相子
レイの処刑の少し前――――
処刑するならこの場所だ。とくに、公開処刑なら。それは簡単にわかる。仮にも真壁と数年やってきた俺になら。
津宮と何か言葉を交わした後、レイは迷わず飛び込んで行った。俺達はその瞬間を見届けた後にすぐ崖からレイとは違うとこから飛び降りた。
「お前いいの?」
「今更聞くか?」
聞いたところで心の声は知っていた。
「俺達はレイと一緒に死ぬつもりなんだろうが。」
笑顔で言う兄弟は、俺も同意見なのを見抜いている。
この海のことはUNCなら誰だって知ってる。その中でも俺達バクは実物を見せられてしまっている。いや、見てしまった。
バクは全部で十六人いた。全員施設で自我のない生まれたての頃からずっと育てられてきた。だからこそ、自由というものに対する憧れは他のUNCより強い。その結果か、とある一人のUNCが脱走事件を起こしたのだ。彼は勝呂寺すぐろじ螢といい、真壁と同室だった。だからこそ俺は知っているわけだが、レイやソウの他の奴は勝呂寺螢のことを脱走した馬鹿な奴というくらいしか知らない。
勝呂寺螢は、バクにしては競争心も持たない穏やかな奴で、平和主義者だった。生き物を愛し、慈しみ育てられる奴だった。そんな奴が、ある日突然施設を飛び出て海に飛び込んだ。
当時から、俺達は既に海の説明を受けていた。
「一度入ったら出られない。」
だから絶対に入ってはいけないのだと教え込まれていた。言葉だけじゃわかっていないが、あの時からレイだけは俺達より海のことを理解していたのだろう。あれを見ても顔色を変えなかった。
勝呂寺螢が脱走して、施設内の警報が響いてからバクはホールに集められて、映像を見せられた。海の中の映像で、そこに映って海に沈んでいくのは勝呂寺螢だった。管理人は確保に行くことはせず、この映像を撮影しているようで、映像は揺れている。管理人は無表情で眺めていて、俺達がざわつくのも無視だった。
勝呂寺螢は泳ぎだしてしばらくして、動くことを止めた。苦しそうに首を抑え、息をせき込むように吐いてしまった。空気を取り込みに上昇したが、勝呂寺螢はいつまでも水中だ。彼は出ようと藻掻いているが、水がそれを拒んでいるようで、水の天井を必死に叩く彼が徐々に意識を朦朧とさせていた。ここまで十と数秒だったと思うが、この衝撃はそれよりも長く感じられて、レイ以外バクの面々は固まっていた。ざわめきもなくなって、ただ勝呂寺螢が溶け出したのを見ていた。
この海は、俺達の脱走を阻む殺人の海。入った者は助けられない限り出ることができず、意識を奪われ溶かされていく。残る物は骨と衣服で、肉は一切残されない。一時間もすればすべて骨になる、そんな海だ。バクはそれを見せられている。だからこそ、この海に飛び込むことが自殺になると知っている。
レイが飛び込んだなら、俺達も一緒に行ってやる。あいつは生きろと言ったが、あいつの勝手に振り回された俺達が勝手をしないはずないだろう。
今度は俺達が勝手をする番だ。
ほら、飛び込んだあいつの近くにでかい影がある。意識が持ってかける中で俺達は、あいつが企む一端を覗いたんだ




