我らが異端者消えゆ
翌日になって、俺達は平和連合の拠点からどこかに案内された。先に見えるは崖。その下は海である。
「ここは、減醒岬…ごめんなさい。私では貴方達の為に意見はできませんでした。どうか、レイさんの気持ちを汲んで、大人しくしていてください。」
井月がそう言った直後、真壁がレイを連れて現れた。
最後に見た時に比べ、傷が増え、血を流しているのが見えた。
「…これより、異端の存在である鬼を宿し鬼波零斗を処刑する。」
真壁の声が響く中、ざわめきが起こる。それを無視して、レイは迷いなく崖の先端に進み出る。
「レイ‼」
俺が叫ぶとレイは瞳に俺を映した。
わかった、なんて言ったけど、俺は、本当は誰よりも納得してないし反対してる。あの場であんなこと言っても、俺もレイを殴りたかった。止めたかった。後悔しかない。
それでも相棒が決めたこと…レイが命を賭して繋げたことを無駄にしたくなかった。だけど、やっぱり納得はしないよ。お前のその選択を、俺は生涯怒りとして持つだろう。
「一つだけ…教えてくれ。」
真壁が何も言わないことを確認すると、レイは俺を真っ直ぐ見た。
「後悔はないのか?」
レイは人に対して様々な思いがあったはずだ。お人好しだとしても、譲れないものが。それでもレイは俺達を生かすことを選んだ。その決断にレイは何を見出しているのか…
俺の問いの真意を見定めるようにレイは目を逸らさず風に揺られた。
そして、「僕にはちゃんとした居場所がここでできたんだ。」と静かに笑って、レイは目を前に戻した。その直前、僅かに輝いた瞳には微かな決意の炎が見えた。
「だから、守らせてくれ。」
そう言って、レイは躊躇うことなく崖からまるで階段を数段飛び降りるような気軽さで、飛び降りた。微かに見えたその笑み、レイは最後までレイだった。
光は消えた。俺達はただ涙した。
高坂は微かに笑い。真壁の双子は満面の笑みを浮かべていた。
他の者もある者は悲しみ、驚き…レイは確かに最後まで抗った唯一の光だった。
それが消された俺達。残された俺達は真壁の圧に置かれながら、平和連合の元で静かに生活する。
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処刑の数時間前――
「なぁ」
双燕に遊ばれてもなお、レイは気絶することもなく、全く変わらない様子で笑っていた。
「お前、双燕のこと嫌いだろ」
青い瞳…何度も何度も潰したかった色。その目が今俺に語り掛けてくる。
「飯は要らないのか?」
俺は持ってきた飯をレイの足元に置く。話は聞こえないフリ。聞いてはいけない。こいつは心の隙をこじ開けに来る。
「誤魔化せねぇよ。双子には特別な縁がある。」
「だったらなんだ」
毅然と返したつもりが、これがレイの罠にはまった瞬間になった。レイの口からは血が滴っているが、あの笑顔はそこにある。
「お前の縁は薄いらしい。」
「………新悟か…」
こいつは気づいてる。新悟もつまりは気づいてるのだろう。俺と双燕の縁が薄いことに。
忘れていた。新悟はプシケ…縁が見えるというのに、俺達は揃ってあいつの前に出てしまった。一瞬でも揃って視られてしまえば、あの男にはわかってしまうのだろう。双燕はわからないことでも、新悟と、聞かされてしまったレイはわかってしまうんだろう。
「真壁、お前の本当の目的は――――――」
どこまでもこいつは面倒だ。でも、だからこそ、可能なのだろう。あいつらは、鬼波零斗を信じたのだろう。
2023年11月15日
北部統一者鬼波零斗VS南部代表真壁要田による最終決戦は鬼波零斗の助命嘆願による条件において、鬼呪一天の解散、メンバーの拘束、鬼波零斗の死によって終結。真壁要田と双燕によって、千殊島は統一された。
これより千殊島は大昔からの約束に則り、一国として独立の準備に入る。反抗勢力を徹底的に潰し、国としての体制を整え、土地を整備することが急がれる。
戦争は終結したのだ。




