クビ
パッとしない…そんな理由で宣戦同盟をクビになった少年の成り上がり。
6/30と7/1は6時、12時、18時の更新です。
『鑑定』それが俺の先天性スキルだ。
先天性スキルは後天性スキルより貴重なスキルが多く、国によっては保護対象と認定される場合が多い。
ただ『鑑定』スキルは先天性スキルの中でも発現するものが割と多く、スキルランクの割にはパッとしない地味なスキルだ。
けれどオレはハンターとして、器用さと素早さビルドで様々な任務をこなしていた。
ハズだった。
「お前はもう要らねーよっ!」
ドンッ!
オレは数メートル飛んで転がり、壁板に辿り着く。
「先天性スキル持ちだってんでウチで育ててみたが全然パッとしねぇ」
系列パーティ込みで50人を超える戦闘ギルド『宣戦同盟』のリーダー・ガランさんが、その力と耐久ビルドで鍛えた膂力でオレを突き飛ばしたのだ。
「ちょっとガランやめて、他のギルドもいるんだから…」
サブリーダーで耐久、信仰ビルドのノートンさんがイラつきながらガランを嗜める。
「けどよぉ…」
「ガランの言うこと分かる。今この子のやってる事普通にレンジャーだし、それならうちのメンバーにもっと優秀なのいる」
魔導書を読みながら的確な指摘を繰り出すソフィさん。
「だろう?、今日から別のやつがウチに入団する事になってるからよ、マオお前はもうクビだ」
「えっ…う、嘘でしょ!ガランさん!!」
オレはガランさんに縋り付く。
「うっせー!ウチに入りたきゃもうちっとマシになってから来いや!」
「ゴフッ」
ガランさんの軽ーいトゥーキックが鳩尾に入った。
「ちょ…ちょっと!ガランさん!!何やってるんですか………
オレはギルドの受付嬢、アメリアさんの声を最後に意識が飛んだ。
◆◇◆◇◆
「うっ…ここは…」
戦闘で怪我をした時、何度かお世話になったギルド地下訓練場の救護室だ。
誰も側にはいない。
昨日迄なら『宣戦同盟』の誰かがいたかもしれないけど、
今は誰もいない。
「ぅぐっ」
身体を起こすとあちこちが…特に鳩尾が痛い。
(あー…
涙が溢れてくる。
一頻り泣いた後、アメリアさんが入って来てホットミルクを置いていってくれた。
砂糖が入ってるんだな。甘い。
今日は泊まって行ってもいいと言う事で、甘えさせてもらうことにした。
天井から横へ身体ごと視点を移し、徐にステータスボード、スキルツリーを開く。
この1年、この街では1、2を争うギルドで戦闘経験を積ませてもらった。
スキルポイントはかなり溜まっている。
そして…『鑑定』もこれでスキルマックスのレベル9だ。
何とも言えない気持ちの中、操作をしていく。
「あ、れ…?」
普通、スキルマックスになると王冠マークがスキル名の前に付く。
この世界の通例だ。
けどそれが付かない。
もう一度操作をすると、レベル10が表示された。
別に失うものは無い。ギルドで鑑定業務を営んでもいい。
ピッ
確定のボタンを押した。
直ぐに…
『レベルマックスにより、限界突破します。
これより、『鑑定』は『看破』に昇格します』
「えっと…」
すると、スキルツリーの画面が3度明滅した。
「ぅわっ!?」
初めての現象だ。
反射的に瞑っていた目を開けると、確かに『鑑定』は『看破』に変更されている。
ズキッ
「んん!?」
目の奥が痛い。
咄嗟に両眼を覆う様に顔に手を当てる。
ズキッ!
なんか、さっきより痛みが増している様な…。
ズキッ!!
「ん゛っ!」
間違いない。痛みがどんどん増している…。
どう考えてもこの痛みの原因は『看破』のスキルによるものだろう。
それ以外にこの痛みを説明できない。
ズキッ!!
ズキッ!!!
痛みはどんどんエスカレートしていき、10分程で痛みは頂点に達してオレは気を失った。
2章まで一気に投稿します。
後はゆっくり投稿で行きますのでどうぞ宜しく。
あっ、宜しければ★を押していただくと今後の励みになります。