変わった事
1話
いつも通りの日常―――
「竜!あんた、何この成績は!お兄ちゃんのようにもっと上を目指しなさい‼」
「・・・わかったよ、母さん」
僕は早海竜。そこらへんにいるような男子高校生だ。
ただ、周りのクラスメイトと違うのは何も変わらない日常に嫌気がさしていることだと自分では思う。
そんな僕は今日、定期テストの結果が兄より良くないと母さんに怒られた。
「母さん、そんなに竜を叱るなよ」
「あら、純」
「兄さん・・・」
この人は僕の三つ上の兄の早海純。
両親に期待されて育った、有名大学に通う現役大学生。
だが、僕はそんな兄が嫌いだ。何をするにも必ず兄と比べられるから・・・
「・・・じゃあ、僕は自分の部屋に戻るから。おやすみなさい」
イライラした僕は自分の部屋に入り、ベッドに座る。
「なにか面白いことないかな。こんな『普通』はいらないから何か刺激があるようなことがあればいいのに・・・」
ふと、そんな独り言をつぶやいたら、窓から魔女みたいな格好をした女の子が入ってきた。
「わぁぁぁぁ‼」
「‼」
「イテテ・・・失敗してしまったのですぅ」
「なんで、窓から?」
「ん?あ、あなた!さっき『普通』はいらないから刺激がほしいって言ってましたよね⁉」
「え・・・言った、けど・・・ていうか君は誰?なんで僕が言ってたって知ってんの?」
「あ、これは失礼。私は魔界から来た魔女の小恋です。このほうきで飛んでるときに聞こえてきたんです」
「小恋さんね、僕は早海竜。って、は?魔女?・・・中二病なの?魔女なんているわけないじゃん。」
「なっ!中二病じゃないです!本物です~」
「・・・」
・・・なんなんだこの子は。
僕が思わず眉間に皺を寄せていると、
「信じてないですね?いいでしょう。魔女の使う魔法を見せてやります。今から、このベッドを浮かせます」
というと、小恋という子は何やら奇妙な言葉を口にした。
その直後、宣言どおり僕のベッドが浮かんだ。
「どうです?ドヤッ‼」
「ホントに浮かんだ・・・君、本物だったんだ」
「だからさっきからそう言ってるじゃないですか。それより、あなた私の世界に来ませんか」
「君の世界?なんで?」
「実は、私の世界では魔力の強い者が成績優秀者として一人前の魔法使いになれるんですが、私、魔力が弱くて魔法学園で一番成績が悪いんですぅ・・・それで、学園長が『人間界から人間を一人連れてきて、一から魔法使いに育ててみろ。きちんと育てることが出来たらお前は一人前の魔女として卒業できる。育てることが出来なかったらお前は魔法使いになることを諦めろ。』と・・・」
「ひどい学園長だな・・・ホントに魔界に行けるの?」
「はい」
自信満々な小恋の表情に僕は、もしかしたらこの世界で退屈な時間をこれから過ごすよりも、魔法世界に行ったほうがいいのではないかと考えた。
「・・・わかった、君の世界に行くよ。魔法使いになるかはともかく、一刻も早くこのつまらない世界から出たいんだ」
そうして僕は小恋に魔法世界に連れて行ってくれと頼んだ。
すると、小恋は少し言いにくそうに、
「・・・いいんですか?一度この世界から出たらすぐにはこの世界に戻ってくることはできませんよ?」
と告げた。
不安そうな顔をしている小恋には悪いが、そんなのは、僕としては都合がいい話でしかない。
こんなつまらない世界で死ぬまで暮らしていくのはごめんだ・・・
「かまわないよ」
「本当ですか?では、今すぐに魔界に行きましょう!」
「あぁ」
小恋はほうきを持ってきて、さっきとは違う言葉を口にした。
すると、ただのほうきだったものがいきなり動き出し、僕の部屋に浮いた。
「さぁ、このほうきに乗ってください!」
「うん・・・」
僕は小恋の後ろに乗った。
窓からほうきで外に出ると結構高く飛んでいたようで、月の光や街灯が宝石のようにキラキラと輝いていた。
僕はそんな景色を背に彼女に聞きたいことがあったことを思い出した。
「そういえば小恋、魔界って具体的にどういう所なんだ?」
僕がそう問うと彼女は話し出した。
「魔界ですか?いいところですよ~!魔界には七つの罪を司る王様がそれぞれいるんですけど、その七人によって魔界の秩序は守られてるんです!魔界にはたくさんの種族が存在していて、私たち魔法使いは主に人間界でいうところの警察のような役職に就くために魔法学園に通っているんです!」
「ふーん。で、今まで僕みたいな人間が来たことはあるの?」
「ありますよ!なんたって今の七つの罪を司る王様の中にも一人、元は人間だった方がいますから。」
「マジで⁉その王に会うことって出来ないの?」
「会うことはできますが・・・本来、王に直接会うためには、二つの方法があるんです。一つは、王様が面談を申し込んだ場合。もう一つは、私たち学生はホームというクラスに分かれています。そのホームではそれぞれの王様の印を背負っているんです。なので、入ったホームのトップになって直接王様に会うこと。」
「そっか。あ、あと一つだけ質問なんだけど、その元人間だった王様ってなんの罪を司ってるの?」
「あの方は、確か『強欲』の罪を司っていますよ」
「そうなんだ・・・」
僕は、なぜその王は魔界に来たのだろうと不思議に思っていた。
そんな時、今まで僕の質問に答えていた小恋が、
「あ‼」
と、叫んだ。
小恋が見ている方角を見てみると、どうやら僕らは月の近くを飛行しており、目の前に大きな穴を見つけたようだ。
「この穴が魔界への入り口です!行きますよ!」
その声と共に僕らは深い暗闇の中に吸い込まれていった。
続く
一話を読んでいただきありがとうございます!
作者が一生懸命書いた初投稿作品です!
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