表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/48

最推しとオフコラボしてしまった

 え、嘘、「放課後ライブ」最推しなんですけど……。

 俺は頭の中で頭を抱えていた。


「みんなー、今日は告知してた通り、オフコラボだよー? 実はもう私の隣に座ってます! どうだ、羨ましいかー!」


 愛好はニッコリと笑顔で視聴者に語りかけている。

 恋城らぶ。

 VTuberとして非常にプロ意識が高く、アイドルとして視聴者の理想であり続け、笑顔を届けてくれるその姿はまさにエンターテイナー。

 言葉の端々から愛好がプロ意識が高いことは分かっていたが、まさか恋城らぶだったとは。


「というわけで、今日はなんと! 特別ゲスト! 萌園アリスちゃんをお呼びしてまーす!! ……アリスちゃん」


 俺の思考とはよそに、愛好から振りがやってきた。

 隣の愛好が思考が飛んでいた俺を肘で小突き、小さく囁いてくる。


「えっ、あっ……萌園アリスです。よろしくお願いします!!」


 俺は慌てて視聴者に向かって挨拶をする。


 :うおおおおおお!!!

 :オフコラボだー!!

 :いいなぁ

 :絶対いい匂いするクンカクンカ

 :アリスちゃーん!!


 俺は深呼吸をして気持ちを切り替える。

 今は配信に集中だ。

 ……いや、ちょっと待て、絶対俺のチャンネルから来てる変態がいた今。

 まぁとにかく、コメント欄の雰囲気は上々だ。


「アリスちゃんは放課後ライブに所属して初めてのオフコラボなんだよね?」

「う、うん、というかコラボ自体あんまりかも……」


 愛好が話題を振ってくれているが、俺の返事はちょっとしどろもどろだ。


(……どうしよう、やっぱりめちゃくちゃ緊張する)


 スイッチを切り替えたのに、まだ緊張していた。

 だってしょうがなくないか。最推しだったんだぞ。

 まさか恋城らぶとオフコラボすることになるとは……。

 いや待て、てか……。

 頭の中で今までのことを思い出していた。

 ……俺、推しとあんなことやってたのか。自己嫌悪で死にそう。


 :確かにコラボはじめてか

 :初コラボでオフコラボwww

 :コラボ初めてまじか


 確かに、よくよく考えてみれば初コラボなのにオフコラボなのか。

 ……攻め過ぎでは?


「でね、アリスちゃんが事務所に来る時に初めて出会ったんだけど、もうすぐ仲良くなったんだよね! ね、アリスちゃん?」

「そうだね……」


 俺の正しい記憶では仲良くなったというか、とんでもない勢いで距離を詰められたというか……。

 でも取り敢えず肯定しておく。なんか愛好の「ね?」から圧を感じるから。


「今日も二人でオフコラボしようねって決めたんだよね、ね?」

「う、うん……」


 :草

 :なんか圧かけられてねw?

 :「ね?」の圧が強すぎるww

 :こんな圧かけてるらぶちゃん初めてみたぞ

 :なんだか百合の波動を感じますねぇ


「私達たち、好き同士だもんね? だって、最近渋谷でデートしたし。恋人繋ぎで回っわたもんね?」

「ぴゃっ!?」


 デートのことバラすの!?

 まずい、こんなの視聴者が聞いたら……。

 ただでさえ変なこと言ってる奴がいるのに。


 :デート!?

 :デート!?

 :えまって

 :デート!?

 :デート!?

 :デート!?

 :百合だああああああ!!

 :尊い……

 :なんだ今の声


 ああ……、案の定コメント欄が興奮してる。


「アリスちゃん、カッコ良かったよ。私達ナンパされたんだけど、アリスちゃんが守ってくれたんだよね……」


 愛好はあの時のことを思い出したようにうっとりとした表情になる。


「それに、私の荷物もさり気なく持ってくれて、なんかエスコートされてるみたいだった」


 :すご

 :俺ならベタぼれしてる

 :かっけぇ……

 :それは王子様じゃん


 愛好は視聴者の肯定に興奮して次々にまくし立てる。


「あの時のアリスちゃん、本当に王子様みたいで格好が良かったんだから! あんなのされたら好きになっちゃうよ……」

「あはは、恋城さん。恥ずかしいよ……」


 :あ

 :あ

 :あ……

 :あっ

 :あ

 :あっ

 :あ


 俺が愛好の名前を呼んだ途端、コメント欄がそれ一色で染まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ