a fighter 02
人生とは戦いだなんて よく言ったもんだね
勝負どころ 気を抜けば
簡単に足をすくわれ リングに沈む
勝ちより負けに意味があるなんて
勝ったことのある奴のセリフ
負けばかりじゃ クサって堕ちて行くだけ
地下の空間にバンドの歌が響く。
カウンターでは綺麗な顔のバーテンダーが客に酒を出し、客は歌を聞きながら酒を飲み、小さくリズムに乗っている。
フロアーでは曲に合わせて多くの人が踊っている。皆楽しそうに、まるで狂ったみたいだ。
二人の店員が踊り狂う人々の間をトレー片手に歩き回っている。背の小さい方は器用に人の間をすり抜け、背の高い方は、歩けば自然と人がよける。
まるで、その存在感に圧倒されるみたいに。
…ああいう人間は、他人と競う必要などないのだろう。誰とも競わなくても、その存在だけで価値があるから。
競う相手が居なくても価値のある人間はいい。でも、誰かと競って、勝つことで初めて自分に価値を見出す人間もいる。俺は、そういう人間だ。
競う相手が居なければ、倒す相手が居なければ、頑張る意味がない。
I'm a fighter
Chicken Heart fighter
I wanna be the Number ONE
You're a fighter
Lion Heart fighter
You gonna be the Only ONE
“ナンバーワンよりオンリーワン”と国民的アイドルグループが歌っていた。
「でもあれは人生の勝ち組が言うからカッコイイのよ。負け組みが言ったら、ただの負け犬の遠吠えよ」と誰かがテレビで言っていた。まったくその通りだ。
ナンバーワンよりオンリーワン。そんなの、人生の成功者の言うセリフだ。ナンバーワンになったことのある奴が、その先を言っただけのことだ。
一番になりたいのは、人間の性だろう?
誰だって本当は、何かの、誰かの一番になりたいと思っているんじゃないのか? それとも、「この世に唯一の自分」に自信のある奴は、人と競って一番になる必要なんてないのか?
I'm a desperate fighter
「カザキ!」
客の誰かが呼んだ。あの背の高い店員が振り向く。店員を呼んだ客とその連れらしき数人は店員を囲んで談笑を始めた。
周囲の人間の視線がカザキに向けられる。
容姿とか身長とか要素は色々あるだろうけど、人目は自然とカザキへ吸い寄せられる。
不意に、カザキと目が合った。
他の人間同様、俺の目もカザキに向いていたのだから、こちらを向いたカザキと目が合うのは当然といえば当然だろう。
ニヤリ、と、一瞬笑った気がした。
視線を外せずにいると、カザキは話していた客達から離れて俺の方へやってきた。
「どうなさいました、お客様?」
俺の前で止まってカザキは問いかけた。突然声を掛けられてテンパッたのと、俺を見下ろすカザキの自信に満ち溢れた(ように見える)顔に何となくムッとしたのとで、俺は怒ったように答えた。
「別に、どうもしない」
「そうですか?」
俺の態度を気にした様子もなく、カザキはその場を離れようとしない。
「別に用なんかないから早くあっち行けよ」
俺はカザキを追い払おうとした。嫌なら自分が店を出て行けばいいんだろうけど、まだビールは半分以上残っていて、これを飲んだら帰ろうと思っていたから、貧乏性の俺としては飲み干さずに帰ることが出来なかった。
俺はカザキを無視してビールを飲んだ。
俺がまだ帰らないことが判っているのか、カザキは俺を見下ろしたまま立っている。
「…アンタさぁ、何をそんなにイライラしてんの?」
さっきまでと随分と口調を変えてカザキが訊いてきた。
「何か気に食わないことでもあったわけ?」
「うるさい!」
俺はビールのグラスをテーブルに音を立てて置いた。
「お前なんかに、何が解るんだよ!?」
思わず声を荒げた。完全な八つ当たりを思わずカザキにぶつけた。
「お前みたいな奴には、解んねーよ!」
I'm a fighter
Maybe a loser
But I'll be a winner
You're a fighter
Indeed a winner
But I'll knock you down
I'm an indomitable fighter




