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閑話 言葉の綾


 これは、俺が社長と焼肉に言って帰ってきた時のこと。


「……姉貴」

「ちょっと待って。今判定中」

「それはわかるんだけど、そろそろ離れてくれない?」


 現在、姉貴はなぜか俺の背中にピッタリとくっついて、制服の臭いを嗅いできていた。

 暑苦しいからそろそろ離れて欲しいんだけど、なぜか離れてくれない。


「何言ってんの。急に焼肉の臭いさせて帰ってきたあんたが悪いんでしょ」


 俺はアリスとして女装する時、専用の制服がある。

 大抵それを引っ張り出してきて着ているのだが、今日は制服のシャツをたまたま洗いに出していたのだ。


 幸いにも俺の通う高校は男女共にシャツが同じなので、そのまま着まわして行ったのだが……帰って来た、時匂いで焼肉に行ったことが姉貴にバレてまった。

 アリスの一件は全部伏せて社長と焼肉に行ったことは白状したがが、入念にチェックされている。


 そんなに焼肉の匂いが好きなんだろうか。


「ねえ、なんでそんなにチェックしてんの。もしかして黙って焼肉に行ったこと怒ってる? 急に社長から呼び出されたから仕方なかったんだって」

「違うわよ。女の匂いをチェックしてんの」


 あれ、違うのか。

 俺は食事に執着がある方なので黙って焼肉に行かれたら結構嫉妬するし、姉貴もそうだと思ったんだけど。

 それにしても女の匂いって何?


「女の匂いって、社長としか行ってないけど?」

「それを今判定してんのよ。いいから黙ってなさい」


 もう何を言っても聞かなそうなので、俺は何も考えないことにした。

 なされるがまま俺は棒立ちで姉貴のチェックが終わるのを待つ。

 暇だったのでSNSをチェックしてると、どうやら姉貴がこのあと配信があるらしい。


「姉貴」

「はによ」


 背中に顔を埋めているせいで、声がくぐもっている。


「このあと配信じゃないの」

「そうよ」

「あと十五分後じゃん。準備しなくていいの」

「いいのよ。今は浮気調査が先なの」

「浮気調査って……やっぱり焼肉食べたかったんじゃ」

「だから違うって言ってんでしょ……まぁいいわ。大体わかったし」

「分かったって何が……ハッ!?」


 もしかして、姉貴は嗅覚が非常に鋭くて、臭いから何の肉の部位を食べたとかわかるんじゃ……。

 そして夕飯で同じメニューを再現するために、俺をスーパーへと使い走らせるつもりなんじゃないだろうか。

 俺が食べたのは……牛タン、ホルモン、カルビ……あとは覚えてないけど、絶対持って帰ってくるのが面倒なやつだ。

 この面倒くさいことをさせて俺に罰を科すつもりなのでは?


「なんかしょうもないこと考えてない?」

「いえ何も」


 なぜか姉貴に考えてることがバレてしまった。

 社長とか愛好とかもたまに考えてることを見抜いてくるし……女の人って怖いなぁ。


「あ、そうだ。理太郎、今日はあんたも一緒に出なさいよ」

「え、俺も? でも告知してなくない?」

「いいのいいの。別に視聴者も理太郎のことを見たいと思ってるんだから」

「そうかなぁ……」


 美少女を見にきて画面に男がいたら、一定数萎える人もいるんじゃないんだろうか。


「だって、今更だもん。いつも配信で理太郎のことは話して……」


 そこでハッと姉貴は口を手で塞いだ。


「え? 俺のこと話してるの?」

「言葉の綾よ?」

「いや、綾っていうか完全に……」


 がし。

 顔を両手で挟まれた。


「言葉の綾よ、いいわね?」

「……はい」

「ほら、さっさと行くわよ。視聴者が待ってるんだから」


 そうして俺は姉貴に襟首を掴まれて引き摺られていった。

 後日、やっぱり肉は買いに行かされた。

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