聖女の召喚先が魔王城ってどういうこっちゃ
出てくるひとたち
聖女:聖女召喚で異世界に来ちゃった現代人。変態。
魔王:魔界を統べる女王。聖女におっぱいを狙われている。
魔王「人間どもが魔界侵略の駒に異世界から聖女を召喚するとか言ってたんで先手を打って我々が聖女を召喚してみた」
聖女「【速報】いつの間にやら異世界トリップしとった件【目の前に魔王】」
魔王「今のセリフでだいたいわかった。この聖女曲者だぞ」
部下「魔王様、クーリングオフされてはいかがです?」
聖女「へえ〜、人間たちが領地欲しさに魔界侵略してるんですか。で、その象徴に担ぎ上げられそうになった私を魔界側で先取りしたと」
魔王「そういうことだ」
聖女「人間の業深ぇ〜。危うく捨て駒にされるとこだったぜ」
魔王「ていうかおまえ緊張感無いな。我魔王だぞ。おまえ、魔界を統べる王の前に居るんだぞ」
聖女「褐色巨乳異形チャンネーが性癖なので怖くないですモーマンタイむしろ我々の業界ではご褒美ですその御御足で踏んでください私はブタですぶひぶひhshsカモングリグリ」
魔王「ぅゎなにこの聖女こわい」
聖女「お近付きの印におっぱい揉ませろください」
魔王「魔王の貞操狙ってくる聖女ってなに?」
部下「魔王様、クーリングオフされてはいかがです?」
聖女「簀巻きにされた。我聖女ぞ?」
魔王「我魔王ぞ? ていうか貞操の危機ならそりゃ根源を捕縛するだろ」
聖女「あたり前田のクラッカー」
魔王「せやな」
聖女「魔王ちゃん私と結婚しない?」
魔王「馴れ馴れし過ぎだろおまえ」
聖女「私の性癖にドンピシャとか運命でしょ。ディスティニー!」
魔王「そりゃおまえの自論だろうが」
部下「魔王様、クーリングオフされてはいかがです?」
聖女「ところで私このあとどうなる系?」
魔王「魔王軍は人間を雇っていない。だからってその辺ほっぽって人間界行かれても困るし。人間の侵略が収まるまでのしばらくの間、この魔王城で軟禁させてもらう」
聖女「キャーッ! 魔王城で監禁シチュ! 聖女が魔物にあんな凌辱やこんな凌辱をされちゃうんですね! エロ同人みたいに、エロ同人みたいに!」
魔王「しねえよ!!! 軟禁だっつっただろ!!! 魔物のことなんだと思ってるんだきさま!!!」
部下「魔王様、本格的にクーリングオフ検討しては?」
聖女「なんだかんだ言いつつ魔王ちゃんのお城で数日お世話になるなどしているのでした。3食ごはんおやつ付きふかふかベッドにバストイレまで付いてビジホ以上の待遇とは優しいなあ魔王ちゃんは……ハッ、まさかこれ、ツンデレ!?」
魔王「んなわけあるか」
聖女「魔王ちゃん! 今日もおっぱいばるんばるんですね!」
魔王「このご時世にナチュラルセクハラやめろ。そろそろ人間どもが動き出す。絶対に城から出るなよ」
聖女「城内は歩き回っていいんだ」
魔王「運動不足になったらいけないからな」
聖女「魔王ちゃん私の力とか必要無いんですか? ほら聖女パゥワーで人間追い払うとか」
魔王「聖女といえ人間の力など借りるものか。これは魔物の尊厳を掛けた戦争だ。おまえは黙って見ていればよい」
聖女「あ! もしかして聖女パゥワーって人間に効かない?」
魔王「話聞いてた?」
聖女「ところで聖女パゥワーって私本当に持ってるんですか?」
魔王「いや知らんし……」
部下「魔王様、そろそろクーリングオフの期間過ぎますよ」
聖女「魔王ちゃーん! おっぱいおっぱい! わっふるわっふる!」
魔王「ここ王の間だが? 拝謁許可出てないが? というかどうやってここまで来た?」
聖女「魔王ちゃんの匂いがしたので残り香を辿ってきました!」
魔王「なにその理由」
聖女「うへへ……魔王ちゃんのかほりが充満した部屋……うひひひっ」
魔王「こわ……」
聖女「ビニール袋くだちい! 魔王ちゃんの匂いを持って帰ります!」
魔王「残念だったな。ビニール袋という技術、概念はこの世界には無い」
聖女「なん……だと……」
魔王「わかったらとっとと出て行け。こっちは仕事中だ」
聖女「じゃあ肺いっぱいに魔王ちゃん(の空気)吸い込んでから出て行きます! すうーーー」
魔王「出てってえ!!」
部下「魔王様、クーリングオフの期間過ぎましたよ」
聖女「魔王ちゃん結婚しよ!」
魔王「断る」
聖女「と言いつつ魔王城に私を軟禁してるってことは脈アリでおk?」
魔王「んなわけあるか。おまえをここに置いているのは人間どもが聖女召喚をできないようにする為の抑止だ」
聖女「どゆこと?」
魔王「聖女はこの世界に一人だけしか喚べんルールになっている。おまえがこの世界に居るという現実は、異世界から聖女をもう一人喚び寄せることは不可能という事実になっているんだ」
聖女「そんなに聖女って脅威?」
魔王「いや別に。聖女とは言うが、その実そう呼ばれているだけの、ただ異世界から来たってだけの一般人だし」
聖女「そうなんだ、一般人なんだ」
魔王「だがさすがに可哀想だ。異世界に住む者を拉致した上特別な力があるのだと吹聴し、戦争に出し使い潰すんだぞ。人間どもは領地拡大という欲に眩み、生物の尊厳を踏み躙る行為などなんとも思っていないのだ」
聖女「……魔王ちゃんは、私を元の世界に帰す気があるんですか?」
魔王「もちろん。この戦いが終わったら、この魔王手ずからおまえを元の世界に丁重に帰還させよう。だから安心して我が城で終戦を待つがいい」
聖女「魔王ちゃん……
……お尻の形めちゃくちゃ良いですね」
魔王「話聞いてた?」
聖女「安産型ってやつですね! ちょっと揉んでいいですかっ?」
魔王「もうやだこの聖女」
聖女「魔王ちゃんが遠征に出て一週間。お城の魔物さんがごはんくれるし話相手になってくれるし快適に過ごせてはいるけど、そろそろ魔王ちゃん摂取しないと死にそう」
部下「聖女様」
聖女「あ、部下さん。どうしました?」
部下「ええ。実は私、ルギラウ王国の宮廷魔導師です」
聖女「は?」
部下「人間ですよ。今まで幻影魔法で魔物どもの目を欺き、魔界に潜入しておりました。聖女様、私と共に人間界へ行きましょう。ずっと救出の機会を窺っておりました。魔王が前線に居る今が好機です、さあ!」
聖女「えっ、や、やだー! 私魔王ちゃんと結婚するって決めたのー!」
部下「その感情は野蛮な魔物に植え付けられているだけの幻想です! あなたはこの戦いで成果を出せばルギラウ王国の王妃も夢ではないのですよ!」
聖女「うわあ〜〜〜前線に出す気満々だあ〜〜〜!」
部下「転移魔法で我が領地へお連れします。さあ聖女様、さあ!」
聖女「や、やだ! 人を人だと思わない悪逆非道の世界に行くのはイヤーッ! たすけて魔王ちゃーん!!」
魔王「はーい」
部下「え?」
聖女「え?」
魔王「魔王だが?」
部下「ま、魔王!? いつからそこに!?」
魔王「ずっと備品に化けていた」
部下「で、では前線に居るという魔王は……!?」
魔王「影武者だ、……シャドウ・マオウだ」
部下「なんで言い直した?」
魔王「で? おまえ、うちの聖女になに手ェ出してんだ?」
部下「くっ、聖女は元々我々のものだ! 返していただく!」
魔王「聖女は誰のものでもない。だいたい先に魔界で召喚してんだよ、所有権はこっちにある。それを勝手に拉致るなんざ、魔界と人間界の軋轢を余計に拗らせるだけだ。聖女欲しさにこの魔王の反感を買ってみろ、近隣諸国から苦情苦言が殺到、下手すりゃ人間界で戦争おっ始めることになるぞ。やめておけ」
部下「化け物風情が人間に論じるなど、我々と同じ土俵に上がっているつもりか? この下等生物め!」
魔王「その下等生物に太刀打ちできないからって異世界の女に戦争任せる気分はどうだ?」
部下「ぐぬぬ」
聖女「結局一人で転移魔法使って自国に逃げ帰る魔導師さんであった」
魔王「ちなみにあいつには人間界の空気で作動する魔王製爆弾仕込んでたんで今頃帰った先で爆発四散してるだろうよ」
聖女「うわあ」
魔王「アレが諜報員なのはわかっていて泳がせていたし、宮廷魔導師なのも把握済みだ。これでルギラウ王国とやらの中枢をある程度爆破出来ればいいんだが」
聖女「……んふふ」
魔王「おい、なにを笑っている」
聖女「んっふふふ、魔王ちゃん、「うちの聖女になに手ェ出してんだ?」だって! うちの聖女にって……んんふふふふふ!」
魔王「………………」
聖女「これはもう魔王ちゃんは私の嫁なのでは? 結婚では!?」
魔王「んなわけあるか」
聖女「えへ、でもありがとうございます、魔王ちゃん。また命救われちゃったな」
魔王「救った覚えはないが」
聖女「悪辣人間国家に拉致られそうになる私を二度も助けてくれました! 魔王ちゃん、あなたは私の命の恩人です!」
魔王「……ばかな。我がやっているのは結局人間どもと変わらん。異世界の者である聖女を喚び付け、都合よくこの世界に留まらせているのは我も同じだ」
聖女「なんてこと言うんですか! クソみたいな現実にさよならバイバイできてこんなサイコーな環境で良くしてもらって、むしろありがたいですよ! ていうか帰りたくねえっす! 現世には嫌な思い出しかないんですよォ〜〜〜!!」
魔王「そ、そう」
聖女「それよりおっぱい揉ませてください」キリッ
魔王「なにこの聖女」
聖女「そして半年の月日が流れちゃったのでした」
魔王「人間しつこい、全然終戦しないどころか休戦の提案も聞かない。本気出せば我らが勝っちゃうんだぞ。人間は拮抗してると思い込んでいるが我が軍これでも生かさず殺さず手加減してるんだぞ。とっとと魔界から手を引いてほしいのだぞ」
聖女「大変ですね。魔王ちゃん結婚してっ!」
魔王「聖女もしつこい」
聖女「うーんつれない。でもそんな魔王ちゃんもかわいいッ!」
魔王「疲れる……」
聖女「大丈夫? おっぱい貸す?」
魔王「………………」
聖女「なーんちゃって、」
魔王「…………ん」
聖女「くぁwせdrftgyふじこlp」
──あの魔王さまが。
──私の冗談に、どういう気紛れで付き合ってくれたのかはわからないけれど。
野良猫が初めて心を開いたみたいに。ぐりぐりと私の胸板に頭を擦り寄せる。ああ、まな板でごめんなさい。貧乳はステータスですが、しかしあなたを癒すにはこの肉量じゃあ足りないですね。肉布団失格です。
そっと、そっと。繊細な果実を扱うように、彼女の頭を撫でる。「毎日頑張っていてえらいですね」なんて声を掛けてみちゃったりして。でもいつもの抵抗も文句も無く、彼女は安心しきったように、私にその身を預けているのです。
「ど、ういう、風の吹き回し、でしょうか」
「なんだ、おまえもそんな顔をするのだな」
動揺と羞恥で頭が沸騰しそう。きっと私は春先に旬を迎えた真っ赤ないちごみたいな顔をしているにちがいありません。私は、その。追い掛けるのは得意ですが、こう、ぐいと来られるのは、慣れていないんですよ。
魔王さまは、生クリームのような甘くふわりと蕩ける笑みを浮かべていました。……はじめてです。こんな優しい笑顔を、私に見せてくれたのは。
ああ、だめです。いけません。いつか帰る私なのに、あなたのこと、もっと好きになってしまいます。
聖女「魔王ちゃーん遊んでー!」
魔王「しつこいくどいしぶとい」
聖女「今日の塩対応も最高! 魔王ちゃんファンサして!」
魔王「もうやだこの聖女」
聖女「とか言いつつ最近はデレを見せる割合が増えてきているので満更でもないと見た」
魔王「んなわけあるか。おまえの面倒を見るのは我々の都合だと何度言えばわかるのだ」
聖女「あてっ、あてっ、爪でほっぺツンツンは痛い!」
魔王「……まあ。緊張感の無いきさまのお陰でこの戦時下でも余裕が持てているのは悔しいが事実だ。人間のクセにうちの魔物たちに分け隔てなく接し、魔王軍の雰囲気を緩和しているのは功績と言える。……ん? 褒美を取らせるべきか?」
聖女「えっ、魔王ちゃん私にご褒美くれるの!?」
魔王「仕方がない。おまえを城に押し込んでばかりで嗜好品も着るものも必要最低限しか与えられていなかった責もある。何か欲しいものはあるか? 出来る範囲で用意させよう」
聖女「はいはいはーい! 魔王ちゃんのハジメテ! 初夜的な意味で!」
魔王「出・来・る・範・囲・で!!」
聖女「ま、まさか魔王ちゃん開通済み!?」
魔王「んなわけあるか!! 残念ながら魔王に登り詰めるまでというかその後もそんな暇無かったわ!!」
聖女「(自分が処女だって白状したぞこの魔王)」
魔王「なんだその顔は」
聖女「んへへ、楽しみが増えたなって」
魔王「うわ悪寒がすごい」
魔王「……本当にこんなものでいいのか?」
聖女「モチのロン! 魔王ちゃんのハジメテ、いただきまーす!」
魔王「語弊がある言い方をするんじゃない。だいたい、我の初めて作る手料理……野菜炒めなんかで満足できるのか?」
聖女「初心者さんありがち野菜の水分でベチャベチャ、大量のコゲ、火が通ってるか心配な野菜たち! これを果たして野菜炒めと言っていいものか甚だ疑問ですが、これでいいんですよ、これがいいんですよ!」
魔王「今ディスった? 今魔王ディスられた?」
聖女「ディスってませーん! 好きな子の手料理っていうのはどんな形であれ愛おしいってことを口にしただけでーす!」
魔王「好っ……」
聖女「(ストレートに好意を伝えると照れるんだなあ)」
魔王「はよ食え」
聖女「うっす。もぐもぐガリガリゴリゴリ」
魔王「その咀嚼音はもしかしなくともめちゃくちゃ生焼けだな? ぺっしなさい! お腹壊すぞ!」
聖女「やー! 完食するのー!」
魔王「駄々を捏ねるんじゃない! 料理をしたことがない奴が作ったものなんか旨くないだろう!」
聖女「おいしいですよ! だって魔王ちゃん、私の要望に応えて一生懸命作ってくれました! そのスパイスがものすごく効いてるんですから!」
魔王「…………つまりそのスパイスが無ければ旨いとは言えないんだな?」
聖女「ノーコメントで」
魔王「くっ……見ていろ、野菜炒め程度そのうちマスターしてやる。せいぜい楽しみにしていることだ!」
聖女「かわいい」
魔王「だからその野菜炒めもどきを食べるのやめろ。お腹壊すぞ」
聖女「それもまた愛なので」
魔王「そんな愛あってたまるか」
聖女「ごちそうさまでした!」
魔王「完食しやがっただと」
聖女「十分おいしかったですよ。やり方さえわかれば魔王ちゃんならすぐ上達しますよ!」
魔王「…………まあ、なんだな。作った料理を平らげてもらう、というのは嬉しいものだな」
聖女「ぜひまた作ってください! なんならお手伝いだってしますし、いつでもウェルカムですよ!」
魔王「……おまえは?」
聖女「へ?」
魔王「おまえは作ってくれないのか?」
聖女「い、いやー、私の料理なんかつまらないですよ? ありきたりなものしか作れないですしおすし」
魔王「そう卑下するな。我よりはマシなものを作れるのだろう? 今日の我の夕食、おまえが作ってみろ」
聖女「むむむむむムリですってムチャですって!!」
魔王「そうか。我はおまえの手料理が食べてみたかったのだがな」
そう言う魔王さまのご尊顔は小悪魔のような笑みを湛えていて。
ああ、かわいい。敵わない。私のハートにラブドッキュン。脳髄に甘い痺れを感じつつ、私に拒否権なんてないのだなあと実感し、観念しちゃうのでした。
「魔王ちゃんずるい……」
「そうか。魔王だからな」
理由になっていません。
ちなみに私の手料理ですが、私がものの見事にお腹を壊したので延期になりました。慌てふためいていた魔王ちゃんがそれはまあ可愛らしくて、というのはまた別のお話。
おわれ