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現代文明崩壊世界のチート活用方法について  作者: 文部一升
一章 夏と死神の戦争ごっこ
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一章3 一ヶ月はやべえよ

 


  戦争孤児っつー奴らがいる。


  レギオンの発生によるなんらかの要因で親を亡くしたか、捨てられた子供たちのことだ。


  僕はそれだ。六か七歳くらいの時に両親が死んで、それ以来天涯孤独ってヤツ。


  まあ大体ロクな目に合わない。平和な世界でも親がいないと苦労するってのに、戦争で食料ない金ない安全ないの三重苦、大の大人でさえも生き延びるのに必死だってのにチビガキだって? 冗談じゃない。


  大抵は死んだ。運が良ければまあ、施設とか保護してくれる大人とかに出会えて生き延びることが出来た。


  僕はと言えば────。






  ずっと長い夢を見ている気分がしている。


  覚めない。


  彼女、古布里は多勢の人間を率いてレギオンと戦う。僕もそこに混ざって戦うんだが──いつも大体すぐ死ぬ。それで仲間たちに責められたりするんだよな。なんで毎回死ぬんだ? って。


  そりゃ──そうだろ。僕弱えし、戦えないし。


  つか戦えないならなんで戦ってるんだ? と仲間は聞く。


  僕は──。


  ──────────。






  真っ白な天井を見上げて、僕は両眼を開いた。


  …………。


  ここは……?


  漂白されたような白さのカーテンが風に揺れて、細かい音を立ててまた静かになった。


  白い、白い場所に僕は寝ていた。


  全て真っ白な、一切の汚れを許さないベッド。僕は薄い水色の病院服を着用していた。


  半覚醒の脳みそで、上体を起こした。まだ全身がギシギシ音を立てている気がする。


  病院だ。全開になった窓には日射しが差し込んで、結構あったかい通り越して暑い。ベッドの横に置いてある花瓶と、備えられた花。


  僕はしばらく呆気に取られて、ひたすらに静かな部屋で黙っていた。


  現状を認識するのにしばらくかかった。


  ふと右手を見た。


  ──僕の腕じゃなかった。これは、あの人の腕だ。


「調子はどうだ?」


  いきなり声がかかって、僕は反射的にそちらに顔を向けた。


  スーツを着た女性がいつの間にかそこに立っていた。どうやら最初から居たが、僕が気付かなかっただけみたいだ。すっげー驚いた。


  女性はキリッとした雰囲気を纏った、結構美人系の人で、失礼な感想としては、キツそう。


「……お前、誰?」

「誰、誰と来たか。人に名前を尋ねる時は、自分がまず名乗るべきだろう?」

「そんな法律はないね」

「お、確かにな。私は入江四季だ。傭兵団パンドラ、第一部隊隊長をしている。お前は?」

「……浦凪玲花だ。で、誰?」


  入江四季は苦笑いして首を振った。


「あたしが誰か──。その説明の前に、まずお前自身のことをお前自身が知らないといけないだろう。説明が必要か?」

「はあ? え──っと。どういう──」


  何か言い返そうと思考を巡らせた瞬間、僕は過去の記憶を思い出した。


  ──流れる血と、レギオンと、逆白古布里という女性が、僕を助けてくれたこと。


  思い出してまた思考が一瞬止まった。


「思い出したようだな。最悪記憶がなくなっている可能性も考えてたが──無事に目が覚めてくれてよかった。何が起きたか覚えているか」

「……正直、何がなんだかさっぱりだ。痛かったことだけは覚えている」

「そうか。じゃああたしが知っていることを教えるが──お前はレギオンに襲われ、右手と心臓をやられた。そこにあいつが現れてレギオンを討伐し、貫かれたお前の心臓と、自分の心臓を入れ替えて命を繋いだ後、自分の右手を器用に切り落としてお前に移植した……。よく生きてんな、お前」


  入江四季は呆れた。


  僕だって同じことを思った。めちゃくちゃだ。


  ……だが、実際に僕が生きているのだから仕方ないだろう。これは現実だ。


「お前を助けたのは、第三都市の傭兵団第一部隊の隊員、名前は逆白古布里。ウチのエースだった人間だ」

「……覚えてる。確か、左手のない女の人だった」

「そう。……先日、強え個体との戦闘があってな。そん時に左手を失ってその上内蔵系に強いダメージが入って日常生活にも影響が出始めていた。二度と戦えないと言われていたが──」


  入江四季の話が本当だとすると──そんな状態で僕を助けたということになる。マジかよ。


  自分の胸──心臓の辺りを見下ろす。傷は残っていないものの、ひどい傷痕があった。


「それと、お前には質問がある。バーストコアについて、なぜお前があんなものを持っていた?」

「……? いやごめん、用語説明から頼む」

「やっぱり知らないか……。水晶玉のことだ。知らないのならばいい」


  もやっとする。水晶玉……。


  ああ、あれか? 思い出した。正直痛みで朦朧としてたから記憶が曖昧なんだよね。


  あれは確か……。


  ──食えって、誰かに言われて……。僕はあれを噛み砕いて飲み込んだんだ。


  なぜ。なんでだろう?


  頭を抑える。なんでだ? なんで……。


「そのことは一旦置いておく。次の話だ。浦凪玲花、お前には傭兵団へ加入してもらう」

「──? なんで? 僕が?」

「これを見ろ」


  渡されたのは一枚の紙。


  一度見たことがある様式だ。


  兵装適正検査結果。


  浦凪玲花──第三種兵装適正有り。


  そう書いてあった。その後には長々とこの結果を保証する研究機関の名前が書いてあった。


  言葉を失う。


「お前、もともと適正はなかったらしいな」

「──なんで、僕に?」

「……まあ、無理もない話か。前代未聞だからな。原因ははっきりしている。お前に移植された逆白古布里の心臓と、お前がボリボリ食べてくれたバーストコアが原因であることは間違いない。これが意味するのは──傭兵団への加入資格を得たということ。分かるか?」

「あ、ああ。うん、まあ……」


  ──レギオンとの戦いを終わらせてくれとあの人は言い残した。


  こういうことか。


  僕に戦えというんだな。


「──拒否権は?」

「ない。お前の身柄はすでに学園機関から買い取ってある。高値でな」

「ふぅん、周到だな。てかもうとっくに僕は傭兵団の仲間入りか」

「ああ。こいつにサインしろ。そうすれば正式だ。悪くないぞ、傭兵ってのも。もっとも重要な仕事とも呼べるから給与は悪くない、それに人々からの尊敬を集めている。望んでも、傭兵になれないやつは決してなれない」

「……分かったよ。ほら、これでいいか」


  サインした。右手は驚くほど馴染んでいて、よく動く。


「ああ、これでいい。ようこそ我が傭兵団”パンドラ”へ。今日と明日一日は様子見のためにまだ入院していろ。何が起きるか分からんからな。明後日の朝迎えにくる、それまでに心の準備を済ませておけ」


  そういって入江四季は席を立った。


  そしてドアを開け、退出していった。チラリと僕を見ていく視線は──とても複雑なものだった。


  ドアがピシャリと閉まった。


  何気なくデジタル式の時計を見ると、今は朝の八時。


  そして──僕の記憶にある最後の日から、一ヶ月が経っていた。


  どうやら一ヶ月丸ごとおねんねしていたってことらしい。


  そのことに気付いて呆然として固まる。


  ──えぇぇぇぇ……。


  マジかよ……。マジか……。マジかぁ──。





  *





  都市の外周から外には、すでに誰も住むことの出来ない廃墟がどこまでも連なっている。レギオンがいるから、生活圏を簡単には広げられないんだ。


  安全に生活が出来るのは都市の中だけ。


  ──ここは日本の第三都市「千呉」。レギオン発生以前の呼び方だと、名古屋と言ったか。今では当時の面影なんてまるで残っちゃいない。土地の少なさから建物は縦に伸びていくばかりで、どんどんと高密度化が進んでいく。そのリスクも知らないままに。


  レギオンが発生して、人口の九割くらいは死んだ。


  それは主にレギオンに殺されたから──ではなかった。原因の多くはレギオンに直接殺されるんじゃなく、レギオンによるライフラインの切断が原因の食料難や、工場が壊れることによる副次的な文明生活の崩壊による部分が大多数を占める。もしくは人間同士の殺し合いとか。


  最初期にレギオンに対抗出来たのは、自衛隊や軍隊などの重火器を保有する者たち──でもなかった。


  あまりに数が多すぎて、重火器の数が足りなさすぎた。レギオンには拳銃程度では意味がない。だがロケットランチャーが当たればごく普通に死ぬし、ライフルなどの強力な銃器をきちんと脳や心臓に当てれば死ぬ。


  同時多発的に現れたレギオンに対応できた軍隊は、世界中のどこにだって居なかった。


  よしんば撃退出来たとしても、レギオンの数は、あまりにも多すぎた。


  ……。


  レギオンの黎明期と重なって現れたのは、オリジナルと呼ばれる最初期の兵装適正保有者。重機並の筋力や、時速最高百キロを越す脚力。フィクションから飛び出してきた彼らは素手やホームセンターにあった鉄棒などで容易にレギオンを殺し、英雄となった。


  ──が。


  オリジナルというのは、本当にただの一般人だった。


  本当にただの普通の人間、普通の学生や、普通のサラリーマン、どこにでもいる人々がそうなった。


  その人たち全員がレギオンとだけ戦い、人々を守ったかと言えば、そうではない。オリジナル同士で争ったり、火事場泥棒したり、凶悪犯罪に手を染めたり……それはオリジナルに限った話ではなかった。


  そのこともあって人類はさらに大きく数を減らし、残った人々はなんとか大きい都市に逃げ込み、外周に壁を築いて──今に至る。


  全国には何十かの都市が残っていて、第三都市というのは経済的に見て三番目に栄えている都市という意味だ。でっけえ。


  オリジナルはずいぶん減ったが、今では散発的に兵装適正保有者が現れ、彼らは基本的に都市を守る防衛隊──第三都市では傭兵という形で都市に雇われている──パンドラという組織に加入し、レギオンと戦っている。


「なあ、君。少しいいか?」


  傭兵団パンドラは、おそらくこの都市でもっとも力を持った組織だろう。武力を持っている。その上金もある。名声もある。


  人々は彼らを恐れ、妬み、尊敬する。


「なあ、聞こえていないのか? 君、君!」


  ──雲の上の存在だ。


  はっきり言って、百人いて一人入れればいい方。っていうか成りたいと思ってなれるものじゃない。


  僕が? 傭兵になるって?


「もしや聴覚に影響が出ているのか? なあ君!」


  肩を叩かれて僕は瞬間的にめちゃくちゃビビって叫んだ。


「うおおああああああ⁉︎」

「⁉︎ な、なんだ⁉︎」

 

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