表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異端の子  作者: 水園寺 蓮
希望ノ音色編
80/93

あいつは普通だろ?

「おい、お前辻先にいい加減勝てよ。いつまでそうやってんだよ。」


 背中にいるクルへソウは「何回目だ。」と煽るように言った。


「戦闘狂ともあろうソウがなんでそんな奴に押されてんの?」


 クルもまた、背中にいるソウへ言った。

二人は互いの敵との戦いの合間、背中を合わせ、呼吸を整えている。


 クルの相手は何度も戦い、逃亡されてきた辻先奏。今までと違うことに、以前よりも技が洗練され、クルの絶対音感でも上回ることができない。


 ソウの相手は顔を隠した長身の男。ブツブツと何か言っていて、聞き取ることはできないが、クルの耳にはいつか覚えさせられた念仏のように聞こえる。


「なぁ…」


ソウの問いかけに「多分、考えてること一緒。」とクルは返す。


「…みじけぇ間によくもまぁわかるようになったことで。」


「同じ奴好いた仲だろ。それはまぁいろいろと読めるようになるよ。」


 二人は自分の進むべき方へ一歩を踏み出して、武器を構えた。


「初めまして辻先奏!」


「その顔晒させてもらうよ!」


 辻先も男も急な入れ替えに反応できず、咄嗟に自分を庇うので精一杯だった。


 辻先は弓を盾にしたために、ソウの斧で斬られ、男は放たれた銃弾を刀で切り落としたが、態勢を崩した。


((結構こいつ動けるじゃん。))


 初めて背中を合わせた二人はそんなことを思う。


 ソウとクルはライバルであり、互いに刃を向けることは幾度とあったが、背中を合わせたことは今までなかった。動きやすい、と感じればそれはもう二人で戦える。互いが知らない内に口角が上がる。


「さっさと突破すんぞ。」


「了解っ!」


ここに、珍しい共闘が幕開けとなる。


*************


 石崎は紘に戦場を迂回するルートを案内してもらい、北の森を駆け抜けて行った。



 すぐに船の止まっている場所に着いた。あの船は確かに初日に見せてもらった管理人の船に似ている。もう少しよく見ようと思って私はそっと船に近づいて、周辺を窺った。


「おい。」


 背後にひやりとした感触。この銃は間違いなくデカイ。頭が余裕で吹き飛ぶ。けれどそれで臆する私ではない。まだ勝機はある。


「……なんですか。」


「なんですか、はこちらのセリフだ。お前、双燕の手の者か?」


この声は勝井さんではない。かといって、女の声でもない。


「いいえ。私は鬼呪一天の方よ。」


 堂々言って振り返った。敵方の人間でも『魅了』を前にそう簡単に倒れないはずがない。


「なんだ、鬼波の方か。」


 あっさり男は銃を降ろして私を見ていたが、『魅了』にかかった様子は見られない。


「あなた…」


「お前、石崎だな。悪いが自分に能力は通じない。」


 男は淡々と説明している。見るに、どこかの学者のような風貌で、顔にあるマスクが特徴的だ。


「鬼波と一緒に色々開発してたもんでな、洗脳だとかの無効化眼鏡があるんだ。まぁもとより、自分はこんなガキに惚れるほど飢えちゃいないが。」


「レイの知り合いなの…?」


「あぁ、言うなら自分はあいつの師匠だな。聞いたことないか?」


そこへ勝井が顔を出して「何してる。」と言った。


「勝井さん!」


勝井は「石崎…なんでここに?」と目を丸くしている。


「こっちのセリフですよ。どこ行ってたんですか。私達大変なんですよ。」


「悪かったよ、このお偉い野郎を迎えに行ってたんだよ。」


勝井は呆れた様子で男に目をやり、石崎に説明した。


「この人はなんなんですか?レイの師匠って…」


「そのまんまだよ。あのじゃじゃ馬娘の探求心を唯一満たし、手なずけた天才師匠。管理人研究開発部主任、矢辺亮だ。迎えに来いっていうもんだからよ…」


 矢辺は「師弟関係だ。」と言ってフンッと眼鏡をかけ直し、勝井に向けて微かに笑っていた。


石崎は「嘘…」と驚いていた。


「なにがだ。全部ほんとだぞ。」矢辺はムスっという。


「嘘よ。あのレイを手懐けるような人間がこの世にいるはずないわ。」


石崎はもう一度嘘だ、と繰り返して固まっている。


「……あいつは獣か何かだったのか…?」


 矢辺はあまりのレイの評価に目を点にし、勝井に問う。


「お前以外に対してのあいつは、厄災も同然だ。俺の胃に穴が開くのも大体あいつのせいだ。」


 勝井はお前だけが平和なんだよ、と訴えるが矢辺としてはピンとこない。


 そこへ『石崎、大丈夫そう?こっちは今やっと話せるくらいにはなったけど…』という無線が入る。


 石崎は二人に断りを入れてからすぐに「大丈夫よ。勝井さんだったわ。」と報告する。


『それならできるだけ早く戻ってきてくれる?ちょっと戦況はよくないから…』


「わかったわ。」


 石崎はそのことを二人に話し、二人も同行すると言う。


「藤井!船を拠点の方に回せ。俺とこいつは地上で行く!」


「丁度試したい道具がある。」


 指示する勝井の横で、矢辺はどこからか出した道具を背負い、立っている。ついでに勝井にも装着した。


「よし、行くか。」


 指示出しを終え、一歩進んだ勝井に矢辺は「あぁ。」と返し、何かのボタンを押した。


「は?」


 すると、勝井は宙に浮いてそのままどこか上空へ上がって行った。


「ふん…やはり威力が強すぎたか。こっちで正解だな。石崎もこれを背負え。完全自立のジェットパックというものだ。あいつには改良版を与えたが、これは安全だ。」


「あ、ありがとうございます。」


 石崎はまだ勝井の飛んでいった方向を見ていたが、矢辺が飛び立てばすぐについて行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ