表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/48

誤解じゃなかった

 俺が決死の言い訳により命を繋いで。

 なんとか機嫌の直った姉貴と一緒に、俺は学校へと登校していた。


「……姉貴」

「なによ」

「なんで今日はそんなに近いの?」


 肩が触れ合うほどに近くを歩いている姉貴には俺は尋ねる。

 今日の姉貴はいつも以上に近かった。

 普段はこんなに近くじゃない。せいぜい隣を並んで歩く程度だ。


「別に……なんでもないけど」


 姉貴は頬を膨らませてそっぽを向いた。

 やっぱりまだ怒っているのだろうか。

 この休日に俺は姉貴に色々と献上したりしたのだが、どうやら未だにご機嫌斜めらしい。


「姉貴……まだ怒ってる?」

「怒ってないけど?」


 嘘だ。それは絶対に怒ってる人のセリフだ。


「だから、愛好と俺は本当に付き合ってないんだって。愛好が好きなのは俺じゃなくて萌園アリスの方だから。俺はめちゃくちゃ嫌われてるんだって」

「……ほんとに?」

「ほんとうほんとう。……あっ」


 そこで俺は前方に見知った顔を見つけた。

 後ろ姿でも特徴的な亜麻色の髪のツインテール。


「おーい、愛好!」


 俺は愛好に手を振って近づく。

 丁度いい、姉貴の誤解を解くのに協力してもらおう。


「みゃっ」


 俺の声に振り返った愛好が変な声を上げた。


「あ、あああんた! どうしてここに……」

「一緒の高校なんだから同じ道歩いてもおかしくないだろ……」


 おかしなことを言う愛好に首を傾げる俺。


「それよりも姉貴の誤解を解くのを手伝ってくれよ。お前がいなかったからこっちは大変だったんだぞ」


 俺は愛好の手を掴む。


「ひゃあっ!?」


 びっくりしたのか愛好が大きな声を上げた。

 俺は慌てて手を離す。


「え、ああ、ごめん。いきなり掴んでびっくりしたよな」


 アリスの時に手を繋いでたせいで感覚が麻痺していた。

 愛好はあまり男性が得意じゃないんだった。


「べっ、別に……いいけど」


 だが、返ってきたのは意外な答えだった。


「え、いいのか?」

「い、いいわよ。何度も言わせないで……!」

「じゃあ姉貴に一緒のとこに行って説明を……」


 俺が愛好の手を掴もうとしたところで。


「その必要はないわよ」


 いつの間にか姉貴が俺の背後に立っていた。


「り、理奈……!?」

「おはよう、愛好」

「お、おはよう理奈……」


 愛好と姉貴がぎこちなく挨拶を交わす。


「姉貴が来てたなら丁度良かった。ほら、愛好からも言ってやってくれ。愛好が好きなのは萌園アリスだけで、俺は別に好きじゃないんだって」

「そっ、それは……」


 愛好が目を泳がせた。

 なんでだ。断言してくれないと困るんだけど。


「俺のことは嫌いなんだよな? 前はたくさん言ってたじゃん。姉貴にも改めてそうだって教えてやってくれ」

「う、ぐ……」


 愛好はなぜか涙目で唇を噛み締めている。


「どうしたんだよ。俺のこと嫌いじゃないのか?」

「ば、ばかぁっ!!」

「へぶっ!?」


 べちんっ!

 愛好は俺の頬をまたビンタすると、走って去ってしまった。


「いてて……なんでビンタされたんだ? まぁいいや。でもこれで姉貴も分かったでしょ? こうやってビンタされるくらい愛好は俺のことが嫌い……あだぁっ!?」

「また嘘をついたわね、あんた」


 いきなり飛んでくるアイアンクロー。

 姉貴が俺の顔面を手で掴んだ。


「な、なんでアイアンクローするの姉貴!? どう見ても愛好に嫌われてたじゃん!」

「今のをどこをどう見たらその結論になるのよ」


 更に強まる手の力。

 ちゃんと愛好に嫌われている証拠を見せたのに、なぜか姉貴は怒っているみたいだ。


「くそっ、姉貴の目は節穴なのか……!?」

「節穴はあんたよ」


 まずい、頭の骨がミシミシと言い始めてる……!


「とりあえず誤解だ! 誤解なんだ!」

「もうその手は通用しないわ。ついてきなさい。授業が始まるまでみっちりと絞ってあげる」


 姉貴は手の力を緩めると、今度は襟首を掴んで引きずっていく。


 その後、俺はなぜかみっちりと「女心が分かってない」と怒られたのだった。

これで一章終了となります。

もし少しでも「面白い!」と感じていただけたら、作者のモチベーションになりますので、評価、感想、 ブクマ、レビュー、作者のフォローなどをよろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ