身体的にも心理的にも「強さ」というもの全て。
他にも協調性や柔軟性、思考力、観察力、判断力…戦闘に必要な項目が圧倒的に多く見られ、四天王という存在を決めていった。
そもそも四天王を決めたのは、統一に向けての的にする為だった。
四天王という上の存在ができると、そこを中心にチームが形成されていく。ある程度まとまっていれば、千殊島に移った時に、戦いが始まりやすくなる、という先人の考えだった。四天王選出で最も重要視されるのは個としての存在の強さ。簡単に言うと、集団の中でどれだけ自分を持ち、示せているかだ。
樹炎の四天王決めは遅かったことで、管理人内ではよく噂されていることがある。
「王様の子供がいるんだ」と。
実際いたわけであるが、その噂は王子が四天王になるために、いくらか工作されているのではないか、という疑惑が立った。結果としては、公正に決められて真壁が四天王になることはなく、レイが選ばれたが、事実権力による圧力関与はあった。
そんな中で決められた樹炎四天王は、歴代の中でも特筆して素晴らしい四天王だと言われている。一神のルカは圧倒的な怪力を高く評価されていた。四天王選考で真っ先に名前が出るほどだった。三歳ながらに体力テストで全て満点を獲得するという脅威の身体能力を見せ、握力に関しては四天王を選考する年のもので、既に百近かった。性格に難がある、と反対の声もあったが、合理的判断力に優れ、最適解を導く考え故のものだということで、一人目に決まった。
二人目であったルアは、思考力、判断力ともに誰よりも優れ、バクの中でも常に冷静な方であり、観察眼に優れていた。戦闘に関しては少し劣るところがあったが、誰よりも頭が良かった。頭の良さで言えば、鬼波もいると声が上がったが、それは単純な知識量の話しであり、ルアは総合的にレイに勝るだけの頭を持っていた。特に、戦術に関しては誰も勝てない程で、二人目に決まった。
三人目であったソウは、前の二人に比べどこかふざけた印象を多く持たれていた。しかし、戦闘センスだけで言えば怪力を持つルカをも凌ぎ、ふざけてばかりだというのに、首席たちに劣らない頭脳を発揮した。その一方で高く評価されたのは、幼馴染二人との関係性だった。二人に何かあれば表面上は大人しいものの、その裏で密かに画策し、計画の全てを円滑に進めた。二人との関係性、というより、ソウはこの部分を高く評価され、三人目に決まった。
最後の一人は、樹炎だけ時間がかかった。他の島の選出ではそれほど困ることなかったのだが、樹炎の四人目はなかなか決まらなかった。しかもこの段階では、四天王にということでレイの名前は上がっていなかった。その理由は単純で、レイが弱く、精神的にも心もとないという評価故だった。成績だけで見たら、レイは首席。しかし、戦闘面に関しては他に圧倒的に劣るわけではなかったが、人望もなくむしろ、疎外される。当人も気が弱いところがあり、すぐに泣くということが施設時代から記録されていた。
羽谷や深川というバクの面々があげられる一方で、バク以外の者も挙げられていったが、結局決めることなく、サバイバル戦で見定めることとなった。
あの、鬼波零斗という存在を示した樹炎サバイバル戦である。
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島入りしておよそ三年、UNC達が九歳の時になると、各島で四天王が決められる。様々な観点で管理人が評価し、六月頃には確定しているそうだ。しかし、樹炎の四天王の最後の一人が六月になっても決まらず、管理人たちはサバイバル戦を企画した。
六月中旬、樹炎島の半分を使ってサバイバル戦が開催されることが発表され、ルールの説明がなされた。
その一、一人一つ渡される鈴を、奪われないよう守り抜き、七日間を生き抜くこと。
その二、能力が発現している者は使用を許可する。
その三、殺しは禁ず。殺さなければ何をしてもよい。
その四、鈴を奪えば勝ち。必要以上に傷つけてはならない。
その五、商人のみ、二日目以降棄権することができる。また、商人のみ、降参した場合、逃走を可能とする。商人に降参された者は、商人を逃がすこと。
その六、この期間のみ放たれた獣を狩った得点があるが、全て食せる。
その七、初期に用意された食料を奪うことは禁ずるが、それ以降のものは可能とする。
その他にもいくつか条項があったが、このイベントが四天王を決定するためのものだということは誰もが感じていた。ルアやソウの既に決定している三人も参加するのだが、その三人の元には組まないか、という誘いが何件もやって来た。しかし三人とも全て断り、ルカはナオと。ルアとソウは二人で挑むことにした。ルアとソウは最初、レイも誘ったのだが、レイは断固として組まないと二人に言った。
ルアがかなり心配して、その後も何度か誘ったが、レイは頷くことなくサバイバル戦の日を迎えた。
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鈴を付けて森に入れば、そこはもう戦場。
初日にして、十人が脱落するという結果を出すほど激しいものだった。
樹炎に集められたUNCは、半分ほどの奴らが能力を既に発現させていた。そのためか、十人も減った。
ルアやソウは早々に気づいたのだが、参加者のほとんどが組んでいたのだ。結論から言ってしまえば、この戦い、一人で挑んだ人間はレイただ一人であった。
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今回だけは絶対に一人で成し遂げないといけないと思った。二人に並ぶために、絶対に四天王になるために、この戦いで僕を管理人に売り込む必要がある。とりあえず、一日目は放棄だ。勝手に潰し合うだろうから、僕は狩りに専念させてもらおう。
僕は早速見つけたそこそこのサイズの蛇をナイフで仕留め、捌いておいた。その間に、ポイントを示す腕時計に得点が入った。地道に狩りで得点を重ねて行けば、鈴を奪わずしてかなり集めることも可能だとは思った。けど鈴一個に付き五十点。
狩りは獣にもよるが、デカイものでも最高三十点と考えると、やはりやるしかないとわかる。どのみち狩りは必須。配布された食料は二日分。持ち込みで持って来れた分を合わせても、三日はない。捌いた蛇の肉を適当に分けて、師匠と昔に作った小さい燻製機に入れた。一時間もすれば出来上がっているだろう。
十匹ほど蛇を狩った頃には、夕日が半分ほど沈み、辺りが暗くなってきている。
少し高い場所から辺りを見渡せば、ところどころでチラつく炎が見え、煙も上がっている。当然か。皆夕飯やら、休憩を始める。そして夜になれば眠るか。僕も寝床を探すことにし、早速一か所を巡った。丁度、岩陰になっていて、周りは木ばかり。中で火を焚いても気づかれなさそうな場所を見つけた。そこを根城にするとして、僕はカモフラージュのための葉っぱを用意し、蔦でまとめると周りにおいて、中で火を焚いた。
一人だけの森の部屋。なんとなく落ち着く。
今日狩った蛇の何匹かを適当に削った枝で突き刺して軽く焙れば今日の晩御飯。
それを食らいながら、目くらましなどの道具を作って、寝床のための葉を敷いた頃には、丁度時刻が九時を過ぎる頃だった。
「……こっからが本番だ」
焚火の火を消して、自分の拠点であるという目印に、周辺の木々にナイフで僕だけがわかる傷をつけながら、まだ灯りの見える場所を目指して外へ出た。夜に戦ってはいけないということはない。これはサバイバル。油断した奴らから脱落していく。僕は、負けられないんだ。手段は選んでいられない。
眠らずに頑張る見張りと、その近くで眠る三人組。見張りはかなりうとうとしていてまだこちらに気づいてない。先ほど作った道具の中から、睡眠ガスを仕込んだ玉を用意し、ガクンッと首をうなだれたタイミングで投げ込んだ。玉が割れれば、一気にガスが周囲を覆って、見張りも倒れて眠ってしまう。
僕は息を止めて、適当な布で口元を抑えながら、腰に付いた鈴を回収した。
「明日の朝には君ら外だよ」
眠ったままの三人を見下ろして僕はその場を離れた。夜の奇襲をする奴らはそう多くないだろう。一日中動くのに休息を取らないなど、普通はしない。僕らUNCだってまだ九歳なのだから睡眠は必須。ルア達だって今頃は寝てる。だけど僕はまだ眠らない。施設時代からそうだが、僕はいつも日付を超えるまで読書をしていたのだ。そんな僕がこの時間に眠くなることはないし、最初にのんびり狩りだけならそこまで疲れることはない。だからといって、これ以上の奇襲は中間発表の時に狙われる可能性をあげることになる。
このサバイバル、鈴を奪えば勝ちだが、その奪った鈴を奪われることもある。さっきの三人はどうやらまだ誰からも鈴を奪っておらず、狩りもできてない無得点の奴らだったが、得点を持っている人間から鈴を奪えば、そのうちの鈴の分だけの得点も一緒に得られる。
現時点で、僕の得点は蛇一匹五点×十で五十と、さっきの三人分の鈴で計二百点。中間発表は四日目の昼。その頃までに半分は脱落しているだろうから、あと十個ほど鈴をとっておけば安全圏…
とはいえ、この予測が役立つことはないだろう。このサバイバル戦は何が起きてもおかしくない。予測をしたところで、翌日には覆されることの方がわかりきっている。
(三個の鈴でもかなりいい方になる…今日のところは寝ておくか)
僕にしては早い就寝。十二時手前に眠りに就いた。明日は朝早くに起きて、水の確保だ。
翌朝、参加者の知らないところで商人の何人かが棄権し、離脱。二日目にして、残っているのは三十四人となった。二日目はこれといった激しい戦闘音が聞こえることはなく、僕も集中してトラップを張ることができた。
どうやら食料や水の調達に必死らしい。僕はというと、狩りの方で得点を稼ぐとともに、肉を得、採集でいくらかの実も手に入れた。その実から飲み物を作ることもしていたからこれと言って困ることなかった。
今日は特に誰かを襲撃するつもりもなく、トラップや残りの食料用意に勤しむ気だったので、平和なのはありがたい。巻き込まれる心配もないからだ。
狩りだけで百点を稼ぎ、合計得点は上がる一方。中間発表では上位に食い込んでいればいいのだから、今の内から大量に稼ぐ必要はない。むしろ稼げば、後半戦で狙われるリスクを上げるだけだ。
となると、これ以上稼ぐのは止めた方がいいだろうか…
狩りで着実に得点を獲得しつつ、四日目には拠点を移動することにした。
同じ場所に留まり続けると、それだけ痕跡が色濃くなるから、さっさと移動しておきたい。今日の昼には、中間発表があるから、それまではおそらく動きはない。
新しい拠点をつくり上げ、休息を取っていると、腕時計が電子音を響かせて、時刻を映していたところにランキングを映しだした。僕としてはまぁまぁに予想通りという感じだ。
一位はルカ。鈴の奪取数共々あいつは一位を取る。確か、ナオと一緒だったから、多分、ナオがルカに点を献上しているせいもあるだろうな。二位は僕だった。ここだけが予想外且つ、面倒になったと思う。三位は真壁で、四位、五位はルアとソウ。鈴の数的には他とそう変わらないが、上位であればあるだけ、しかもそれが四天王以外の、僕ならば相当のねらい目にされかねない。
それに、今頃は真壁やルカが僕に対して狙いを定めているだろう。ルカはそもそも僕を狙うだろうし、真壁は僕をなぜか目の敵にしているから、自分より順位が上だった僕を許すはずがない。あぁ、初日に三個も取るんじゃなかった。いや、狩りのせいか。
中間発表に溜息を吐いて、拠点を出ると聞き慣れた爆発音が響いて、怒号が聞こえた。
「ルカか」
拠点内で大人しく去るのを待ってもいいが、もし爆破に巻き込まれ所在がバレたら面倒だ。かといって、直接対決を挑むほど馬鹿じゃない。これはあくまでサバイバル戦。一位を取った奴が四天王になれるというわけではない。
この場で、どれだけ自身の持つ能力を示せるか。ただそれだけだ。戦いで見せる必要はないのだから、わざわざ現段階で勝てない相手に挑むのは愚行になる。
仕方なくルカのいるであろう場所を迂回して、今日狩りを行うポイントまで行くことにした。
しかし、自分の考えなどあのルカに通用するはずがなかったらしい。
「レイィィ!」
咄嗟に解体していたイノシシを投げ、ルカを退けたが、ルカは笑顔で着地してこちらを見ている。
「ほんとに獲る気なのか?」
「そうだよ。君にはわからない」
「俺様は言ってやっただろ。お前じゃ無理だ。今ここでぶっ壊してやる」
ルカは前々から僕が四天王になることを目指すと言うのを「止めろ。」と言っては説得してきていた。真意がどうであれ、今のルカは本気で僕を倒す気らしい。ルカの本気に、今の僕が敵うはずがないのは承知。能力もパワーも桁違い。精々逃げ回ってかわし続けることくらいしかできないだろう。それでも、倒されるわけにいかないのは脳の大半を占める感情だった。
「僕はここで退場するわけにいかない。だから、この勝負は逃げるが勝ちだ!」
「逃げる?お前それでも四天王になる気あんのか?」
ルカが唖然、という顔で言って口を開いた。
「あるさ。逃げるってのは悪いことじゃないぜ?」
ルカに向かって走り出し、ルカは一瞬ひるんでいた。
僕がルカに勝てる戦闘面はスピードだけ。それに、逃げ足には自信がある。
「それに僕の場合は、ただ逃げるじゃない。強奪だ」
ルカが怯んだ隙から、ルカが奪ってきたであろう鈴の一つを拝借して横を走り抜けた。ルカはあっ、という声を上げることもなく、ただ僕に奪われた鈴と僕を見ていた。
「表彰台で会おう!」
僕はルカをそのまま引き離すように森に潜って、ルカが爆破を連発させているようだが、なんとか逃げ切った。今となって思うのは「ルカに恨まれそうだな。」ということ。ルカは大量の得点を持っていても、貪欲で、ただの五点でさえも逃さない。そんなルカから五十もの得点を掻っ攫った僕は、ルカにとってみれば宝を盗んだ鼠→殺す、になると思う。同じ四天王になれば簡単には手出しされなくなるだろうが。
四天王同士が決闘して下剋上をしても無意味であり、無駄に空席を作ることになることから、管理人によって禁じられている。
この日はルカとの接触というかなり厄介な出来事になったものの、無事に切り抜け、今日の得点を得た。現時点で二位だった結果を踏まえれば、このまま一日を狩りに集中して得点を稼いでいれば、おそらく表彰台は確定。いくら能力を示す大会とはいえ、表彰されたとされないでは多少なり左右されるだろうし、生き残らなければ、その時点で「こいつは能力的に足らない」のだと排される。
生き残って表彰台は必須として、後は狩りと行動だけで能力値を示す。
逃げることだって、決断力の面ではかなりの評価を得るだろうし、拠点移動の行動すらも評価されていくものだと予測できる。
考えに耽っていると、目の前の肉が焦げた匂いを発し、僕は慌てて火から遠ざけた。
五日目は何があることもなく、狩りより採集をメインに過ごし、一日が終わった。六日目にもなれば、残っているのは猛者ばかり、というか大体知れ切った面子だろうな。ルカ、ルア、ソウ、真壁とかそういう奴ら。
こっから全員倒すか、狩りに集中するかの二択。ルカはきっと最後まで誰かを狙う。ルアは賢いから、狩りに集中し出すと思うが、ソウと組んでいると少し怪しい。僕はもちろん、狩りに集中して狩りだけで高得点を出してやるつもりだ。背負っていた弓を構え、昨日のうちに作っておいた茂みのなかに潜って静かに待つ。微かな風の音。木の葉が落ちて、木に鳥が止まった瞬間を射抜いた。
矢が綺麗に鳥の喉を貫いて、矢を回収すれば五点が入った音がした。鶏肉を持って、一度拠点へ戻れば、拠点近くに張っておいた罠には猿が引っかかっていた。
このサバイバル戦に合わせて、管理人は古今東西、様々な動物をかき集めて放ったらしいが、猿までいたとは。その猿にナイフを刺して、息絶えたところに手を合わせた。
猿は意外にも得点が高く、三十も入った。とりあえず、この二匹を昼飯にして午後には大量に稼ぐとしよう。無駄のないよう、しっかり素材としてもいただいてな。
狩れば狩っただけ肉や皮が手に入るが、それら全てを僕ら自身が持つことはなく、夜、得点総計をしている管理人が特定のポイントに設置された場所にある素材置き場へ僕らが狩った動物を回収しに来る。
自身の印として、何かしらつけておけば、後々金も入るという無駄のない仕組みだ。回収された素材は食料として管理人の食堂で扱われるか、本国で売りさばかれるなど色々道があるらしく、皮などは比較的高く売れるらしい。
僕はかれこれ既に狩りだけで軽く数十万稼げているらしい。兄貴が貯金を教えてくれた。
狩って狩って、気づいたら夕方になっている。今日の大物は熊だったが、最高点である三十点でしかない。とはいえ、それをざっと三体取ったことは大きく、他にも狩ったものを合わせれば、今日だけで二百を稼ぐことに成功した。狩った死体を分解して回収所に運び、印として、十字架を刻んだ石をセットし、まとめておく。
拠点へ戻る頃には夜で、もう森の中は暗い。微かに蛍が飛んでいる場所もあるが、それ以外の灯りは月灯りのみ。参加者が減って静まり返る森は、どことなく寂しさを纏う。
こんな夜は、何の曲かも知らない歌詞も記憶にない、あのメロディを口ずさみたくなる。誰に教わったかも知らない。ただただ記憶の奥底にあって、思い出すたびに温かくなる曲。
「もうすぐ、終わる…」
その日は結局眠れなくて、朝まで拠点近くの小高い岩の上で空を見て朝を迎えた。
今日で決まる。残りのこの三時間、少しでも多くの僕の能力を示す。
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赤い花火が上がって、終わりの合図が告げられた。
ゴール地点には管理人の他に見物にと立っている脱落者たちがいる。
その中へ森の中から現れたルカは堂々進み出て、薄汚れた格好からすぐに管理人の用意した風呂へ向かっていった。続いてやってきた人物に、大半のUNCが目を見開いた。管理人も驚いた顔をしているのがわかる。その人物は傷どころか、汚れ一つない状態で森から出て来て、まるで普段と変わらない生活をしてきたような状態なのだ。
一人のUNCがあまりの異常さに管理人に「あいつズルしてんじぇねぇか!」と叫んだが、管理人がすぐに首を振った。
「№0015は正々堂々戦い抜き、自身で成してきた。不正は一切なかった」
管理人がサバイバル戦を監視していることは誰もが知ること。そんな管理人に言われては誰もが、その結果を受け止めるほかない。あの、泣き虫と謳われ、バク最弱どころか、戦闘において雑魚と言われ続けた№0015―鬼波零斗の勝利を。
レイの勝利に驚く中へ、続いて森からルアとソウも現れ、無傷のレイに驚いたのは言うまでもない。
レイは身綺麗な状態とはいえ、三時間全力で狩りをしたため、管理人に用意された別の部屋へ進み、風呂やら食事やらをもらい受けていた。
生還者五人目であったのは渡来凛で、五人全員が揃ったところで、サバイバル戦の結果発表が行われた。
「一位、間宮流過、一二〇〇点!」
誰もが予想していた通り、一位の座にはルカが付き、拍手がそこそこに二位の発表へと映った。
「二位、鬼波零斗、七四〇点!」
拍手より、どよめきが広がった。二度目の衝撃を受けるUNCの中、レイは飄々とした顔をして結果を聞いていた。遅れて起こった拍手は、ルカの時より少しばかり長く感じられた。
三位、ルア。四位、ソウ。五位に渡来、とすべての結果発表を終わったところで、解散だろうという雰囲気になって、管理人の代表が出てきて、再びざわめいた。
「ここで、一つ知らせることがある」
管理人の代表は重々しく口を開き、四天王の証が入っている小さな箱を取り出した。三人とも儀式を経て四天王になっているため、その儀式で誰もがその中身を知っている。
「四天王最後の一人の就任をここで執り行う!」
驚いた声を出せる雰囲気ではなく、誰もが声を出さずして期待を抱えた。
箱の中から証である白く透明な宝石が取り出され、その宝石は主の元へ向かう為宙に浮いた。
他三人の儀式でも同様だった。取り出された宝石が主である者の前に飛んでいき、主の元に着くと、主の瞳の色に変わる。
宝石が飛んでいく方向を誰もが目で追った。真壁はその宝石が自分の前にやって来ると信じてやまず、もう間もなく決まる現実に向けて、歓声を待ちながら目を瞑って待っていた。しかし、歓声よりも疑問や衝撃に満ちた声が上がり、真壁は目を開けた。誰もが驚いたように、真壁もまた現実を見て驚いた。
宝石は青くなり、レイの前で浮き続けている。レイは目を輝かせながら宝石を手にし、青い宝石はレイの手に収まった。
驚くUNCを気にすることなく代表は「四人目は無神、鬼波零斗」と発した。
レイ自身はやり切った、という安堵の笑みを浮かべてルアとソウを見つめていた。その近くで、憎悪に満ちた瞳や嫉妬に飲まれた瞳があるとは知らず、無神は誕生したのだ。




