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異端の子  作者: 水園寺 蓮
鬼呪一天編
18/93

繋ぐもの


「まだいけるか?レイ。」


煽り調でソウはレイに言った。

レイとルアは昔のままのソウに安心する。自分達の知る、ソウ。変わらぬ幼馴染。今までが嘘みたいだ。

準備運動のように腕を伸ばし、指を鳴らしたソウは戦う気満々だ。それもまた昔と変わらない。


「お前こそいけんのか?ソウ。」


レイは笑いながら言い返す。


「お前ら二人とも息切れしてただろ。」

「「うっさい。」」


ルアは笑う。二人の息ぴったりの返答をいつぶりに聞いたか。


「サポートはしてやる。周りは気にすんな。」

「俺は慣れてるけど、レイは不慣れだろ?足引っ張んなよ。」


ソウは自信満々に言い、レイをちらと見た。

だが、レイの顔は昔のような恨めしく見る顔ではなく、逆にソウを煽る表情が浮かんでいた。


「その言葉そっくり返す。今の僕の方が強いし、ルアと戦ってきたんだ。久々な方こそ足引っ張んなよ。」


ソウは一瞬呆気にとられた顔が零れたが、すぐ笑顔になって、レイが成長したと小さくルアに言った。


 三人は笑う。またあの時のように。今の三人には何も要らない。懐かしむ時間も、謝罪も挨拶も。目を合わせ、己のすべきことをただ認め合った。






 ルアとソウがいる。


 そうだ、後で全部不満をぶつけてやろう。そうだな、昔の不満も今更だろ、と笑われても全部言ってやろう。それくらい、僕は言ったっていいだろう。今はとにかく残党こいつらやらなきゃ。また真壁の駒になられたら困る。倒しても、倒しても減らないんじゃ、僕らが傷ついた意味がない。


 二人の背が、懐かしいようで、嬉しく思う自分がいる。昔の僕はこうは戦えなかった。二人と共に戦えなかった。二つの背を見ているだけだった。ずっと置いて行かれていた自分が嫌で仕方なかった。でも今は、肩を並べて戦場に立てる!

二つの背を守ることができる。今はこれでいい。

昔の僕はずっと此処に立ちたかった。






 ソウは最初から変わっていなかった。ソウのあの「嫌い」は危険を知らせる言葉。そこからソウが何か考えていると予想がついた。俺は相棒を信じ切れていなかったのだ。後で、必ず不安だったことも言ってまた隣に立とう。昔と変わらないなら、ソウのやることは決まっている。


 安心感が増す。信じるのには十分だった。お前はほんとにずっとレイを守っていたんだな、ソウ。すまなかった。


ちゃんと俺はお前ら二人に謝らないとな。






 二人が一緒にいて良かった。レイは俺達を恨んでいて、本当にあの時ルアを殺したと思った。でも、よく考えたら、噂の限り甘ちゃんなのは変わってないから、ルアを逃がしてたかもしれないよな。

全然考え付かなかった。俺もまだまだ、レイへの認識が足らないな。


 今はちゃんと全部わかる。ルアはあの時の約束を覚えていた。それでいて破ったのは許せないけど、今までのレイといる様子から、ちゃんと後悔してるのが感じられた。ルアもルアだったけど、俺が一番やってきたわ。後で謝罪会見かなぁ。


俺は約束を破ったルアを怒って虚月透真と戦ったけど、俺達、言葉が足りなかったんだな。

近すぎたら、わかるだろうと高を括って話さなくてもいいと思う。


言葉が足りなかった。今から、俺の知る全部を伝えたら、また三人でいられるか?




(((もう一度…)))






 ソウの鋼がレイの氷の矛の盾となり、空間が二人の場所を支える。ソウとレイが盾と矛を代わる。ルアは二人の行動を読んで転移を行う。ルアが敵に剣を振るう時には二人がルアに合わせ、三方向の敵を刈り取った。月明かりの元で、三人は笑い、背を預け、何人もの人を倒した。


重傷にすれば、後は管理人に託せるから、加減は殺さない程度であれば十分だった。






 また一人、鋼で腕を貫いて投げた後、俺はレイの成長に感心していた。今の俺がこいつと本気で喧嘩しても、昔みたいに泣いてくれないだろうな。それは少し残念な気がした。


ふと、レイの方へ目をやるとその奥で何かが月明かりに反射した。まだ残ってたのか!?


「レイ‼」


あれは「銃だ!」と叫んだ時にはバンッと音が響いていて、レイに向かって一直線だ。俺は気づいてすぐ、レイの方へ走った。


レイは俺の声に反応はしたが、最後の敵に鎌を振るった直後の空中で、避ける動作が間に合いそうもない。氷を展開させようとはしているが、あの速度の弾は展開仕切る前に着く。ルアの転移も恐らく間に合わない。そんなことを思っているうちに俺は飛び上がり、レイを突き飛ばして、銃弾に胸を貫かれた。


同時に、狙撃手に先程放った鋼の剣が突き刺さった。




「ソウ!」


俺はそのまま抵抗する術なく地に落ちていく。ルアに受け止められ、俺はそっと置かれた。


レイも残った敵を秒で片付け、駆け寄ってきた。久々に見る泣きそうな顔だ。


「これで騙した分チャラで」

「そんなこと言ってる場合か!」


レイが布で傷口を抑えていたルアと場所を代わって、傷を覗いた。すると、すぐにルアに目をやって、ルアは厳しい顔をして俺をどこかに移した。恐らく、レイのとこの拠点だろう。


ルアが誰かを呼びに出て行って、レイが俺の止血をしながら、酸素マスクを持ってきた。


「もういいよ、レイ…」

「僕が気づいてれば…!」


後悔を零すレイの頬へ手を伸ばした。そのまま溢れそうな涙を拭ってやれば、目の奥に何かを恐れる色が見える。


「相変わらず、泣き虫だなぁ…」


いつもなら殴るなり、馬鹿、という食いつきがあるのに、今はない。

俺ちょっと最低だけど、今、レイが俺の死を恐れてることが嬉しいって思っちまう。悲しんでくれることが、俺達が完全にバラけたわけじゃないって教えてくれるから、こんな状況でも嬉しいって思う。

多分、もっと前から死ぬってことが目の前にあったから、今こうして間際にあっても、レイがいてくれるだけでそっちの方が嬉しくて、他がどうでもいい。


 心配だらけのレイに俺は告げなきゃいけない。


「UNC異常細胞…今のお前はわかるよな?」


レイは目を見張った。バクでこの病を知らない奴はいない。そりゃそんな顔するよな。


「いつ死んでもおかしくない毎日だった。」


発覚したのは二年前。レイがいなくなってすぐの、出島為の検診で引っかかった。しかし俺は誰にも言わずに管理人と治療してきた。完治した症例は少ないが、レイが生きているのを確認するまでは生きてやろうと思っていた。


「だから、もういいんだ」


 血を吐いても言葉を続けた。今、レイが生きていて、泣き虫だったあのレイが成長しているのを見れたのなら、それで十分だ。最後はレイが自分を責めないように、真実を言ってやれば十分だ。笑って終われれば十分だ。俺の死を自分のせいだと言うレイも愛おしいが、俺はそんな泣き顔よりもこいつが悔しがって泣いてる顔の方がいい。俺が見れないなら、その顔すら嫌だから、こいつには笑っていてほしい。


「俺はずっと…お前の味方だった。あの時もお前を助けたつもりだった。まぁ…ダメだったみたいだけど」


悔しいことに、俺はこれ以上こいつの傍にいてやれない。いくらUNCでも肺に穴が開いたら治るもんも治らない。現状、苦しいしな。


「ソウ…しゃべんな!」


「ルアにもすまなかったって伝えておいてくれ…お互い様だって、な…レイのこと頼んだって…」




 丁度言い終えたところで、ルアと駒場という奴が来た。駒場は俺の傷の治癒を始めた。

でも俺の体はもうダメらしい。異常細胞は傷を作る度俺の体を侵食していく。今まで多くの患者が死んでいったのはこの戦場のせいだ、と医者は言っていたくらいだ。俺は割と持ったんじゃないか?この戦場で、怪我しながらここまでちゃんと生きた。


「…レイ…俺は…」最期に告げてしまおうと思った。


「ソウ、絶対助けてやる!」


涙をこらえて力強く言うレイは可愛くもあり、かっこよかった。

そうだ、こいつは諦めも心底悪い奴だった…

俺は言えなかったけど、その言葉に笑った。あんな顔されたら、言えねぇや。






 ソウがUNC異常細胞だと明かした瞬間から、治療法の文献を頭から探し出して、考えた。ほぼ全身に回っていることを考えると成功率は極めて低い。わかってる。

第一完治にもっていけることなどほぼ不可能と言われている病だ。それでもやるしかない。


「ルア、紘を呼んできてくれ…」

「え…」


なんのために、って顔。まぁそうなるよな。

でもこれから紘も要るんだ。僕は今から―


「今から、手術する。」


僕は苦笑いとともに覚悟を決めた。きっと、僕だけが救える。




 UNC値が異常に上がり、がん細胞のようなものが作られるUNC異常細胞。進行すれば、臓器にも影響が出て、最終的に死に至る。まさかソウが罹っていたいたなんて思いもしなかった。


 管理人が出している薬を使って、なくせる細胞をなくし、根気強く浸食の激しい皮膚細胞やその他の部位の細胞たちを切除して異常細胞を消す。加えて、紘に用意してもらったスキャナーで内部も確認しつつ、可能な限り切除を進める。駒場の“治す”は新しい細胞を作る能力。故に外傷は容易く治せる。切除した部分は駒場の能力で新たな細胞を作る。キリがないほど、ソウのUNC異常細胞は進行していた。それだけ戦って傷ついてきたということだろう。モニターによる内部の映像から、臓器内にも見られ、表面の切除を進めたところでどうしようもないことがわかった。薬の投与で何とかなる、の域をとうに超えている。現状を見たら、本当に死ぬのは時間の問題だったのだと思い知らされる。




 やはり手術だけでは救いきれない。このままじゃ、助けられない。僕は足らない実力を憎んだ。それでも、できることはしたいから。方法があるなら、するさ。

この力は使いたくなかったけど…ソウを救う為なら、耐えて見せる。―だから、少し、僕に力を貸せ、鬼。


『……やっと受け入れる気になったか?』


鬼が満足そうにそう言って笑ったのがわかった。僕は無言でそれを抑え込み、鬼の力だけを得る。


『真世界』


全快までやると、きっと相当この力を使い、鬼に乗っ取られかねないが、薬でどうにかできるレベルにまで治すことは、耐えられる。いや、耐える。

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