嘘の日に、切なる願いをかけて。
※死の表現が出ます。苦手な方はこのまま閉じてください。
「ああ、やっぱりアップしてる」
SNSの画面を見て、思わず声を上げた。
毎年ウチで"AIロイド"をレンタルしているお客さん。
"娘20歳の誕生日"
そんな言葉と共に、ネットには、若い女の子と中年男性が寄り添った写真があがっている。
女の子の方は、貸し出した"AIロイド"だ。
AIロイド。
登録した情報通りに姿カタチを変えて、会話も出来る、ドッペルゲンガー的な等身大人形。
ぱっと見は、人間そっくり。
ただし、近くで見るとそれとわかるし、実在する人間の容姿をトレースすることは禁じられている。
出来るのは、ランダム生成の架空容姿。
または鬼籍に入った人間。
死亡証明と写真を示せば、その形状を被せることが出来る。
買い取るには高額なため、レンタルする人が殆ど。
一日レンタルでも相当高い。
大抵は故人を偲ぶ特別な日に、予約して借りに来る顧客が多い。
写真の男性も、そのひとりだった。
四年前に一人娘を失い、以来、毎年AIロイドを連れ帰っては、ネットに記念写真を残している。
「娘さんを殺害した犯人、まだ捕まってないんだっけ」
(そりゃ割り切れないよな。毎年、誕生日を祝って、生きてるって思いたいんだろうけど)
しかもよりによって4月1日とか、嘘の日に虚構のひととき。
切なすぎる。
「はぁ……」
溜息ひとつ落として、俺は重い腰をあげた。
レンタルAIロイドは、別れを惜しんで返すのを渋る相手がいるので、約束時間に引き取りに行くのが基本。
貸し出し先でスキンを外し、別の姿に変えることで速やかな取引が成立する。手間はかかるが、それも高額料金のうちだ。
てくてくと道を歩く。
けたたましいパトカーのサイレン音が、通り抜けていく。救急車も続いてる?
「?」
警官達の到着先は、AIロイドを貸した家だった。
家の中から、騒ぐ声が聞こえてくる。
「俺の娘を殺したヤツを! 捕まえたかったんだ! 絶対ストーカーしてた奴だと……!」
そんな言葉の断片。
「だからネットに写真をあげた! 生きていると思えば、いつか来ると!」
そうして運び出されていく担架と、拘束されて歩くウチの客……。
彼の血濡れた服が、物騒な想像を鮮烈に肯定していた。
(えっ、つまり……?)
毎年写真をあげていたのは、殺人犯を誘き出そうとしていたから?
復讐?
囮に使われたウチのAIロイド、参考資料として警察に抑えられそうな気がする。
返却手続きが厄介そうだ。
「盛大なエイプリルフールだなぁ」
そして俺は、近くの警官に声をかけたのだった。
お読みいただき有難うございました!
慌ただしく出かけておりまして、"あとがき"書くの忘れてました(;∀;) 投稿後3時間…。
いち早くお読みくださいました皆様、すみませんー。
そんでもって、今買って帰ったエビチリのお惣菜(甲殻類アレルギーが家族にいるので、エビ食べたいときは私用のを単独で買う)のラップが外れてて、エコバッグの中に惨状が展開し(涙)、洗ってたところでした。
【悲報】エコバッグの中、赤く染まる…( ;∀;)
ううっ。これが嘘なら良かったのに…。
エビチリ、ビニールの小袋に入れてたら良かったです。外れることってあるんですねぇ。油断してました。
はっ、待って。いまこの"あとがき"で作品の余韻、台無しになってない? "あとがき"無いままの方が良かったんでは、とフト我に返る昼下がり。