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マイルドヤンデレだと思った弟が鬼畜系ヤンデレだった件

作者: 長谷ひよこ

理由など覚えてないが、どうやら前世での私は若くして死んだらしい。そして転生した先は、前世の私がハマりにハマっていた恋愛シミュレーションゲームの世界。しかも絶世の美女でぼん・きゅっ・ぼんなセクシー担当の意地悪お姫様。




前世の記憶を思い出したのは、ついさっき。




「このサラダ、セロリが入っているじゃない?わたくし言ったわよね、セロリなんてこの世から抹殺したいくらいに嫌いだって!」




皿ごとセロリ入りサラダを給仕した女官に投げつけようとしたら、なにがどうして私の頭に皿が命中して気を失った。我ながら情けない。




そしてベッドで目覚めたときに思い出したのだ!私、前世で普通の大学生だった。そしてこの世界は、前世で一部のマニアに熱烈なファンを大量発生させた恋愛シミュレーションゲームの中の世界だ!と言うことを。




何てこと?私の名前、フローレンスって、恋愛シミュレーションで悪女役だったよね。意地悪なお姫様で、モテモテなヒロインに嫉妬して嫌がらせして攻略対象のイケメンたちとの恋を妨害する。あのフローレンスよね。




あ、ゲームの内容を思い出せば思い出すほど頭痛がするわ。ふらふらとベッドから降りる。あれ?ベッドってこんなに大きかったっけ?そんなことを思いながらとことこと姿鏡の前に立って、本日2度目の衝撃を受けた。金髪碧眼、天使みたいに可愛い女の子が、私と同じビックリ顔でこちらを見てた。どうやら私、5才児のようです。








とにかく頭の中を整理しよう。フローレンス10才。2才年下の弟ができる。フローレンスが弟をいじめまくる。フローレンス14才。隣のブルガリ大帝国の王子と婚約。その年に弟と一緒にブルガリ大帝国の帝国学園に入学する。そこでヒロインに出会う。ゲームは帝都学園内で起こる出来事が描かれている。




攻略対象は、


最初は優しいけど、好感度がマックスまで上昇するとヤンデレ化する王子さま。


最初は無表情で冷たいけど、好感度度がマックスまで上昇するとヤンデレ化する宰相の息子。


最初はフレンドリーで明るい性格、好感度が上がるとヤンデレ化する帝国騎士団長。


等々、計8名。




ご報告しましょう。私が前世で熱中していたのは、究極のヤンデレゲーム。『病んで、デレて、私を縛って~帝都学園物語~』なのである!ヤンデレ最高。拘束、監禁、嫉妬の嵐大好物!!




前世の私は病んでいました、はい、どうもスミマセン。




そんなヤンデレ化しちゃうような危険人物達に愛されるヒロインの、恋の邪魔をする悪役姫も命がけ。ヒロインが恋を成就しても、しなくても、フローレンスの不幸な結末は決定事項。




ヒロインが王子様を攻略失敗。フローレンス、魔女と罵られて火炙りの刑。ヒロインが王子様を攻略成功。不敬罪で斬首。


ヒロインが宰相の息子を攻略失敗。フローレンス、奴隷商に売られて性奴隷となり腹ぼてエンド。ヒロインが宰相の息子を攻略成功。生涯投獄され看守達に犯されまくりの腹ぼてエンド。


ヒロインが帝国騎士団長を攻略失敗。国外追放の後、娼婦に降格。騎士団長を攻略成功。島流しの計の後、盗賊たちの慰み物。




等々、死ぬか、死ぬまで犯され続けるかの二択。いや、マジ、勘弁してください。




そんな身の毛もよだつ恐ろしい未来を変えるべく、5才のフローレンスちゃんは頑張りました。我儘言わない。勉強頑張る。人には優しく。『頑張れフローレンスちゃん。やればできる。脱悪女!!』をスローガンに努力しました。






ある日、お父様である国王陛下に呼ばれた。




「今日からお前の弟になるレオンハルトだ」




お母様は私が産まれてすぐに亡くなった。正妻であるお母様を一途に愛するお父様は側室も愛妾もいない。後妻を迎えるつもりもないらしい。国王陛下に子供は一人だけ。そう娘である私、フローレンスのみ。この国の王位継承権は男性にのみ受け継がれるため、お父様は王位を継承する男の子を養子として迎え入れた。それがレオンハルトだ。




お父様の従兄弟の子。母親は平民で正妻ではなく愛妾だと言う。そんな辛うじて王家の血が入ってるかナー?入ってないかナー?って子を王子として迎えるに至ったのは、この子が先祖がえりした王族特化の外見と力を持っていたから。




お父様も私も金髪碧眼。お父様の従妹だったお母様もキレイな金髪だったそうだ。そして弟が持つ4属魔法。元々、王族貴族しか持たないと言われる魔力。普通は火、水、風、土の4属性の内の一属性しか持たない。多くて2属性。それが彼は4属性全ての魔法を操れると言うのだ。それはこの国の創始者である初代国王陛下と同じ力で。そんな稀有な存在だからこそ、次期国王になるべくお父様はレオンハルトを養子に迎えたのだ。




このレオンハルト、攻略対象である。そして唯一のマイルドヤンデレ。ヒロインがレオンハルトを攻略失敗。フローレンス、庶民に降格。一般人として生きる。ヒロインがレオンハルト攻略成功。フローレンス、国外追放。平民として生きる。




レオンハルトを見て「これしかない!」と閃いた。ヒロインが他の攻略対象を攻略すると、失敗しようが成功しようがフローレンスのバッドエンドは確定だけど、ヒロインがレオンハルトルートに入れば失敗しようが、成功?しようがフローレンスは普通の人生を送れる。それに今の私、自分で言うのもどうかと思うけど、とっても良い子。ヒロインに意地悪なんてしませんよ!




良い子の私。レオンハルトルートのダブル効果でフローレンスのバッドエンドを回避すべく、私は突き進んだ。








「よろしくお願いします。フローレンス様」




おどおどと私に向かって挨拶するレオンハルト、8才。フローレンス10才。私の少しくすんだ金髪とは違って、レオンハルトの髪は純度100パーセントのきらきら輝く金髪だった。色白の肌。緊張してるのかうっすらピンク色の頬と潤んだ瞳。半ズボンから覗く膝小僧がお行儀よく揃えられている。それだけで悶絶するほどに愛くるしい。




ヤバイ!可愛すぎる!今すぐこの子を保護しなくては!!




心の中で吹き荒れる歓喜の嵐を微塵も外に出すことなく、私はゆうが~で、かれん~、な淑女の笑みを浮かべた。




「今日からあなたはわたくしの弟なのです。お姉さまとお呼びなさい」








その日から、ヒロインが他の攻略対象に目移りすることなくレオンハルトルートに突入すべく、可愛い弟に帝王学を学ばせ、女性心を掴む所作を叩き込み、美しさに磨きをかけるべくビューティープロデュースに力を注いだ。スパルタなお姉ちゃんでごめんね。お姉ちゃん、レオンハルトにはヒロインと幸せな家庭を築いて欲しいの。そしてお姉ちゃんに平凡で普通の幸せを与えてね。




そんなことを考えつつ、レオンハルトを最上級のイケメンに育て上げた。頑張ったね、レオンハルト。まだ16才なのに、神がかる程に神々しい美しさ。優雅な所作。他の対象者なんて足元にも及ばないほどきらきらしてるよ、レオンハルト!




レオンハルトは最上級のイケメンに成長したにも関わらず、ヒロインは何故か優しく、(レオンハルトには劣るけど)美しいブルガリ大帝国の王子さまと結ばれた。




ヤバイ!死ぬの?私!?




焦りに焦りまくったけれど、ヒロインに意地悪どころか、一言も話すことなく赤の他人を貫いた結果、断罪イベントは発動しなかった。




断罪イベントもなければ、ブルガリ大帝国の王子さまはヤンデレ化もしなかった。そして誰がヤンデレ化したかと言うと……










「ねぇ、お姉さま?またよそ見をしましたね?」




凍えそうなほどの冷気を纏ってうっすらと微笑むレオンハルト。レオンハルトが私の顎を掴んで彼の方に向けられる。笑っているはずなのに、目が怖い。恐怖でお姉ちゃん泣いちゃうよ?




「震えているのですか?お姉さま。怯えた表情のお姉さまも可愛いけど、まだ答えを聞いてませんよ?誰を見ていたのですか?」




現在、帝都学園の卒業式が終わったばかり。私はヒロインに優しく微笑むブルガリ大帝国の王子さまを見つめていた。




(断罪イベント回避したわ!よくやった、私。これで自由よ!)




幸せを噛み締めながら。そんな私の熱い思いを勘違いしたのが、何故かヤンデレ街道を突き進み、シスコン化してしまった可愛い弟レオンハルト。




「マリナさんを見ていたの」




マリナとはヒロインの名前。半分は事実ですもの、嘘はつおておませんわよ、私。びくびくと怯えながら答えると、いつの間にやらわたくしよりずっと背が高くなった弟が、少し屈んで私の耳元で囁いた。




「嘘つきなお姉さまには、罰が必要ですね」




悪魔の囁きに、くらりと目眩がした。バランスを崩した私の体を抱き止めたレオンハルトが、周囲に聞こえるような大袈裟に芝居がかった声を出した。




「お姉さま、大丈夫ですか?だから言ったじゃないですか、卒業式なんて出なくて良いと。体の弱いお姉さまには負担でしたよね。申し訳ありませんが、お姉さまはこの後の卒業パーティーは欠席します」




弟に横抱きに抱き上げられたまま馬車に乗り、そのまま自国であるトゥルーロード王国へと強制的に連れ戻された。可愛い天使……と信じていた弟の手によって。




ちなみに弟はまだ16才。本来ならば後2年はブルガリ帝都学園に在籍するはずなのだけど、既に卒業に必要な単位はすべて修得してるらしく、




「後は2年後の卒業式まで学園に通う必要ないんだ」




そう言って、にっこりと笑いながら私の頬を優しく撫でた。




だから目が怖いんです、レオンハルト君!!








学園を卒業して2年過ぎた。20才の私は、本来ならば結婚していてもおかしくない年なのに、結婚どころか婚約者すらいない。それは私に入ってくる婚姻話をことごとく握りつぶしている人物がいるからだ。




優しい笑みとは裏腹に、弟の手には何故か鎖が握られていて。じゃらりと耳障りな音がした。帝都学園に通っているときも、私は『病弱』だと言う理由で、学園内のイベントにはほぼ出席しなかった。理由は、このヤンデレ弟が私を監禁して部屋から出られなくした上で、「お姉さまは体調不良のため欠席します」と天使の笑みで皆に告げていたためだ。




今の私、悪役姫ならぬ、朧姫と呼ばれている。美しく、儚く、滅多に人前に現れぬ幻の姫。




実際はいたって健康。人が集まる楽しいパーティー大好き。なんだけどな……。




「今、私以外のことを考えていましたね?お姉さま?ずいぶんと余裕ですね」




頬を撫でられ、髪に口付けするレオンハルト。そして鎖の先についている首輪を私の首に着けると、外れないように鍵をかけ、鎖の先をベッドの端に括り付けて南京錠で鍵をかけた。




「パーティーへの出席を許可したのは間違いでしたね。何故、他の男の手を取り、ダンスを踊ったのです?」




今日は国賓を招いてのパーティーだった。賓客のご子息もパーティーに来ていて、ダンスに誘われた。国王の娘として、そのダンスを受けたのだが、どうやらそれが弟の逆鱗に触れたらしい。




「大切な国賓のお誘いをむげに断ることはできないわ」




これから、どんな仕打ちを受けるのだろう?恐怖に震えながらも勇気を振り絞って言い返すと、




「国賓ならば、御身を差し出すのも当然。そうおっしゃるのですか?」




レオンハルトは私の体をベッドに押し倒す。彼の手が、私のドレスの胸元に伸びる。




「この豊満な乳房も、男を誘うまろやかな腰も、国賓ならば誰にでも触らせるのですか?」




「ま…、やめ、て!レオンハルト!」




両手で彼の体を押し退けるけど、力の差は歴然で、剣術で鍛えた弟の体はピクリとも動かない。




「可愛い抵抗ですね、お姉さま。そんな貴女の反骨心が、私の支配欲をくすぐるのです。いいですよ?もっと抵抗して見せてください。苦痛に歪む貴女の顔は大好物です。あぁ、安心してください。痛い思いはさせません。抵抗する貴女を快楽だけで堕落させて、私がいなければ生きていけないように調教するのが目的ですから。溺れてください、私の手で、甘美な、私とお姉さまだけの、2人だけ世界に」




うっとりと笑むレオンハルト。




3日3晩、愛され続けた私は、レオンハルトに完全攻略されていた。




国法的には姉弟でありながら、血縁的には遠い親戚である私とレオンハルトの婚姻は、あっさりと認められた。




姉には狂気的なヤンデレであるレオンハルトは、時期国王としての器は完璧で、そんな彼が正当な王家の血を引く私を妻に迎えることは、国としても大歓迎だったらしい。








「お姉さま、さっきブルガリ大帝国の皇太子のこと見てたでしょ?」




氷のように冷たい目で、不機嫌オーラ全開で見下ろすレオンハルト。相変わらずのヤンデレっぷりである。今、私たちは婚礼の義を終えて私室に戻ったばかりだ。




「……皇太子妃のマリナ様を見ていただけよ」




本当は、幸せそうなブルガリ大帝国の王子さまを見て、私のバッドエンドは回避された喜びに浸っていたのだけどね。




「嘘つきは、お仕置きですよ」




今日もレオンハルトはヤンデレである。氷のように冷たい視線を浴びながら、ベッドに押し倒される。その先にあるのは終わらぬ快楽。今回は何日監禁されるのか?ぶるりと怯えながらも、喜んでいるわたくしは、もうレオンハルトに囚われているのね。














~end~


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[気になる点] 「反骨新」は「反骨心」ですかね。
[気になる点] シュミレーションじゃなくて、シミュレーションですよ。
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