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異端の子  作者: 水園寺 蓮
希望ノ音色編
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洞窟探索


 一応既に島には上陸していたわけだから、そろそろ仲間のもとに行きたいところだが、島に戻ってきも死んでることになっているうちにやっておきたいことがあった。



 まず、千殊島の神社の中身。他の島同様、何かしら入っているはずだから先に調べたかった。前々から、拠点と神社の距離が近かったこともあって、多少なり境内の中は把握しているが、本殿は知らないし、そもそも本殿には入り方がわからなかった。


 となれば、入るのは蹴破るか、となるのだが、そんな不敬はできるはずもない。そこで再度周辺を調べてみると、兄貴たちの潜水艦が停泊する場所の近くに、どうも洞窟があるらしい。今まで、ロミさんの能力でUNCにしてみれば絶対的脅威だった海が今はただの海。調べるにはもってこいだ。


 悟と共に足場の悪い崖からゆっくり降りて、洞窟の近くの岩場に降り立った。本当は、悟だけ先に戻してやりたいところだが、悟は僕と一緒にいるのが皆には知れてるわけだからまだクル達の元へはやれない。


 足場は少し滑るようで、慎重にいかなくていけない。洞窟の入り口は、岩陰のせいでなんとなく見つけづらく、道理で今まで一切気づかなかったはずだ。緩やかながら、斜面になっているようで、洞窟は下の方へ続いていく。ライトを照らしてみても、見えるのは岩で、この地点からは下がっているのがわかる。


「ねぇレイ…この洞窟、下がってってない?」


悟も気づいたらしく、顔をしかめた。


「そうだな…」


「俺、泳げないからね」


「最悪真に地上に運んでもらうから大丈夫。」


 悟はカナヅチ。もしも泳がないと先に進めないとなれば…まぁしょうがない。


 本来、UNCは海に入ることもできず、最低限の潜水訓練くらいしかしてない。泳ぎを身につけるのはそう簡単なことじゃない。


 先へ行くにつれ、所々池のような小さな水たまりがあったが、歩く場所は確保されていた。その道も、自然にしてはよくできているほど、水たまりがうまいこと点々とあって、道を保っている。


 水は青く澄んでいて、ライトの光を反射して天上の岩に当てている。天井の岩は何の変哲もない岩のようだけど、時々、何か掘ったのか欠けたかのような箇所がある。


「あ、レイ」


「どうした」


 悟の方を見れば、悟が何かを目で追っているようで暗闇の方を見つめていた。


「何かあるのか」


「ううん、そうじゃない。けど、レイとあの先に繋がってるものがある」


「縁か」


「見たことない色してる…色の名前がわからない。白っぽいけど白じゃなくて、灰色でもない、赤にも緑に見えるけど、明確には違う…」


「なんだそれ…」


「いや、色が変わってる…!」


 悟に何が視えているか、プシケではない身にはわからない。それでも不思議な縁があるというなら、こっちには何かあるんだろう。


「この先はあまり道らしくないが…行こうか」


 今まではなんとなく、道のようなものがあってそれに沿って歩いてきた。でもこの先は水たまりも青く澄んでいる様子ではなく、どことなく濁ったもので、先程まで歩いていた場所とここが続いた場所だとは思えない。岩も、先程より鋭く険しい様子の物が多く、人が歓迎されていない気さえした。


「悟、縁はこの先か?」


「うん、そのまま先。」


 道の高低差はそれほどなくなったが、それでも自分達が島の地下にいるのは感じられた。時々、地響きのような鈍い音が響いてくる。


 不意に、天上を見てみれば、はっきりと何かの形がある。


「悟…これなんだと思う」


「…さっきまでとは全然違うね…」


 さっきまでの掘ったんだか欠けたんだかわからなかった岩にあった痕とは違い、こちらのははっきり形がわかる。それも様々だ。


 目の前のは人の形だ。隣は羽の生えた何か。人、人、人、人、人。


 木のようなもの、太陽のようなもの、雷のようなもの、水のようなもの…


「ねぇレイ、これ絵なんじゃない…?」


悟がそう言った。


 言われてみればそう見える。ただこの辺りのはまばらで、岩に一つ一つ奇妙に散らばっているだけだ。繋がりはない。それでも全てを合わせたら、何かにはなりうる。


「先へ行ってみるしかなさそうだ」


 奥に行くにつれて、荒々しかった岩は丸くなり、ついには人工的に掘られたかのような道になった。岩の壁には明確に何かが刻まれているが、何かの文字らしく僕らには読めない。


 ライトの灯りが奥へ達して、岩の壁が見えた。右か左に道が続いてるのかはまだわからないが、とにかく行き止まりだ。壁まで着いても左右には何もない。


「えー行き止まり…」


 悟は俺もう疲れたと言ってめげているが、ここまでの道が作られていて、行き止まりのはずがない、と僕は壁を調べ始めた。


「悟、座ってていいからさ、地面調べてみてよ」


 はいはいという気だるげな声を聞きながら、黙々と壁を調べた。すると、しばらくして後ろでガコンと音がした。振り返ってみると、悟が何か押したようでやらかしたかも、という顔をしながら僕を見ていた。


だがそのやらかしは正しかった。目の前の壁だったものが消えたのだから。


「うへ…まだ続くの…」


「続くと言っても、今度はゴールが見えそうだ」


僕は奥に見えた階段を悟にも見せてやった。


「うーん…確かにね。あの上から縁は伸びて来てる」


「心配か?」


「何があるかわかったもんじゃないからね。見たこともない縁、怪しすぎるでしょ」


 僕と悟はまた一歩一歩と進んで行って、階段を上り始めた。螺旋状の階段は、上から灯りを漏らしていて、一先ず出口は近いらしい。


 階段を上り切った先には扉。それも、長年あったとは思えない綺麗な状態で貼られた障子も新品のような綺麗さをしている。


「悟、この先?」


「うん」


「それじゃ、縁の主にご対面させてもらいましょ。」


 扉を開け放って、まず目に飛び込んできたのは圧倒されるほどの何かの絵。中央には禍々しい一つ目の顔をした人間らしき人物が描かれ、その周りで赤を散らす人間が倒れている。他にも今まで岩に描かれて見てきた文字らしきものや、雷、太陽…いやこれは太陽じゃない。


「ようこそお越しくださいました。鬼波零斗様」


 真正面の絵に気を取られている間に、別の部屋から見たこともない人間が入ってきていた。いや、人間なのだろうか。ここはあの道を通ってしか来られないとするなら、ここに居続けるような者が、いるというのか…しかも、僕の名前を知っている。


「貴方様がここへ来ることは少々予想だにしなかったこと。新悟様がプシケであることはわたくしの目でも見抜けなかったようです」


 真に尋ねても、知らないと返され、UNCのリストにこんな人物はいなかった。先程絵で見た一つ目の人物と似た一つ目を描いた布で目を隠し、髪をまとめ上げた黒のドレスを纏った女。一度も見たことがない。


「何者だ?」 


「貴方様はおわかりなのではありませんか?答えを求めてここに来たのでしょう」


 四方を見れば、絵の横の障子が開いていて、外の様子が見えた。ずっと中を気になっていたのだ。あの神社の周りはすべて覚えている。僕らはあの神社の中にいる。


「わたくしはここの巫女。第一世代の頃からずっとここで全てを視てきた者にございます。」 


「そんなの人間じゃない」


悟がじっと見つめながら言った。


「そうでしょうね。人間ではありませんから。」


女は手を掲げて、悟に「縁が視えますか」と尋ねた。


「色の変わる変なやつがずっと視えてる。レイと繋がってるのはなんでだよ」


「簡単な話です。わたくしと鬼波零斗様には繋がりがある。わたくしは、ここでずっと視てきました。鬼波零斗の全てを。」


 話しが見えない。この人と喋っていると頭がなぜだかフワフワしてきて上手く回らなくなる。


「わたくしは、貴方様の未来を知っているのです」


「どういう―」



 そこで僕らの意識は途切れた。


 正確には、知らない記憶の渦に飲まれて、思考が止まったのだ。ハッと目を覚ました時にはもう、あの女はいなくて、僕らは開け放たれた社の中に倒れていた。先程まで理解できなかった絵を、今は理解できる。


これは、昔の鬼が戦った時の絵だ。

そして、知らない記憶の最後に語られた言葉。


『紅月は間もなく。予言は二つ。一つ、金が赤を吐いた時、鬼は目覚め牙を剥く。二つ、鬼の呪いを穿つ鍵成す者、鬼にまた穿たれる』




 社から出て、振り返った時、僕らの前から千殊島の神社は消え去り、跡には何も残っていなかった。

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