プロローグ
これは、酒と紫煙と女をこよなく愛する
三十歳童貞の下位社員が
転生した異世界で己の欲望のままに
新機軸魔法革新を巻き起こす
予定の物語である。
あくまで予定である。
予定は未定である。
*
いきなりだがオレは今、異世界いる。
剣と魔法の世界だ。
ここでオレはこの世界の様々な凄まじい魔物達を、次々と切り伏せてきた。
怒涛の如く迫りくる大軍の魔物達は、強大な魔力で魔法を放ち敵を芥の塵に変えた。
そして諸悪の根源たる邪神を倒し、この世界に平穏を取り戻したのだ。
そして今、絶世の美女達を侍らし、最高の酒を煽りながら紫煙をくゆらせる。
我欲のすべてを心いくまで堪能する。
ここは夢にまでみた酒池肉林だ。オレの理想郷だ。
王座に座るオレに寄りかかり杯を口元に運ぶ魅惑の女神。
一気に飲み干した杯に新たな神酒を注ぐ愛らしい美姫。
膝にもたれ掛かりながら煙管を差し伸べる妖艶な淑女。
そんな彼女たちを両腕で抱え込み、背もたれに体を預けようと仰け反ると、そのままひっくり返った。
ひっくり返ったその先には、床がなくどこまでも堕ちていく。
まるで奈落の底を目指すかのように転落する。
と、体がビクッと反応して目が覚める。
ベットではなく椅子に腰かけたまま。
どうやら居眠りをしていたようだ。
夢オチかよ。
いや最後は堕ちていたから『夢堕ち』というべきか。
しかし目覚めた場所は、知らない天井、などではない。
そこは、
ーーあなたの知らない世界、だった。