先にあるもの
八月八日鬼呪一天による、南部チーム全域への宣戦布告と、降伏要請が出た。
真壁の脅迫下に置かれていた小チームは密かに密使を鬼呪一天に送り、鬼呪一天側につく旨を告げた者達もいた。数としては多くなかったが、それでも確実に均衡は崩された。
レイはまず、真壁の手駒で最多戦力である青一天に挑むことにしたらしく、早速挑んだが、幹部が敵前逃亡をしたことで勝利を上げた。出来る限りの捜索は行ったが、幹部らは見つかることなく、取り残されたメンバーは平和中立連合の方に引き渡され、レイは次へと進む。守冷の方にいた潜入メンバーも青一天に勝利したことを機に帰還し、鬼呪一天は初めて全員揃った。青一天の幹部以外は平和中立連合の保護下に置き、幹部はおそらく真壁の元に逃走、というのがレイの考えで、油断はできないが、南部攻略は進められるとも言った。
次なるチームに蘭導華球というチームへ仕掛けたが、こちらは戦う前に降伏宣言と解散宣言をし、戦線から離脱。
しかし、その後平和中立連合へ引き渡そうとした際に幹部のみ逃亡、行方不明に。
簡単に要所を落として行く鬼呪一天はおおいに天下を期待され、中心街でもかなり騒がれていたが、明らかに真壁の暗躍によるできた芝居だと、戦いを進めるレイ達にはよくわかっていた。
レイは真壁の考えを探りながらも攻略を進め、南部チームのほとんどを一月ほどで掌握した。
そんな中、ある人物がレイに挑んできた。
“リベンジマッチだ、レイ。南部の者として戦いを申し込む。
夕叶崖にて、十月九日、正午。 真宮流過“
短い伝書は宣戦布告だった。
レイは微笑むと、外で訓練をしているメンバーへと告げに出る。
「管理人の研究で能力には段階がある、と言うことがわかっている。さらに最新の研究で、それが五分割されることが分かっている。五式が最低だ。最高は一式。」
ルアは戦闘型の能力者に説く。
南部戦線布告以降、今まで以上に訓練は強化され、毎日のように行われている。
今日からはついに能力強化。今まで鬼のような基礎戦闘力強化訓練を超えてきたが、能力強化はそれよりましであるとメンバーは信じている。最初のガイダンスの時点で話の難しさにダウンしている者も見られるが、ガイダンスは休憩のようなものだ。
「商人型は大抵が三式で止まってる。俺達は落差はあれど、ほとんどが三式だ。それを一式まであげる。」
ルアは段階の説明に使ったボードを下ろした。そこへ、秋崎が質問する。
「レベルが上がれば、大きな変化はあるのか?」
「能力にもよるな。例えば…」
ルアはクルを連れてくる。
「津宮の能力は『調律』初期は現れる鍵盤で、特定の物のみに効力があったが、今では鍵盤なしでも一定範囲への効力が出せるし、鍵盤を用いれば、広範囲にフィールドを形成できる。ちなみにレイの判断によると、津宮は二式だ。」
一気に目線が集まってクルは少し恥ずかしいようだ。
今や鬼呪一天は同盟チームも抱えながらの訓練で、今までより人が多い。
「…ルア、戻っていい?」
いつまでも前に立つのは慣れないらしく、副総長として立つ時は元気な顔も、今は少し伏せっている。
「あぁ、ありがとう。」
ルアのお礼を背にクルはよくわからん、という顔をして帰って行く。
「他に質問は?」
ルアは見回す。
すると、駒場が手を挙げて言う。
「戦闘型以外にも上げれば強くなれる?」
「…駒場は強いというか…」
ルアは少し困ったように考え始めた。
「ある種、強くなれる。」
ルアが返答に困っていたのをレイが繋げた。
何人かはレイの登場に驚いたが、急に現れるレイに慣れたクル達は当たり前のように話しに聞きいる。
「例えば、姿を変えることが可能になるかもな。細胞を作り出すんならそうなってもいいと思う。ちなみに駒場は現時点で二式だ。どうなっていくか楽しみだな。」
レイはさりげなくルアに何か紙を渡した。ルアはそれを見ると、顔を青くしたがそれに気づいた者はいない。青い顔のルアを隠すようにレイは立って、一同を見渡した。
すると、「レイは何式なわけ?」と、三月がキラキラした目で聞いた。
「僕か?僕は一式だ。」
「どう考えても、一式だろ。このなかでも圧倒的すぎる。」
ルアはやっと紙から顔を上げてレイの返答に付け足した。
「あとの一式は紘だ。紘の能力は最初、『分割』だったらしいが、今では『分解』だ。紘のように能力が似て非なるものに変化することもある。」
レイは解説をしながら自身の発動経緯を思い出す。
レイの場合は発現時に二式、という異状態だった。以前、クルに言うと、道理で最初から氷が自由に操れたわけだ、と言い、ルアもソウもすごいな、と驚いていたほどに。
クルの話では守冷出身の商人で、『氷』の能力者は四角い氷を作り出せる程度で、レイのように武器を形づくることはできても、保つことはできず、繊細な部分は作れもしなかったそうだ。
これが式差なのだろう、とレイは実感した話だった。
「僕の場合は変化まで行かなかったが、氷が普通の炎で解けなかったり、このように、羽として使えたりするようになった。」
レイは氷を浮遊させつつ、空中に浮かぶ。
「ちなみに、さっきルアはクルを二式と言ったが、クルはほぼ一式だ。あとはフィールドが恒常態になればはっきりと言える。何より明確なのは文様だ。一式には文様が現れる。」
レイは地上に降り、手を叩くとルアに合図した。
「それじゃあ早速、この強化訓練を受ける奴は?強制じゃないからな!」
レイはあくまでも自主参加だ、とにこやかに言う。そのせいか、ほとんどが手をあげ、参加すると言う。
「言っておくが、レイが作った訓練身体強化訓練並に表はクッソ地獄だぞ?」
ルアが、目を空に向けた。その手には既に用意されたレイの訓練表が…
「失礼な、それでもちゃんと考えたよ、安全性を。」
ルアの脅しは意味なく、ほとんどが受けることになった。
鬼呪一天メンバー以外でも、同盟チームの半分ほどは参加するということになり、レイは満足げに頷いた。
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一、 能力を限界まで使い切る。
能力の使いきり、簡単に言えば体力を限界まで使う。拠点の裏の山辺で全員、ひたすら消費していく。
ルカと戦うまでは真壁も手出ししないことは明白だからこそ、こんなことができる。
駒場や、ルアなどの系統の能力者は使い切りではなく、どうやら紘による別訓練のようだ。俺はと言うと、一式に近いからこそ、受けろということで、絶賛潰れている。
体力消費の手伝いと称して、レイは山登りをする俺達に氷で妨害してくる。俺達はそれをよけなきゃいけなくて、さらに疲れを呼ぶ。レイとしては、能力強化の訓練に加えて、より強い連中と戦うことを想定した訓練を同時に行わせているのだろう。だからこそ、一言だけ言おう。
「どこが安全だ?」
レイが安全性は考慮した、と言っていたが、降ってくる氷はかすれば傷ができるし、たまに毒塗ってあるし、落石に当たれば、滑落するし…さらには時折、斜面に氷が張っていて山から落とす気満々だ。落とし穴も用意されていて、さっき三月が落下した。
休憩しようものなら、レイが直接やってきて、氷を置いてかれる。その氷は時差的に爆発する。
最近レイは氷の中に何か、を何時の間にか仕込む技を身に着けた。こんな訓練、絶対安全じゃない。
二、 組手に己の能力を五回以上使用する。
大方疲れてきたら、レイが考えたペアで組手をする。能力を使い切ったというのに、五回の使用…俺の能力ではきついんだが…相手は秋崎。お互い疲労の色が濃い。ふと他を見れば、ソウが必死にレイに向かっている。ソウの組手の相手はレイらしい。
「ソウ、遅いぞ。」
レイは素早く俺のケリをかわしては俺に氷を落とす。
能力は体力と等しい。UNCは半永久的に能力を使えるが、限界が来ないわけではない。
さっきまで、その限界に達するために能力を使って、体力をも消費した。なのに、能力をつかえと?たしかに、地獄のメニューだ。でも、俺はレイに並びたい。レイを守れるくらいの、隣に。
いつの間に俺は離されてたんだろう…
隙を見つけては軽い不安定な能力を向ける。
「最初で出せるだけ上々だ。でも…」
レイの蹴りが俺の顔面に入り込む。
「そんな不安定じゃ逆に隙を突かれる。」
倒れる俺を見ながらレイは笑い、まだまだだ、と肩を回した。
「本当だな…クソいてぇ。」
一度半身を起こすも、結局地面に寝た。
「休んでもいいぞ?」
レイからの煽り…俺は立ち上がる。
「誰が休むかよ。まだ一分だろ?」
「流石、かかってこい。」
俺はまた突っ込んで、飛ばされて、その度に能力の必要性を考えさせられる。
限界まで削った分、出力、タイミング、頻度は考えないといけない。能力がなくなっただけで、レイとこんなにも差が出てくる。
俺は身体能力がレイに及ばないのか?いや、鋼で補っていた守りが追いつかないのだ。鋼を固形から下げれば、出力は下がるか?
試しにいつもの半分の感覚で足場を作ってみた。液体状の鋼は俺の一時的な足場に十分な強度だった。
今まで試したことがないからこそ、気づかないことだった。限界まで硬度を落として、どれくらいなら俺の足場になるか…試しながら、一歩を踏む。俺はそれを自分の動きに合わせていく。
レイの笑っている顔がわかった。
ソウは二回目の組手にして、能力の扱い方を変えてきた。
鋼を個体から液体と固体の中間程度に変えてきた。こんなに早く上手くいくとは思ってなかった。
その状態を完璧にして、使いわけができればソウは問題なく一式まで駆けてくだろう。
流石は、僕の追いかけた兄弟だ。
液体状で頻度を増やしていってもわりと続く。いつもの半分以下だから、その分使いやすい。
いつものようにレイに追いついていける。液体状だと、固体の時より、大きな負荷は掛けられない。
液体状から固体に変えて、空中に飛び上がり、ちまちま稼いだ力を集結させて、鋼玉を大きくレイの頭上に降らせた。
「どうだ!?」
確実に当たったと、と思い笑顔で土埃の中を見た。
煙が晴れて、見えたのは氷で貫かれた鋼玉。レイの顔には煽りと輝かしい笑みが浮かべられている。
「お見事。二式からは飛び出したな。」
「一式は遠いか?」
悔しい思いを隠しながら鋼を消して、座り込んだ。
「いや…あとはソウの気持ちの問題かな。訓練一日にして、見事二式を破った。正直、一式になるには実際の戦場じゃないと無理なとこもあるからな。」
「感情論かー」(感情論じゃ難しいな…)
「そういうこと。僕は君等を守りたいと強く思った時にリミッターが外れた。人は己に限界を設ける。これはそれをぶち破る訓練だ。」
俺は座り込んだまま、頷いた。
「今日はそろそろ終わりかな。」
レイのつぶやきで空を見れば、辺りは疾うに暗くなっていた。
一日目にして、全員が地獄だと思ったが何人かは感覚を掴んだりと、進歩があったようだ。レイは、明日は昼までに限界になった状態であるように、と言った。
***********
「レイ、結果はどうだった?」
「一日目にしては上々って感じ。皆すごいよ、組手最初のうちは限界で能力使うとかきついけど、ほとんどが出力をさげて使うとこが見えた。ソウに至っては一日懸けて二式を超えた。それで、紘の方は?」
紘はパソコンを開くと、結果をまとめた表をレイに見せた。
「駒場さんは早々に変化が見られた。訓練中にルアが高いとこから落ちたんだけど、それを秒で治した。」
「待って、ルアが落ちた?」
レイは有り得ない、という顔でパソコンから紘へ目を向けた。
紘は苦笑してパソコンを閉じる。
「うん…問題はルアなんだ。何か焦ってる感じで無茶をしてる様子が見られた。」
「…一先ず、駒場は問題なさそうだな。効力の強化に成功した。」
「うん、明日からは体力向上の訓練に戻ってもらうよ。」
几帳面に報告書のノートを仕上げるレイは、書き上げるとそのまま引き出しにしまい込んだ。
いつもは、しっかりとファイルに閉じているのに、と紘はほんの少しの違和感を持った。
「…ルアは明日こっちが引き受ける。秋崎が戦闘型で大分苦戦してたから、そっちに頼めるか?まずは機械相手のがあいつは安心すると思うんだ。」
レイは紘が感じた違和感を消してしまうくらい普段通りだった。
だから紘は気のせいか、と思い忘れることにした。
「秋崎は何式くらい?」
紘は再びパソコンを開いて秋崎のデーやファイルを作る。
「三と二の間。秋崎は多分、一式まで持って行けば時間を止められる。」
ニヤッと笑うレイは、紘に秋崎のメニューを渡す。紘はそれにさっと目を通しながらレイは誰よりも観察しているのだと感心していた。
「…驚きだよね。レイ、皆のメニュー用意してるんでしょ?」
そう紘が問うと「言うなよ。」と、レイは照れ隠しのごとく、窓の方を向いてしまった。
「もちろん。」
紘はニコニコしながら、レイの部屋を出た。
僕は一人一人にメニューを用意した。一日目はメニューが合うかの確認だ。
僕が仮にいなくなっても、強さがあれば、真壁はすぐには殺しはしない。それに、これからの戦いには一人が強いだけじゃ勝てない。真壁は段階の論外。高坂は疾うに一式。石崎も一式。…おそらく、今真壁の手元の集まりつつある連中はほとんどが二式以上。真壁もおそらく段階のことは知っている。それを上げることもしている。だから、目指すは二式以上。僕は一式でも上位に立てるように極めるだけだ。
今、強さを求めるのは復讐のためじゃない。この生活を、この日々を、あいつらを守るためだ。
二日目の訓練は一人一人にメニューが出された。
昨日の段階で、二式を超えたメンバーは通常訓練に戻っていいらしいが、それ以外は地獄の特訓の延長が待っていた。また、二式を超えた者の一部は講師側にもなるようだ。
「さて、ルア。今日は僕が担当する。」
「お手柔らかに…」
俺は昨日のやらかしが完璧にレイに伝わっていることを悟ったと同時に、レイが担当するという本気度を味わう。昨日、ソウが相当疲れた様子でベッドに飛び込んでいるのを見ているから、レイとの特訓のすさまじさは想像したくなかった。あの戦闘好きの体力テストでルカに並んでいた化物のソウが疲れた顔をして、速攻眠りに就いた。この現実は信じたくない程だ。
「…まずはそうだな。ひたすら転移して、今の最速を超えるスピードを出すんだ。」
レイはたった今考えた、というように明るく言った。それが逆に怖いのはなぜだろう。
「今の限界スピードより、上?そんなの…」
「正直、これはできなくていい。今の段階でルアのスピードはかなり速いこれ以上は転移物に影響が出てもおかしくないからな。あくまで目的は本人に気づきを与えることだ。気楽にやるといい。」
そう言われた俺はさっそく実行に移した。しばらく続けていると、辺りに陽炎のような楕円が残り、続ければ続けるほど大きく、はっきり揺らめいて、ほんの少し引力を伴い出した。歪んだ時空が消えない。これは今まで気づきもしなかった変化だ。いつもは俺が出たらすぐに転移でできた空間の歪みは消えてしまう。
どのくらい続けただろう、気づけば辺りは時空が歪みまくって、不思議な感覚が襲ってくる。
俺は一度止まろうとしたが、レイが笑っているのをみたら、止まることは今じゃないと思った。俺が転移するほど、俺は歪みの形を知って行く。歪みと、歪みが伴う力。
今まで、自分が起こしていただけだから、鈍かったのかもしれない。
空間は―
俺は一か所に転移の出口である歪みを集結させた。すると、青い火花が散り、鏡のような円が現れた。
「…流石。」
レイからの拍手に俺は止まった。正直、この円が何かわからない。
「これ…」
俺は手を伸ばした。
その円の中には空間が広がっている。ブラックホールみたいだな、と思ってイメージすれば、それは力強い今までの非にならない引力を帯びた。鏡の中に葉が数枚消えていった。
俺は影響を受けてないが、葉だけが吸い込まれていく。
「能力は想像の影響を受ける物が多い。紘の方に集めたのは主にその影響が強く出る人達だった。ルアのこの能力も想像力が必要だと思った。」
レイは組み分けの仕組みを説明していった。
「レイ…お前そんなに理解してたのか。」
俺はまさかレイがここまで能力への理解を深めているとは思ってないなかった。
毎晩仕事以外で何をやっているか、レイは研究をしている、ということを知っていたが、まさかここまで進んでいたとは…
「二年間は無駄じゃなかったと自分に教えたいんだ。」
二年間…レイが死んだことなり図書館生活をしていた時だ。レイは本を読み漁り、師匠という存在に受け取っていた資料をも頭に入れ込んだらしい。その資料は、管理人達の研究成果も全て記されていたらしく、俺も一通り叩き込まれる時読んだが、所見では全く何がなんだかわからなかった。
レイが俺のブラックホールに手を伸ばす。
「僕たちの能力は先人たちにもおそらく同じ人がいる。その人達と完全に同じではないが、きっと同じ方向に行く。そう考えたらメンバーに合った伸ばし方ができる。そこに僕から見たメンバーの特徴を踏まえた考えを入れれば、必ず力になる何かが生まれる。それだけだよ。」
ブラックホールの中に氷を放って、レイは満足そうに笑った。レイはどこまでもすごい。紘に手伝ってもらったらしいが、大方メニューはレイが作ったのは簡単に想像がつく。
「ルアはあとそれを完全にすれば十分だ。」
レイは俺に向き直ってお前はもう合格ラインだ、と告げた。
俺はまさか半日で終わると思っておらず、拍子抜けした。
「この訓練は気づきを与えるのが目的なんだ。段階があがるのって、最後は戦場。訓練じゃ限界がある。」
そう言ってレイは次に去って行った。
**********
一週間でレイは九人の成長を確認した。紘の方でも四人が成長した。
「思ったより、いい進度じゃね?」
「そうだね。レイがすごいんだけど。」
パソコンを突き合わせながら、レイと紘は互いの進捗を確認した。レイの方のリストにはびっしり反省まで書かれていることに紘は感心しながらレイの方へ記録を転送していく。
「人のことはよく見てたからわかるんだ。それに、能力が発現しなかった分、能力については学んでいたんだ。これくらいできなきゃ、僕は…」
「いなくなる、なんて無しだよ?」
紘は察したようにレイをジッと見た。
こないだからの作戦会議の一件からの違和感、紘はこの一週間で確信へと変えていた。
「ちゃんと皆で戦おう、最後まで。レイだけが居なくなればいいもんじゃない。クルが…今のクルにはレイが大切だから、いなくなったら…」
「大丈夫。いなくなったりしない。でも戦略的逃走は必要だ。」
レイはそっとメモ帳を隠すように仕舞いこんだ。
九月に入って、訓練は終了を告げた。あとは戦いに備えた訓練と休息を、とのこと。
後半は通常訓練に戻ったメンバーにも地獄の別メニューが用意され、鬼呪一天はかなり疲れているメンバーがいた。今休めているのが最高にありがたい。




