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異端の子  作者: 水園寺 蓮
異魂継承編
36/93

宣戦布告

「これより、会議を行う。急に呼んですまなかった。」


「別に、全員いるわけだし、問題はないよ。」

ソウの言葉に全員が頷いた。


「そうか。」


給仕を行っていた三月が座るのを見届けてからレイは告げる。


「…単刀直入に言う。明日、南部全域に宣戦布告する。」


「「なんて?」」


あまりの発言に俺達は全員聞き直した。


「揃いも揃って聞き返すってことは反対か?」


レイはなら、仕方ない…と何か別のことを考え出す。


「いや…俺の聞き間違いじゃなければ、南部全域に宣戦布告するって…」

俺は慌てて確認した。どう考えてもそんな策が本気で言われるとは思えなくて。


「そう言った。」


レイは真顔で言い「南部全域に宣戦布告する。」ともう一度言った。


「本気だったのか?」

ソウが心配そうに言う。


レイは真顔のまま頷いて、ホワイドボードに南部の拠点位置が書かれた地図を貼った。


 既に潰した麗華連合と同盟を組んだ金剛堕天などはバツ印がつけられている。確かに、秋崎との戦いの後、宣戦布告するぞ、とは言ってたけど…冗談だと思うじゃん。全域だよ?

冗談だと思ってた。だって、秋崎との一戦から一月経って、俺達が全快になっても何も言わなかった。

だからほんとは冗談だったんだ、なんて俺達の間では終わってたんだ。


 ルアが席を立って、ホワイトボードに地図を貼り終えたばかりのレイの傍に立ち、

「レイ。俺は反対だ。今のお前はなにか焦ってる。」と、強い口調で言った。


「…焦らないはずがない。真壁は今も戦力をかき集めては結束を強めている。石崎を僕が殺し損ねた以上、一刻を争うんだ。それに師匠だって…」


レイは珍しく会議で声を荒げた。


「お前の師匠の件は迂闊に動けない以上、情報を待つしかない。お前はあの人を信じてんだろ?だったらそれは今は切り離せ。今考えるべきは、俺達の今後だ。私情はチームの存続の時に出すな」


ルアのもっともな言葉にレイはすまん、と気合を入れ直して自分の頬を叩いた。


「師匠の件抜きにしても、僕らには時間がない。なら、向こうの布告を待たずに、僕達からやった方が動きやすい。そう判断した。」


「…一理あるが、逆に向こうの宣戦布告を待った方がいい。」


ルアは断言した。

これは久々にレイとルアの議論が始まる。

俺達の出る幕はなくなった、とソウと俺は呆れ半分の視線を合わせた。


「真壁は慎重派だ。宣戦布告してもしばらくは誰にも手出しさせない。布告さえしてきてくれれば、やってくる日付がわかる。こっちでわざわざ日付を知らせて、動きを読ませるのは無駄だ。」


「そうかな。日付を知ってて準備をするのはお互い様だろ。それでいて、真壁にはもう揃った戦力がある。あれだけの戦力があれば、布告してない今、無駄遣いして今日明日にでも来たっておかしくはない。それなら、警戒してこっちからさっさと仕掛けた方がいい」


俺を間に言い合うのはいつもやめてほしいと思う。

ヒートアップしない為にも二人は誰かを挟んで議論をおっぱじめるのだが、その役目を大抵俺が担う。

まぁ副総長な以上、仕方ないとは思うが、普通に、怖い。


「仮に今日来たとして、真壁がここに直接進軍はしてこないだろう?いくら無駄遣いをするにも、あいつは戦力を無駄には消費しないのはお前もわかってるはずだ。なにより、宣戦布告した側は動きが読まれやすくなることは変わりない。そうしてまで布告するのか?管理人への報告から漏洩することだって可能性としてはあるんだぞ。」


「そんなのわかってるさ。だがどのみちいつ戦うかはきっちり布告で一々行わないといけない。なら情報漏洩しようが、精々準備の時間を余分に与えるだけだ。それならこっちが主導は取った方がいい。」


「条件は向こうも同じだ。あっちから宣戦布告してくれた方が、俺たちの事前キャッチも可能で、それこそ準備の時間が得られる。下手な情報漏洩もしない。」


「情報漏洩如き構ってられないくらい、僕らには時間がないが、時間が必要だ。」


「どういうことだ?」


ルアの声が少し優しくなった。


「……真壁に勝つのは、現状では不可能だ。」


レイは苦い顔で告げた。

俺達はその言葉に絶句した。レイが不可能と言ったら、無理じゃないとしても絶望的な可能性でしかないということが言われている。

当のレイは冷静に言ってのけたが、表情には苦しさも悔しさも持ち合わせているようだ。


「だから時間を無理矢理作らないといけない。一度すべて終わらせないといけない。」


誰一人、レイの考えは今わかってない。わかってないが、何かレイの中では壮大なストーリーができている気がした。


「……まさか…」


ルアが一人だけ目を見開いてレイを見つめた。


「ねールアどーいうこと?俺さっぱりなんだけど」


ソウが議論の終わりを見計らって入った。


「レイは、多分……一度――――――」



 この日伝えられた作戦を俺達は猛反対した。だけどレイは少しでも可能性があるなら実行すべきだと俺達を説き伏せた。

俺達だってレイの言うことは理解できた。できたけど、レイにそこまでしてほしくなかった。

結局ごねにごねて、この作戦は決行されなくなった。でもレイの頭の中にはその作戦があるわけだ。

それが怖い。もしも、本当にダメだった時、レイは実行しかねない。


 とにかく俺達が粘り勝ちして、真壁の勢力を少しずつ削る方針になり、レイの暴走を止める意味でも、宣戦布告はこちらからすることに落ち着いた。

同時に、俺達は少しでも強くなるための訓練をすることが決まったのだが、その訓練がまさか地獄を見ることになると、誰一人として思っていなかった。




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