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異端の子  作者: 水園寺 蓮
義焔再団編
63/93

海の主

 海馬についてすぐ、神社は見えた。海馬島に来るのが二度目であるレイにとっては大した問題がない。すぐに神社までたどり着けるだろう。


「あれだな。案外簡単に行けそうなのだが。」


『油断するな。』


「わかってるって。」


真の忠告も受けながらソウと樹を連れて森に入った。


************



「…なぁどう思うよ。」


ソウはレイと樹に言う。言いたくもなるさ。流石にこんなにも…

目の前には蜘蛛のような生物がわらわらと存在している。


「レイ?」


自分の横にいたはずのレイがそこにはいない。あたりを見回したところ、蹲って、木の陰に隠れているレイは現実から目を背けている。


「…そっか、お前蜘蛛嫌いだったな。」


ソウは笑って蜘蛛に向き直った。


「じゃ、そこで待っとけ。俺が片付ける。」


「小生も力を貸そう。」


樹が静かに並んだ。


「お、初共闘!」


「零斗、自己防衛くらいはできるな?」


樹の問いにレイは頷いた。


 ソウはレイにもまだまだ子供らしく、弱い面があると知れて嬉しく思う。

そのせいで今とても弄りたくなっているのだが、この数の多さに自分も少し余裕がない。蜘蛛はソウが一歩テリトリーに入って来たその瞬間に襲い掛かった。


『水銀楼閣』


ソウの水銀が張り巡らされ、蜘蛛はその一本一本に追い詰められる。

強さは大したことないらしい。あっという間に鋼でできた牢に大量の蜘蛛は収まった。


「…こうみると、かなり気持ち悪いな…」


「ならば消そう。」


樹が扇子を一振りすると炎が牢を包み、大量の蜘蛛は消えてしまった。原理はわからないが、これで先へ進める。レイももう大丈夫だ、というように立ち上がってソウ達に近づいた。


「……情けない。」


トボトボ歩いてきたレイは、小さく言った。


「相変わらず、蜘蛛はダメだなぁ。」


ニヤニヤしながら言うソウに、レイのスイッチが入った。


「…黙れ、クソ戦闘狂。」


「さっきまでビビってたくせに、泣き虫。」


「残念、泣いてません。」


「泣きそうな顔してただろ!」


「泣いてないなら、泣いてないんだよ。戦闘、馬鹿。」


「あ、今馬鹿って言ったな?」


「いや、戦闘、馬鹿って言っただけで、誰もお前の頭が馬鹿だとは言ってない。自分で―」


「なるほど、貴殿らにとってのルアの存在は立派なことがわかるな。」


樹が間に入ってやれやれと言ったように二人を止めた。二人はそこで気づき、咳払いした。樹は扇子を口元に当てながら両者を見つめたが、二人は樹と目を合わせない。


「普段、なかなかそのような幼稚―面白い言い合いは聞かぬ故、大人びていると思ったが、案外年齢にそぐわない心を持っていたようだ。」


樹の皮肉めいた言葉に二人は一度視線を交わすと、「今、幼稚って言った。」とレイが言い、素早くソウが「あぁ、言ったな。」と言って合わせた。


「気のせいだ。二人の面白い言い合いが見れて小生は貴殿らの理解をまた深めた。」


樹は笑うと、さっさと先へ進む。


『君もああやって言うことがあるんだな。』

真までそう言った。


「……ソウが悪いんだ。」


レイは真にだけ聞こえるようにそう言って、先へ進んだ。




**********

 気を取り直して三人は森を進んでいた。幸い、蜘蛛以降危険なく進んでいる。ここにはどんな偉人が祀られているかわからないが、レイの予想では海のことに関する人物ではないか、と。


 海馬は一番管理人が出入りしていたこともあり、何かと管理人にとって重要なUNCが設置されているのは間違いない、というのがレイの予想らしい。そうであったとして、本当に海に関する偉人ならば、ここを解放して海の脅威をなくすことができるかもしれない。そうであれば行動が楽になるだろう。この島々を満たす海はかなり特殊で、一時間も入っていれば白骨化してしまうという。しかも一度入ったら出ることはほぼ不可能であり、泳ぐことも困難とされる。これはUNCが逃げ出さないための仕組みでもあるらしいのだが、どう考えてもその海のUNCを魂ごと捕え、力を管理人のものとして行使し続けているのだとしか今では考えられない。


 昔だったら、深く考えようともしなかったが、レイと共に行動して、真相を一つ一つ知っていく度に自分が見てきたものの中の嘘が現れて、驚いて、次第に本国がつくり上げたものほとんどは歴史を隠した嘘なのだと知った。それ以来、科学で説明のしようがないものは基本、本国がUNCを利用しているのだと思うようになったし、初代王を倒さなきゃ終わらないのだと強く思った。

それがまた俺達の絆を強く結んだと思う。


「あ、もう着いた。」


前方に石造りの鳥居が見え、その先に洞窟があるのがわかる。微かに潮の匂いまでする。


「零斗、小生が先に行こう。小生のことを知っている者であればすぐに話ができる。」


「わかった。ついてく。」


俺はレイと目線を合わせ、レイと並んで樹の後に付いて行く。




 洞窟の中は少し湿っていて、たまにカニや、貝殻が落ちている。

先へ進むにつれて、地面に水が漂い始める。


「もうすぐ干潮…運が良かったかもな。」


「え、まさかここ海に繋がってる?」


「お前、ここまで来てまだ陸だと思うか?」


レイが馬鹿か、という目で言った。

確かに潮の匂いはさっきよりも強くなったが、まさか海に繋がっているとは思わない。


「レイの言う通りだ。ここは干潮の時でないと来れない。基本は海の中に沈んでいるようだ。その証拠に岩壁にフジツボやらがついているだろう。」


先頭を行く樹が俺にヒトデを投げてきた。


「レイの予想は当たりのようだ。」


樹がそう言って止まった先には祠が待ち構え、そこには霊体の人が待っている。


『わお、何百年久りだろ。人が来た!』


「「え。」」


ソウとレイが目を丸くしてみるが、その人物は気にした様子もなく、跳ねながら樹の前に立った。


『たっつる~、元気?』


「相変わらず貴殿は元気だな。」


『でさ~この二人は何?』


無邪気な笑顔と共に人物の水のような色をした瞳が二人を収めた。


「小生の子孫と、その仲間だ。」


『へぇ~もうそんなに経つんだ。ボク一人ぼっちで暇だったんだよねぇ~』


くるっと回って着物の裾を振ると、上目遣いでレイに寄った。


『えっとね、ボクは第一世代の東雲露海だよっ☆ロミって呼んでねっ!』


「僕は鬼波零斗です。」


「俺は起継総太。」


東雲がじーっとレイを見つめるが、レイは首を僅かに傾げ戸惑った。

レイは困惑げに見つめ返しながらジト目で見てくる東雲にさらに首をかしげ、困っていることを示す。


『………君、何も思わないの?』


さっきよりも低い声で東雲は言う。


「?偉人に会えたくらいにしか。」


小さく舌打ちの後、さっきと同じような笑顔で咳払いをして雰囲気が戻る。


『で、ボクに何の用?』


「いや、ちょっと待って。さっきの何?」


ソウがツッコんだ。


『え?何のこと?』


東雲はぽやっとした笑顔で首を傾げた。


またレイも「ソウ、さっきのってなんだ?」と東雲の態度を気にしていないようだった。


「え、レイ気づいてないの?」


『もーその話はいいから!』


東雲がソウに詰めよって言う。


『余計なこと言ってんじゃねぇぞ。』


ソウは理解する。裏表アリの人物だと。


「早速ではありますが、ロミさんをここから連れ出そうと思いまして。」


レイは気にした様子もなく真面目に話を進めようと言い出した。


『それって自由になれるってこと?』


「そういうことです。僕達は革命を起こそうとしています。」


現状の出来事と今後の計画をレイが話すと、東雲は面白そうに笑って『へぇ~そういうことね。盧寿ちゃんの意志を継ぐ零斗くん…ボクの力が必要なんだ?』とジッと見つめた。


「そういうことです。」


レイの意志を受け取った東雲は、くるっと舞って『…いいよ。ボクだって解放されるなら万々歳だしねっ☆』とダブルピースを作って見せた。


「では、了承も得ましたし、札を探して破壊します。」


『その前に、ボクの依り代なんかなーい?』


依り代、と聞いてレイは目を丸くし「来てくれるんですか?」と阿保けた声が出た。


『もっちろん。ボクは他の人達より暇してたから外行きたいんだよねぇ~』


「なるほど…考えてませんでした。」


『東雲の場合、ここを離れても生態系には何も影響が出ない。むしろこちらに利があるからね。』


真がレイから現れてレイに解説をした。


『あれ、真もいるの?お久っ☆』


東雲は真に笑顔を向ける。


『相変わらず、お元気そうなこって…』


真はどこか遠い目をして苦笑しながらそう言った。何かこの二人の仲にはあるらしい。


「ロミさんは海の能力…つまり、貴方がここを離れると海の厄介な力が消えるということですか?」


『そうだね、ボクがここから離れたら仕事おしまいだもん。』


レイは少し何かを考えた後、「…では依り代には何を望みますか?」と問う。


『うーん…そこの貝殻にするよ。可愛いから。』


東雲は貝殻を拾い、それをソウに持たせた。ソウが不思議がりながら東雲を見ると、『大事に持ってよね、総太くん。』と笑顔で告げる。


「俺かよ⁉」


『君は危なっかしそうだから見張らないとね(喋ったら殺す。)』


笑顔の裏が怖くて、ソウにとっては厄介な人物に目を付けられたと内心嘆いた。


「なら、早速、札は破壊しましたのでどうぞ。」


「改めて、よろしくねっ☆。」


外に出ると東雲は服を何時の間にか変え、実体化している。


「早速目的も叶ったし、海渡って帰るか。」


「零斗くん、それならボクが目的地まで送るよ?」


「お願いできますか?」


レイの顔には海の上走ってみたい、という願望が漏れていて、ソウもその気持ちはあった。危険とされていた海が、危険でなくなった今、UNCにとっての新たな発見であり、興奮せざるを得ないほどに未知なものだからだ。


「もちろんっ!任せてね。」


東雲が海に触れると海が呼応して四人の前に四頭の水でできたサメが現れた。


「乗って!この子たちが送ってくれるよ。」


「では樹炎まで。」


「レッツッゴー!」



**********

「ん?」


ルアは帰りを待つ中、海に現れた不思議な影を見つめていた。

しかも早い。しかもそれらはルアの待ち人。何かに乗っているようで、猛スピードでこちらに向かってくる。そのうち、一人は見慣れない。


「ルアー!」


「ただいまー!」


レイとソウが元気よく言い、ルアは苦笑して手を振る。


「おかえりー!」


そして四人が上陸して、二人がルアを引っ張る。


「ロミさん、こいつがルアです。」


「へぇ~ルアくん、ボクは東雲露海☆よろしくネ。」


「えーと…はい。」


ルアは最初からハイテンションなロミに若干置いてかれている。


「気軽にロミって呼んでね☆」


「レイ…偉人様か?」


「正解だ。」


ルアの目はまじで?と聞いているがまじなのだからそれ以外に答えようがない。


「こっからは準備運動をしながら雪解けを待つだけだ。」


レイはニヤッと笑って海風に吹かれる。



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