孤独
ムラサキの強さ…
「くっ!?」
目の前にいるのに攻撃が当たらない。
既に『看破』初め、コピーセットを使っているのに…。
眼で未来を追う。
けれど、何重にもブレるムラサキさんを捕らえる事ができない。
フュン!
辛うじて目の端に捉えた脚に反応して左腕が動く。
ズン。
重い。1メートル程横にスライドした。
ザザザッ
「へぇ…よく『見えてる』。流石ね」
「ハァッハァ、ハァッハァ…どうしてこんなに…」
わからない事への焦りと緊張が呼吸を乱す。
余計に体力を消耗すればどんどん深みに嵌る。
「フゥフー」
強引に戻した呼吸で迎え打つ。
「流石に運だけでは悪魔は倒せないか…でも、まだまだね!」
「またっ!?」
確かに目で追えてる。なのに『急に未来が飛んで見える』。
それは実態からコマ落ちして遠い場所に残像が現れる。
普通ならコマ落ちなんかせず、全て滑らかに見えるのに…。
「ン…グゥフッ…」
ズゥゥゥゥン
肝臓に掌底が置かれている。
そこから円状に体の中を波が伝わっていく。
初めて響く身体の中の音に耐えきれず、焦点が真っ暗になった。
◆◇◆ ◇◆ ◇
「しかし…コイツは鍛えれば鍛えるほど伸びるな」
「そうですねぇ。こっちももっと真剣にやってくれればいいのに」
「フフフッ、ダーレン。そんなにボヤくな。この子は面白い。
何だかんだと14の坊やが私の動きについて来るとは思わなかったよ」
3人は気絶したマオを前に所感を述べている。
3人ともマオの才能を認めている。
決して天才では無い。いや、先天性のスキルがあるので天才ともいえる。
けれど、このスキルは努力を必要とする点でそこいらのスキルとは違う。
「ガイ、マオが起きたらまた明日も朝から来いと伝えて」
「分かりました。アネさん」
「ん。それじゃぁ」
ムラサキは手を振った。
◆◇◆ ◇◆ ◇
「い、いてて…」
「あ、起きましたか」
読んでいた本にしおりを挟みパンと閉じる。
「あれ?ダーレンさん?ムラサキさんは?」
「『明日も朝から待っている』と仰られていましたよ」
「ふぇ〜怖いな〜」
「貴方はどうやらムラサキさんに気に入られたみたいですね」
「そう…ですかね?」
「そうですよ。ふふ、君はわかってないなぁ」
「えっ」
「まぁ、そんな所が彼女の琴線に触れたのかもしれませんね?」
「どう言う事ですか?」
「君の所持スキルに『模倣』と言うスキルがあるようですね」
「あ、はい」
「それと『鑑定』。この二つを持っていればラーニングが相当有利になると言われています」
「……(やっぱりか…)」
「どうやら心当たりがある様ですね」
「はい」
「そもそも『魔法』は一朝一夕では会得出来ません」
「………」
「しかもレベル0とは言え4属性全て」
「………」
「君が『鑑定』を持っていることは有名でしたが、『模倣』まで持っているとなると話は変わってきます」
「………」
「吸収すればするほど、君はジョーカーになる」
「えっ…」
「頭の柔らかい人間なら良いけれど、ハンターを生業としているとそれがどんなに怖いことか…」
「そんな…」
「自分の居場所を喰われるんです。例えばこの先、君が回復魔法を会得したら君一人で何もかもができてしまう事になる」
「それは…!」
「しかし、体は一つ。戦闘は継続して行われるし、精神は擦り減る。だからギルドは最低3人以上のパーティーを推奨する…負担の分配です。けれど、なんでも出来る人間がいれば、メンバーは頼るのと同時に押し付ける。けれど、完璧に出来ると、部分的に同質の力を持つメンバーは畏怖を覚える」
「勝手ですね…」
「そう、勝手だね」
「けれど、十分に考えられる事だ」
「多様なスキルは自分を追い詰めるって事ですか?」
「まぁそういう事です。そして恐らくムラサキさんはそれを心配している」
「そうか…」
「君の境遇と、真っ直ぐさ故です」
「………」
「真っ直ぐさは美徳ですが、今後、周りへの配慮も覚えるべきです」
「パーティーを組めって事ですか?」
「信頼出来る仲間を作れという事です。パーティーじゃなくても良いですよ」
「…分かりました」
現在ゆっくり投稿中(本編更新は朝6時)ですのでどうぞ宜しく。
3章からは2日に1回程度の更新になります。
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